ジャンル | 3DダンジョンRPG |
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ハード | PlayStation 4 Nintendo Switch |
発売日 | 2022年9月29日 |
発売元 | アクワイア |
開発元 | カエルパンダ |
公式サイト | リンク |
プレイ時間 | ストーリークリアまで12時間 |
アクワイアがおくる3DダンジョンRPG「残月の鎖宮」のレビュー記事です。
「墨」をコンセプトに、水墨画のような雰囲気が目を引く本作。ストーリーは控えめで、探索に専念できるストイックなゲームデザインが特徴です。プレイヤーは、キャラクターメイクで最大6人のパーティーを編成して、4つの「鎖宮」に挑みます。
様々なギミックが待ち受ける「鎖宮」や、敵味方ともに攻撃力が高めのバトルは、慣れるまで苦戦しがちです。特に、「上級」モードはキャラクターロストに至りやすくなり、スリルを堪能できたのは高評価でした。
システム周りが面白いのに対して、転職や上級職といった要素を、活かせるだけのボリュームや難度が存在していない点は残念でした。育成が面白くなってきたタイミングで終わってしまうため、クリア後に物足りなさが残る作品です。
目次で流し読み
「墨滅者」となって大地の浄化を目指すストーリー
「滅びの墨」に塗りつぶされた世界で、「墨滅者」となって大地の浄化を目指すストーリーは、和風の独特な世界観で描かれます。「墨」がコンセプトになっており、白と黒を基調とした、水墨画のような雰囲気も目を引きました。
ゲーム内で語られる内容は最低限に留まり、長々としたイベントや会話はありません。時折、フレーバーテキストのようなナレーションが差し込まれる程度でした。プレイヤーは探索に専念できる、ストイックなゲームデザインです。
種族と職道を組み合わせて編成するパーティーメイク
探索する「墨滅者」は、一人一人をキャラクターメイクで作成する形式です。基礎ステータスが異なる6種類の種族、9種類の職道(ジョブ)、3種類の性格を組み合わせて生み出します。パーティー構成は最大6人で、前衛3人、後衛3人の隊列は固定です。
ゲーム開始時点では、どの職業がどんなスキルを覚えるのか、ほとんど情報がありません。取りあえず最初は全職業を1人ずつ作成して、遊んだ感触を頼りに、自分好みの編成に調整する形です。ヘルプやTIPS、攻略のヒントもないため、全てが手探りのプレイになります。
種族と性格は作成後の変更が行えないのに対して、職道は後から転職が可能です。レベルは職道ごとに保持されるため、転職後も獲得したスキルを利用できます。転職を繰り返せば、マルチタレントなキャラクターが育つシステムです。
特定の職道に特化させるなら適したステータスの種族が良く、様々な職道で活躍させるなら平均的なステータスの種族が良い点も面白い作りでした。転職を行うタイミングや頻度でパーティーに差が出る他、レベルアップ時の成長にもランダム性があるため、同じ種族・職道で組んでも、プレイヤーごとに異なるパーティーが育ちました。
選べる2種類のモードとキャラクターロスト
本作には、「通常」と「上級」、2種類のゲームモードが用意されています。「通常」の場合、全滅しても戦闘前からやり直しが可能です。対して、「上級」は全滅すると戦闘場所に死体が残り、別パーティーで回収しなければ復活できない仕様となっています。1度の全滅が大きな損害になるため、かなりスリルを味わえました。
一見すると「上級」は回収の手間が増えるだけのモードですが、死者の復活に失敗する仕様が、スリルを上積みしていました。仲間の復活は確率制になっており、2回連続で失敗するとキャラクターがロストします。失敗する確率自体は高くないものの、パーティー全員分になると安心はできません。
「上級」から「通常」に後から変更可能ですが、「通常」から「上級」に変更はできない仕様です。スリルのある戦いを楽しみたいなら「上級」、過剰なスリルを求めていなかったり、心が折れたりしたら「通常」といった感じでした。せっかくなので、私は「上級」で最後まで遊びましたが、1人が瀕死になるだけでもドキドキするのでおすすめです。
探索できる「鎖宮」は全部で4箇所と少なめ
3Dダンジョン形式の「鎖宮」は、チュートリアルの物を除いて4箇所と少なめです。最後の「鎖宮」だけは戦闘がメインでシンプルなのに対して、残りは様々なギミックが待ち受けています。特に、3つ目の「鎖宮」は広大かつギミックも満載で、プレイ時間の半分はここ1つに割かれたほどです。
ギミックの内容は、鍵となるアイテムの収集や動く床、調べることで見つかる隠し通路、一方通行の扉など様々です。全ての部屋を巡り、全ての壁をチェックする入念な探索が求められました。目視で行き止まりに見えても、実際にたどり着くと何かが見つかる場所も多いです。
敵とのエンカウントは、シンボルとランダムの複合形式です。メインはシンボルエンカウントで、ランダムエンカウントの発生率は低く、そもそも発生しないエリアも存在しました。シンボルエンカウントも確率で回避可能な上、逃走成功率も高いため、戦闘を避けながら探索することも可能です。
ドロップで装備を調えるアイテム収集要素
お店で装備を購入するのは序盤だけで、基本は敵からのドロップアイテムで装備を調える形式です。「鎖宮」内に固定の宝箱が存在しない代わりに、シンボルエンカウントの敵は、必ず宝箱を落とします。シンボルは別エリアに移動すると復活するため、探索しているだけで大量の武具・アイテムが獲得できるようになっていました。
宝箱のドロップ率は100%ですが、鍵や罠が仕掛けられており、確実には入手できません。スキルで解錠・解除するか、物理的に破壊する必要があります。獲得アイテムは全て未鑑定品なので、宝箱のドロップから装備品に至るまでのステップは意外と多いです。
宝箱の仕様や鑑定要素に加えて、アイテム周りの管理・操作性が作り込まれておらず、煩雑になりがちだった点は今ひとつでした。誤操作防止のため、決定等が全てボタン長押しとなっているため、更に手間が掛かります。解錠がスムーズに進んでも、1つの宝箱を開けるのに3~4回の長押しが必要でした。親切とは思いますが、戦闘のたびに複数回の長押しを要求されるため、設定による変更が欲しかったです。
敵味方ともに攻撃力高めのコマンドバトル
戦闘は、オーソドックスなターン制コマンドバトルです。敵味方ともに攻撃力が高めで、1度の戦闘が短い代わりに、HPや防御力の低いキャラクターは事故が発生しやすいバランスでした。特に、遠距離・全体攻撃を持つ敵が混ざっていると、早めに処理しなければ後衛がすぐ狙われます。
死亡がキャラクターロストに結びつく中、HPがギリギリで0になった場合、死亡ではなく戦闘不能になる仕様が面白いです。HP0の状態で攻撃を受けたり、1発で0を大きく下回ったりすると死にますが、その前に回復すれば戦闘に復帰できます。事故は起きやすいですが、こまめにHPを回復していれば、事故死は起こりにくい仕様です。
スキルはHPを割合で消費して発動、魔術・法術はLvごとに回数制となっており、気軽に使用できない代わりに性能は高めでした。頻繁に街へ戻る前提で多用すれば圧倒できる反面、長期的な探索を行う場合、どこまで節約するか悩ましいです。
「鎖宮」には、先へ進むと解放されるようなショートカットが少ないため、長距離・長時間の探索が発生しやすく、目的に応じてプレイスタイルも調整する必要がありました。
物足りないボリューム・難度
探索できる「鎖宮」が4箇所と少なく、「上級」モードで慎重に遊んでも、ストーリークリアまで12時間程度とボリュームは控えめです。1つの職道をマスターする頃には終盤なので、転職要素や上級職を活かす前に終わってしまう点は、物足りなさが残りました。
難易度に関しても、手探りで進める序盤は難しいですが、慣れてくると大したことはありません。特に、ボス戦は手応えがなく、全て初回の挑戦で苦戦することなくクリアに至りました。雑魚に絡まれながら、ギミックを解くのに苦労したゲームという印象が強いです。怖がっていたキャラクターロストも、クリアしてみると1度も死亡していないキャラがいたくらいでした。
PS4版では、「合計プレイ100時間」や「全職道をマスター」といったトロフィーが存在するものの、ゲーム自体のボリュームと全く釣り合っていない内容です。ストーリークリア後に解放される「鎖宮」などもありません。やり込みが楽しめそうに見えて、意外とやりこみ要素は乏しく、もう少し各種システムを活かせるだけのボリュームや難度が欲しかったです。
さいごに
序盤~中盤の手探りが面白かった反面、中盤以降は手応えがなく、不完全燃焼で終わりを迎えた作品でした。最後までバランス良く作り込まれていれば、全く異なる評価になったと感じるため、惜しさが残ります。