【ゼノブレイド DE(ディフィニティブ・エディション) | Switch】評価・レビュー 3度目のプレイでも楽しめるゼノブレイドの決定版

総評
巨大な神の骸を舞台に紡がれる、圧倒的な世界観が魅力のオープンワールドRPG。元より高かった完成度は、HDリマスターや各種調整によって進化しており、さらに遊びやすく仕上がっています。初めての方におすすめできるのはもちろん。オリジナル版をクリア済みで、2~3度目のプレイでも楽しめる作品でした。
良かったところ
リマスターで美麗になった世界観
人類と機械の戦いを描いたストーリー
手応えがある戦略性の高いバトルシステム
遊びやすさ向上に注力された各種調整
悪かったところ
改善されても不満が残るUI周り
5
A+
ジャンル RPG
ハード Nintendo Switch
発売日 2020年5月29日
発売元 任天堂
開発元 モノリスソフト
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで55時間

 モノリスソフトがおくるオープンワールドRPG「ゼノブレイド DE(ディフィニティブ・エディション)」のレビュー記事です。

 Wii版の発売から、10年越しのリマスター版となる本作。オリジナル版の時点で十分に高いと感じていた完成度は、グラフィックの進化やコンテンツ追加・調整などで、さらに向上。正に「決定版(Definitive Edition)」の名を冠するのに相応しいクオリティに仕上がっています。ストーリー・バトルシステムともにゲームとして面白いことはもちろん。ユーザーの遊びやすさもしっかりと意識して作られていました。

 本作で追加されたストーリー「つながる未来」は、10数時間のボリュームとなっており、少し短めのRPG1本分です。本編をクリアせずとも始められるため、過去に本編をプレイ済みで、新しい物語を早く遊びたいという人には助かる仕様でした。3DS版を含め、3度目のプレイであるにも関わらず、本編もしっかりと楽しめてしまい、とても満足度の高い作品です。

HDリマスターで大幅な進化を遂げた世界観

 巨神と機神、巨大な神の骸を舞台に冒険する斬新な世界観は、本作を象徴する要素です。地域ごとに大きく様変わりする景観や、オープンワールド型の広大なフィールドは、プレイヤーを飽きさせません。フィールドBGMも名曲ぞろいとなっており、初めて足を踏み入れたときのインパクトと併せて、オリジナル版から10年経った今でも強く心に残っています。

 リマスターによって進化したグラフィックは、世界観にも大きな影響を及ぼしていました。単純に美しくなっただけではなく、どこまでも歩いていけそうな雰囲気も大きく増しています。オリジナル版でフィールドが印象深かった方は、生まれ変わった巨神界・機神界を見て回るだけでも、本作をプレイする価値有りです。私自身、既知のフィールドであるにもかかわらず、スクリーンショットを撮る手が止まりませんでした。

人類と機械の戦いを描いた壮大なストーリー

 巨神と機神、その上に住まう人類と機神兵の戦いを描いたストーリーは、世界観に秘められた魅力を、最大限に活かした内容です。機神兵によって殺されてしまったヒロインの復讐から始まる物語は、様々な出会いと別れによって変化を繰り返し、予想も付かない壮大なストーリーへと発展していきます。復讐という動機からクセが強いように見えて、王道的なポイントはしっかり押さえており、人を選ばない薦めやすさがあります。

 主人公たちメインキャラクターを筆頭に、登場人物の高い存在感も高評価です。ひとりひとりに確固とした存在意義が用意されており、敵味方を問わず、魅力的な人物がそろっています。世界観同様、HDリマスターによってモデリングが一新されているため、フィールドやイベントでの見栄えも向上していました。さらに、「ディフィニティブ・エディション」では、イベントシアターも用意されており、全てのイベントを好きなときに見返せるのも良かったです。

100時間を超えても遊び尽くせない圧倒的ボリューム

 メインストーリーだけでも50時間を超えるボリュームに加えて、数え切れないほどのクエストや探索要素で、100時間プレイしても遊び尽くせない本作。オリジナル版(Wii)はプレイ時間の表示が99時間59分までとなっており、当たり前のようにカウンターストップしたのも懐かしい思い出です。どのコンテンツを遊んでも、何らかの形で報酬が手に入るため、自己満足だけの寄り道になってしまわない点も好感触でした。

 広大なフィールドと膨大なコンテンツが組み合わさることによって、どこに何があるのか分かりにくかった点も改善されています。目標までの道筋は、ガイドラインが表示されるようになって、無駄に迷うことはありません。クエストもマップ上にマークが表示されたり、アクティブクエストに設定することでマークを変えたりできるため、遊びやすさが格段に改善されていました。手探りで遊びたい場合は、各種機能をオプションで非表示にすることも可能です。

 オリジナル版では、寄り道しすぎるとレベルが上がってしまい、メインストーリーが低難易度化してしまう問題がありましたが、「上級者設定」でレベル調整が可能になったのもうれしいポイントでした。レベルを固定するのではなく、寄り道で手に入る経験値をストックするだけなので、戦闘によるレベルアップは発生するため、敵に合わせて逐一レベルを再調整する必要がないのも助かります。

ヘイト管理が重要となる戦略性の高いバトルシステム

 フィールドの移動からシームレスで始まる戦闘は、スピーディーでテンポの良い、リアルタイムコマンドバトルになっています。ヘイト管理を意識したパーティー構成や立ち回りが求められる、戦略性の高いゲームデザインです。パーティーメンバー3人のうち、2人はAI操作になるため、自分がどのキャラクター・役割を操作するかによって、プレイスタイルが大きく異なる点も特徴となっています。

 主人公が操る武器「モナド」の能力、「未来視」を活かしたシステムも秀逸です。エネミーの攻撃によって危機的な状況に陥るとき、予告のカットインが入るため、うまく活用すればピンチを回避することができます。初見殺しのようなスキルを持っている相手でも、理不尽に負けることはありません。一部のボス戦では、「未来視」を使った特殊演出も用意されており、ストーリーの設定と戦闘の連動にも一役買っていました。

 戦略性が高い反面、バトルシステムに対する理解のハードルも高いです。同格以上のエネミーに対しては、ガンガン攻めるのも難しいので、爽快感よりも手応え重視となっています。キャラクターごとに役割がハッキリしているため、パーティー構成の自由度も低く、好きなキャラクターでパーティーを組むと、縛りプレイのような状況に陥ることも多いです。リマスター版では、手軽な難易度でパーティー構成を気にせず遊べる「カジュアルモード」が追加されており、前述した「上級者設定」と併せて、難易度の高低操作も自由自在でした。

コンテンツの追加・調整やアレンジBGMも収録

 基本的にはリマスター版という形で、ゲームコンテンツへの大きな変更は行われていません。大きなコンテンツ追加としては、タイムアタックが用意されている程度です。クリアすることでアイテムと交換できるポイントが獲得できます。交換に要求されるポイントに対して、獲得量は少し控えめですが、貯めればドロップ運を問われるアイテムも確実に獲得できるため、困ったときのタイムアタックという感触でした。

 前述した「イベントシアター」「分かりにくい点の改善」「上級者設定」以外にも、ユーザーの遊びやすさ向上を目的とした調整は豊富です。あまりの複雑さから敬遠してしまいがちだった「キズナグラム」などのコンテンツも、改善されて手を出しやすくなっていました。残念ながら、UI周りは調整後も若干の不満が残ったものの、ほぼ文句なしといえる完成度で「決定版(Definitive Edition)」と呼ぶに相応しいクオリティです。

 オリジナル版BGMのイメージが強く、好みは分かれるところですが、アレンジ版BGMも収録されています。ゲームだけでなく、サントラなどで耳に残るほど聴いた人は、アレンジBGMでひと味違う雰囲気を楽しむのも悪くはありません。オプションで「オリジナル版BGM」「アレンジ版BGM」を「フィールド」「バトル」個別に調整できるため、初めてのプレイや、やっぱりオリジナル版BGMで遊びたいという方も安心です。

本編の1年後を描いた追加ストーリー「つながる未来」

 リマスター版で追加されたストーリー「つながる未来」は、本編の1年後を描いた物語です。本編がプロローグの1年後から始まる展開だったので、踏襲した流れに感慨深いものがありました。新たなフィールド「巨神肩」を舞台に、メリアを中心とした物語が紡がれます。本編でのメリアのポジションには思うところがあったので、追加ストーリーでスポットライトが当てられてうれしい限りです。新キャラクターであるリキの子供たちも、意外といって良いほど強い存在感を放っており、とても好印象でした。

 追加ストーリーのボリュームは、クエストを消化しながらで10数時間となっており、少し短めのRPG1本分でした。本編に比べると、登場キャラクター数やフィールドの広さは控えめなので、過度な期待は禁物です。バトルシステムもシンプルにカスタマイズされた内容で、最初からキャラクターもある程度まで育成済みのため、遊びやすい代わりに奥深さは今ひとつでした。追加ストーリーという枠組みの中では高評価とはいえ、これだけのために購入するのは少し物足りないかもしれません。

 リマスター版の本編クリアに関係なく遊べるように作られており、オリジナル版の本編をクリア済みで、追加ストーリーを先に遊びたい人には助かる仕様です。私自身、2度のプレイで本編の内容を覚えていたので、先に追加ストーリーからプレイしました。追加ストーリーのクリア後に本編をプレイすると、ちょっとした気付きもあったので、本編の記憶が曖昧でさえなければ、どちらから遊んでも楽しめる構成です。

さいごに

 3度目のプレイということで、本編は軽く流す程度に楽しむつもりだったのですが、遊びやすくなったこともあって探索やクエストをしっかり堪能してしまいました。バトルにおいても、過去に選ばなかったパーティー構成を組んだり、触ったことのないキャラクターを操作したりと、新たな体験も多かったです。

 オリジナル版の思い入れが強い中で、既存コンテンツを必要以上に変化させることはなく、グラフィックの進化と遊びやすさの向上に注力していたのも良い方向に働いていたと感じます。初めてプレイされる方には、自信を持っておすすめできるのはもちろん。オリジナル版をクリア済みで、2~3度目のプレイでも、再び面白さを堪能できる作品でした。