【夜廻三】評価・レビュー 飽きさせない変化が随所に盛り込まれた夜道探索アクション第三弾

総評
夜の街で失われた記憶を探す夜道探索アクション第三弾。思い切った変化を数多く取り入れており、三作目でありながら過去作とは少し毛色の異なる作品。一長一短で好みの分かれそうな要素が目立つものの、これまでとは異なる緊張感が堪能できました。
良かったところ
真相が気になる謎の多い物語
悪かったところ
中だるみを覚えたストーリー構成
シビアな操作を要求するアクション
3
B
ジャンル 夜道探索アクション
ハード PlayStation 4
Nintendo Switch
発売日 2022年4月21日
発売元 日本一ソフトウェア
開発元 日本一ソフトウェア
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで11時間

 日本一ソフトウェアがおくる夜道探索アクション第三弾「夜廻三」のレビュー記事です。

 失われた記憶を取り戻すため、懐中電灯を頼りに夜の街を探索する本作。テーマがハッキリしたシリーズの三作目ということで、シリーズファンを飽きさせない変化が各所に盛り込まれていました。特に、「お化け」から逃げるのではなく、避けながら進む「目を閉じる」システムは、これまでとは異なる緊張感を堪能できます。

 自由な順番でエリアを攻略できる代わりに、魅力的なメインストーリーが中だるみしていたり、シビアな操作が要求されるギミックが多かったりと、一長一短で好みの分かれそうな要素も目立ちます。過去作との差別化を行うため挑戦的な部分も増えた、同じシリーズでも少し毛色の違う作品でした。

夜の街で、失われた記憶を探す物語

 メインストーリーは、主人公が自身にかけられた呪いを解くため、夜の街を探索する形式で進行します。「思い出のアイテム」と「失われた記憶」が手掛かりとなっており、開幕時点では非常に謎が多く、真相に興味を引かれる内容です。終盤には大胆な仕掛けが施されていて、うまいと感じさせられる場面もありました。

 最終的なメインストーリーの評価は高いものの、話が進むのは序盤と終盤に集中しており、中だるみを覚える構成だったのは残念でした。中盤はほとんどストーリーの進行がなく、独立したミニシナリオが展開されます。中盤のストーリー体験を犠牲にして、終盤を盛り上げる形です。

 メインビジュアルを「思い出の中の少女」としたことで、主人公の容姿が変更可能になった点は、過去作からの大きな変化です。感情移入しやすくなった反面、主人公は作中で可哀想な目に遭い続けるため、つらい気持ちも倍増でした。なお、シリーズ三作目ではあるものの、過去作との直接的な関係性はなく、本作から遊んでも問題はありません。

好きな順番で攻略できる、自由度の高い探索

 探索は、街中できっかけとなる「思い出のアイテム」を見つけることで、重要な「思い出のアイテム」が獲得できる新エリアが開放される形式です。どの「思い出のアイテム」から集めていくかは自由となっており、エリア攻略の順番はプレイヤーごとに異なります。

 街の全体像が分からない序盤は迷子になりがちですが、「思い出のアイテム」が近くにあると存在を示唆する演出が用意されているので、適当に歩き回ってもスムーズに攻略が進む点は好感触でした。未解放エリアに入ると、避けられない「お化け」が襲いかかってくるので、無意味な探索が発生することもありません。

 エリア開放のきっかけとなる「思い出のアイテム」を、自宅でしか使えない仕様は、少しテンポを悪くしていました。場合によっては、新エリアの目の前で獲得したにもかかわらず、帰宅して再び向かう二度手間が発生します。ストーリーの仕掛けを活かすための仕組みですが、煩わしさを感じたため、もう一工夫欲しかった部分でした。

「目を閉じる」ことで「お化け」を避ける、新たな緊張感

 本作に登場する「お化け」の演出は、どちらかと言えばプレイヤーを驚かせてくる傾向が強めでした。懐中電灯だけを頼りに進んだり、環境音でストレスを与えてきたりする場面もありますが、『ワッ!』とビックリさせるシーンの方が多いです。エリアごとに「お化け」や演出は異なるため、バリエーションは豊富でした。

 過去作の「隠れる」アクションがなくなり、代わりに「目を閉じる」で見つからなくなった点も大きな変化です。「お化け」には見つかりませんが、こちらも視界が制限される中、気配を頼りにすり抜けていくスリルが楽しめます。もちろん、見つからなくても接触すれば即死です。

 隠れる場所を探して逃げ惑う面白さと、気配を頼りに回避しながら進む面白さ。ドキドキする感覚が大きく異なるので、好みの分かれるところですが、シリーズを重ねる中でも新鮮味を感じられる要素でした。「目を閉じる」と認識されなくなる仕様がゲームの都合という感じだったので、キチンとした設定・裏付けが存在すれば、もっと良かったです。

シビアな操作を要求する、アクション性の高いギミック

 主人公を待ち受けるギミックや謎解きは、エリアごとに大きく異なり、様々な趣向が凝らされています。ただし、同じギミックを何度も繰り返すエリアも多く、少しくどいと感じた点は残念でした。ボリュームを担保するために仕方ないとはいえ、もう少しバランス良く配分してほしかったです。

 エリアによっては、かなりアクション要素の強いギミックも存在します。短いダッシュしかできない中で、「お化け」の猛攻を回避し続ける場面も多く、クリアするまでに何度も死亡を繰り返しました。本作に高いアクション性や難度を求めていない人にとっては、苦痛になりかねないと感じたほどです。

 多くのエリアで、初見殺しや訳も分からず殺される状況も多発します。死んでも大きなデメリットはないとはいえ、ボス戦では最初からやり直しになってしまうため、失敗が続くとストレスが溜まりがちでした。

さいごに

 メインストーリーや関連する仕掛けは好感触だったものの、本シリーズに高いアクション性は求めていなかったため、結果的に評価を落としてしまう形でした。物語を集中して楽しみたい人向けに、何らかの工夫があれば、印象は違ったかもしれない作品です。