【ワールドエンド・シンドローム | PS4/Switch】評価・レビュー 怪奇と青春に彩られた、ひと夏のミステリーADV

総評
伝奇と青春の対比が際立つ、ミステリー×恋愛アドベンチャーです。様々な伏線が散りばめられたストーリーやクオリティの高い演出が好印象な反面、遊びにくいゲームシステムなど目に余る不満点も多い、惜しさが残る作品でした。
良かったところ
豊富なイベントCG
作り込まれた映像面の演出
様々な伏線と意外な真相
悪かったところ
任意のセーブ・ロード不可
物足りないパートボイス
蛇足な続編エピローグ
3
B
ジャンル ミステリー×恋愛アドベンチャー
ハード PlayStation 4
PlayStation Vita
Nintendo Switch
発売日 2018年8月30日
発売元 アークシステムワークス
開発元 アークシステムワークス TOYBOX
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで17時間

 アークシステムワークスがおくる、ミステリー×恋愛アドベンチャー「ワールドエンド・シンドローム」のレビュー記事です。

 得体の知れない伝奇的ストーリーと、華やかな青春の対比が際立つ本作。周回前提で少しずつ謎を紐解いていく物語となっており、ミスリードを誘う伏線と意外な真相は高評価でした。イベントスチルが多く、立ち絵も豊富に用意されており、演出面のクオリティも高いです。

 その反面、他コンテンツに比べて見劣りするパートボイスと、任意にセーブ・ロードできないゲームシステムは、評価を大きく落とすポイントでした。半固定の攻略順や、最後に謎を残していく蛇足なエピローグなど、製作側の押し付けを感じる部分も多く、全体的に惜しさが拭えない作品です。

死者が蘇る伝奇的ストーリー

 100年に一度死者が蘇る。古い伝承が残る田舎町を舞台にした物語は、様々なミステリーが秘められた、伝奇物のストーリーです。本当に死者は紛れ込んでいるのか? 町に引っ越してきた主人公は、仲間たちと青春を謳歌していくうちに、得たいの知れない事件に巻き込まれてしまいます。

 1プレイのボリュームは少ないものの、周回前提で謎を紐解いていくストーリーとなっており、プレイするたびに新しい情報やルートが解放されていく構成です。特に、最初は全く意味不明だった挿入ムービーが、周回することで少しずつ変化して、真相につながる演出は好印象でした。

 様々な箇所に想像を掻き立てるヒントが仕込まれており、プレイしながら推理を進めることも、本作の醍醐味です。ミスリードを誘うポイントが多く、真相に近い情報ほど巧妙に隠されています。ある程度の伏線に自力で気付かなければ、後出し設定のような展開になってしまう点には、注意が必要です。

夏の青春を彩る5人のヒロインたち

 後輩や同居人からアイドルまで、多彩な5人のヒロインが登場。もちろん、全員に個別ルートが用意されているので、ひと夏の恋愛を堪能することができます。水着や浴衣など、夏らしい華やかなイベントがそろっており、暗いミステリーパートとの対比がまぶしかったです。

 ヒロインごとに10枚前後と、イベントスチルの枚数も豊富です。重要なイベントを彩るのに一役買っていました。動きのある背景や、横顔や後ろ姿の立ち絵も用意されており、擬似的に向かい合うシーンを再現するなど、通常の会話でも演出に注力していることが感じられます。

 プロローグや特定のイベントシーンを除いて、パートボイスだったのは残念でした。他部分の演出が高評価だっただけに、物足りなさが目立ちます。その上、パートボイス部分にボイスが欲しいモノマネのネタを取り入れているなど、ちぐはぐな印象が拭えません。

選択肢は多いが一本道に近いゲーム構成

 1日を午前・午後・夜の時間帯に分けて、どの場所に向かうかで、ストーリーは分岐していきます。ほぼ毎日選択することに加えて、選択肢が7か所も存在するため、分岐の総数は膨大です。特に、1周目は情報が乏しく、狙ったヒロインがいそうな場所に、ストーカーのように張り付くことになりました。

 しかし、周回を重ねるにつれて、想像よりもシンプルなゲーム構成ということに気付きます。各場所の情報は周回をまたいで記録されるため、どんどん効率化されていきました。その上、個別ルートへの分岐タイミングが早く、イベントが発生する場所は点滅するので迷うことはありません。

 好きな順番でヒロインを攻略することはできず、順番はある程度固定されています。まっすぐに攻略を進めると、途中からはほとんど一本道でした。後味の悪い結末しか用意されていないヒロインも存在するため、好みによっては不完全燃焼になる可能性も高いです。

任意にセーブ・ロードできない遊びにくさ

 アドベンチャーとしては珍しく、ゲーム内でセーブ・ロードを任意に行うことができません。セーブは1日の終わりなど、特定のタイミングでのみ可能。ロードはタイトルに戻って、「つづきから」を選択することになります。このシステムにストーリー的な意味はなく、単純に遊びにくいだけです。

 ルートによっては、バッドエンドに直行する選択肢もあるので、大きな巻き戻りを防ぐためにも毎日のセーブは必須になります。結果、数分ごとにセーブデータが増えていくのですが、日付以外の情報が表記されていないため、どんな状況のデータなのか後から判別できないのも不満点でした。

 幸いにも、1周回のボリュームは控えめのため、通しプレイを繰り返すスタイルなら、さほど気にはならないかと思います。しかし、セーブ・ロードを多用するプレイスタイルだと、かなりテンポが悪くストレスがたまるため、アップデートで改善していただけるとうれしいポイントでした。

さいごに

 良い部分と悪い部分が極端な印象でしたが、終盤までプレイした感触は、高評価の総評でした。しかし、最後に続編の存在を匂わせる蛇足なエピローグが用意されており、気持ちよくプレイを終えられなかったことから、心情的に高評価を付け難くなっています。

 もちろん、本編の謎は一通り解決しているので、未完結というわけではありません。続編の存在をポジティブに捉えることができれば、評価は反転するため、最後の最後に大きく人を選ぶ演出が用意されている作品でした。