【AI: ソムニウム ファイル | PS4/Switch】評価・レビュー 夢と現実の両面から猟奇殺人の真実を追うバディアドベンチャー

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総評
義眼の相棒とともに、猟奇殺人の犯人を追うアドベンチャー。現実だけでなく、重要参考にの夢の中でも手掛かりを追うSFミステリーとなっており、ユニークな仕掛けが満載の作品です。興を削がれない程度のコメディ要素も用意されているので、メリハリのあるストーリーを楽しめます。
良かったところ
魅力に満ちた登場キャラクターたち
謎だらけで真相が気になるSFミステリー
周回プレイをサポートするフローチャート
悪かったところ
操作性の悪いコマンド選択系のUI
ジャンル アドベンチャー
ハード PlayStation 4
Nintendo Switch
Steam
発売日 2019年9月19日
発売元 スパイクチュンソフト
開発元 スパイクチュンソフト
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで19時間

 スパイクチュンソフトがおくるアドベンチャー「AI: ソムニウム ファイル」のレビュー記事です。

 AI搭載の義眼「アイボゥ」とともに、現実と夢の両面から猟奇殺人事件の犯人を追う本作。聞き込みや取調べで情報を収集する「捜査パート」と、重要参考人の夢に潜入して手掛かりを見つける「ソムニウムパート」を行き来しながら進行する、SF色の強いバディアドベンチャーとなっています。

 序盤から謎が山積みの展開となっており、終盤の解明編まで謎が謎を呼ぶ、結末の気になるストーリーは大きな特徴です。一見すると重苦しい雰囲気をまとっていますが、シリアス一辺倒ではなくコメディ要素も散りばめられています。好みが分かれそうとは感じるものの、メリハリがあって私は好感触でした。登場人物たちも、フルボイスで魅力的なキャラクターばかりとなっており、強く印象に残る作品です。

猟奇殺人事件の犯人を追うSFミステリー

 猟奇殺人事件の発生から幕が開ける物語は、プロローグや日常パートといった冗長な物はなく、いきなり捜査開始からスタートします。主人公自身が6年以上前の記憶をなくしているため、情報が穴だらけということに加えて、予想も付かない出来事の連続で、謎が謎を呼ぶストーリーです。序盤から中盤を経ても謎は深まるばかりとなっており、真実を推理しながら終盤へと向かう面白さがありました。

 「暴力、犯罪」でCEROレーティングは「Z(18才以上のみ対象)」になっていることから、シリアス一辺倒の雰囲気に包まれていますが、意外とコメディ要素も豊富に散りばめられています。最初は主人公のキャラを読めなくて抵抗感があったものの、次第にいい味が出てくるので、遊び終える頃には魅力の1つとして確立されていました。もちろん、シリアスに締めるところはしっかり締めており、メリハリが付いています。

遊び心と魅力に満ちた登場キャラクターたち

 他人の夢に潜って手掛かりを見つける「Psyncer(シンカー)」の主人公と、AI搭載の義眼「アイボゥ」を筆頭に、登場人物は個性豊かなキャラクターばかりでした。特に、常に行動を共にするアイボゥは、本作における相棒のような存在です。最初はクセの強さに気後れするところもありましたが、次第に愛着が湧いて、プレイヤーにとってもバディアドベンチャーらしい関係が生まれます。

 メインキャラクターだけでなく、全ての登場人物がフルボイスになっており、3Dモデルのクオリティが高い点も良かったです。どのキャラクターも表情豊かに立ち回り、コザキユースケさんのキャラクターデザインを最大限に活かせていました。クリア後には、3Dモデルを鑑賞できるオマケも用意されているので、注力された部分をユーザーに堪能させる仕組みも万全です。

 登場人物の1人である、女子高生ネットアイドルの、不思議と耳に残るフレーズの数々。コメディ要素の延長で、本音がポロリと出るような邪なコマンド。意外な選択肢から突然訪れる特殊エンドなど、様々なところに遊び心のある演出が用意されている点も印象的でした。

総当たりで情報を収集する捜査パート

 現実世界で事件の情報を収集する「捜査パート」は、総当たり形式に近いコマンドアドベンチャーです。現場の調査や参考人からの事情聴取を行い、謎を解き明かすための手掛かりを集めます。一般的な捜査だけでなく、「アイボゥ」の機能を活用して、普通の人とは異なる切り口で行動できる点もユニークなポイントです。

 基本的には見える範囲のオブジェクトを選択していく形式ですが、小さなオブジェクトを選択しにくいのは難点でした。大半は意味のないにぎやかしのオブジェクトではあるものの、全てのコマンドをチェックしたい人は、ストレスがたまるかも知れません。選択できるオブジェクトへの誘導や、カーソルの低速操作モードがあればうれしかったです。

 一部の捜査パートでは、「QTE(クイックタイムイベント)」が発生します。主に、主人公がピンチを切り抜ける際の演出として活用されており、コマンド自体はとてもシンプルです。正直なところ、ゲームとしては必要性の薄い演出ですが、毎回のように馬鹿馬鹿しい展開に発展するため、プレイするうちに楽しみの1つになっていました。

夢の中で手掛かりを掴むソムニウムパート

 夢の世界で手掛かりを探す「ソムニウムパート」は、制限時間付きのコマンドアドベンチャーです。6分間の限られた時間の中で、「メンタルロック」と呼ばれる障害を取り除き、深層意識の奥に秘められた手掛かりにたどり着かなければなりません。夢の中ということで、奇抜なオブジェクトや選択肢が満載となっており、何が起こるのか触ってみるまで計り知れません。

 制限時間は、夢の中で移動するとリアルタイムで減少することに加えて、選択肢の行動をするためにも一定の時間を消費します。無駄な行動ばかり行うと、アッという間に時間切れとなってしまうため、数少ないヒントを頼りに、慎重かつ迅速に障害を取り除く必要がありました。理不尽にならない程度のフィーリングで決めなければならない選択肢や、最後の選択肢だけは6分を超えても許容される巧みな仕様もあって、手に汗握る場面も多いです。

 選択肢によっては、以降の選択肢の消費時間を変化させるアイテムが獲得できます。正解の選択肢だが要求される時間が長い場合に、無意味でも短時間でアイテムが手に入る選択肢を先に選んで、本命の時間を短縮するといったパズル要素も面白味に一役買っていました。

 「捜査パート」同様にUI面には若干の不満を抱えており、選択肢決定とアイテム選択が間違えやすく、誤操作を誘発する要因でした。毎回のように確認されるのも煩わしいですが、もう少し操作性に工夫が欲しかったところです。幸い、チェックポイントからの再開やリトライが容易にできるため、誤操作が致命的な失敗につながらないのは助かりました。

ルート分岐と遊びやすいフローチャート

 本作は、マルチエンディング形式を採用しており、「ソムニウムパート」での行動によってストーリーが分岐していきます。ルートによって真実が断片的に見えてくる仕組みで、様々な結末を体験することによって、猟奇殺人を中心とした事件の全貌が明らかになる構成です。私は読み進めるのが早い方ですが、それでもクリアまでに20時間弱掛かっており、ボリュームも十分でした。

 複雑怪奇な事件を追う中で、分岐したパラレルワールドをプレイし続けると、どうしてもプレイヤーの中で各ルートの情報が混在していきます。本来なら、情報の混線は面白さを損ないかねない状況ですが、それを逆手に取った仕組みが用意されている点も秀逸です。遊んでいるプレイヤーがどのように考えているのか、しっかり意識されていると感じました。

 最終的には全てのルートを制覇する必要があるものの、シーンジャンプ機能を備えたフローチャートが用意されているため、最初からやり直す必要がないのもうれしかったです。「ソムニウムパート」内の分岐も内容自体が大きく変化するため、無駄に同じことを繰り返す必要はありません。マルチエンディング形式のゲームにしては珍しく、既読スキップ機能を使うこともほとんどなかったです。

さいごに

 脈絡のないコメディ要素を中心に、プレイ前は不安を感じていた部分もあったのですが、実際に遊んでみると自分でも驚きの高評価でした。中盤までは謎ばかりで気になる展開が続き、終盤で一気に解決するミステリー色の強さは人を選びそうではあるものの、斬新で面白味のあるアドベンチャーゲームとしておすすめしたい作品です。