ジャンル | 和風ホラーアドベンチャー |
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ハード | PlayStation 4 PlayStation 5 Nintendo Switch Xbox Steam |
発売日 | 2021年10月28日 |
発売元 | コーエーテクモゲームス |
開発元 | コーエーテクモゲームス |
公式サイト | リンク |
コーエーテクモゲームスがおくる和風ホラーアドベンチャー「零 ~濡鴉ノ巫女~(リマスター版)」のレビュー記事です。
2014年に発売されたシリーズ5作目のリマスター版となる本作。残念ながら、グラフィックの変化は解像度の向上程度に留まっているものの、オリジナル版の魅力は継承されており、面白さは健在です。
どちらかといえば、オリジナル版を遊んだ人が進化・追加要素を楽しむよりも、これまで触れる機会のなかったユーザーが遊びやすくなった移植版という印象でした。ほぼ全ての現行機で遊べるため、シリーズに興味を持っていた人は、この機会に是非プレイしてほしい作品です。
3人の主人公によって紡がれるストーリー
本作のストーリーは、異なるテーマを持った3人の主人公によって紡がれます。完全新規のストーリーが展開される不来方 夕莉。1作目の延長に位置する雛咲 深羽。シリーズ全体や過去の出来事と関連性が深い放生 蓮。各キャラクターには2~4種類のエンディングが用意されており、様々な形の愛情や想いを描いた物語・結末が楽しめました。
1作目の後日談にあたる「雛咲 深羽」のみ、予備知識を持っていた方が心に響く内容ですが、メインストーリーは独立しているため、本作でシリーズに初めて触れる人でも安心です。
水の表現が際立つ「濡れる恐怖」
「濡れる恐怖」をコンセプトに、水がストーリー・システムに深く関連している点は、本作の大きな特徴です。特に、衣装や肌の濡れる表現に力が入っており、艶めかしい姿になることも少なくはありません。元々、「怖い」と同時に「性表現」を取り入れている作品でしたが、水の要素が追加されたことによって、両方の魅力が大きく増していました。
目の保養になるだけではなく、濡れることで主人公に様々な変化が発生します。濡れるほどに攻撃力が増す代わりに、受けるダメージが増えたり、怨霊と出会いやすくなったりといったデメリットも存在。濡れメーターが振り切れると継続的にダメージを受けてしまうなど、透けた衣装に目を奪われるだけでなく、戦闘や探索面においても胸が高鳴る演出が豊富でした。
戦い方の幅が広がった「射影機」バトル
シリーズの特徴である「射影機」を使った戦闘は、新要素が追加された影響で、戦い方の幅が広がりました。過去作では、敵の攻撃を回避しながら隙をうかがう待ち戦法が基本だったのに対して、今作からは複数のターゲットを同時に撮影して大ダメージを与える「シャッターチャンス」が追加。積極的に撮影して怨霊から「霊片」を発生させ、貯まった霊片と怨霊をまとめて撮影する、攻めの戦法が選べるようになりました。
「シャッターチャンス」と「霊片」に加えて、射影機のファインダーを縦や斜めに傾けられるようになった点も好感触です。うまく使いこなすには慣れが必要ではあるものの、高さの異なる怨霊や霊片をまとめてファインダーに収められます。これらの変化もあって、バトルシステムとしては、シリーズ屈指の面白さとなっていました。
オリジナル版では、WiiUの「GamePad」を「射影機」に見立てたプレイが行えたのに対して、リマスター版でもモーションセンサーを使った直感的な操作が可能です。Nintendo Switchの携帯モードで遊べば、Switch本体を「射影機」のようにも扱えます。プラットフォーム・コントローラーは限られるものの、オリジナル版の魅力は損なわれていませんでした。
リマスターによるグラフィックの変化は控えめ
「リマスター版」となる本作ですが、グラフィックの変化は控えめです。3Dモデルを作り直しているわけではないので、目を見張るような違いはありません。画面解像度の向上や、エフェクトのブラッシュアップ程度にとどまっています。オリジナル版の時点で十分に綺麗な映像となっており、7年経っても見劣りはしないクオリティですが、「リマスター」というよりは「移植」に近い印象です。
複数の新規衣装とフォトモード実装
リマスターに併せて、9種類のコスチュームと8種類のアクセサリーが追加。「ゴスロリコーデ」や「パンクコーデ」など、様々な衣装に着替えることが可能です。特に、シャツとセットになった水着は、濡れるとシャツが身体に張り付いて、単純な水着よりも艶めかしい姿を堪能できました。注意点として、オリジナル版の「制服」なども収録されていますが、印象的だった深羽の「グラビア水着」はなくなっています。着用されていたイベントシーンも私服に差し替わっていました。
新機能の「フォトモード」では、キャラクターや怨霊を自由に配置して撮影ができます。探索中、ほとんど一緒に行動しない主人公たちですが、モード中なら好きなシチュエーションを楽しめました。フレームや被写界深度の調整などの基本的な機能に加えて、配置していない怨霊が映り込む「心霊レンズ」といったホラーゲームらしい遊び心も存在。怨霊はランダムとなっており、本作以外のシリーズに登場した怨霊が映り込む場合もありました。
さいごに
冒頭で新規ユーザー向けとは言ったものの、「射影機」を使った戦闘が面白いこともあって、2度目のプレイでも満足度は高い作品でした。オリジナル版の発売から7年間、長らく音沙汰がありませんでしたが、リマスター版の発売をきっかけに新作の発売にも期待したいシリーズです。