【WORLD END ECONOMiCA】紹介・評価 金融×ボーイミーツガール

月面都市を舞台にしたビジュアルノベル「WORLD END ECONOMiCA」

 シナリオを手掛ける支倉凍砂氏を筆頭に、豪華スタッフサークル「Spicy Tails」によって制作された同人作品。「近未来、人類が月面に都市を築いた世界で少年が夢を追う物語」だけならありきたりですが、「夢を掴む為に必要な物は金、儲けるための手段はデイトレード」と言う一風変わったエピソード1から始まる、全三部作の壮大な作品です。

 先日、ついにEpisode3が発売されて完結を迎えたのを機に、過去の記事を書き直して1本の作品紹介にしてみました。ゲームレビューサイトとしては、選択肢の無いビジュアルノベルを大プッシュで紹介するのは少々場違いかもしれませんが、それでもお薦めしたい作品です。ここ最近で触れたノベル系の中でも最高の一作だと言い切れます。

剣も魔法もない、数字による戦いの世界で描かれるボーイミーツガール

 前人未踏の地を夢見る少年”ハル”と、数学の天才少女”ハガナ”の出会いから幕を開ける物語。月面都市という架空の経済が、本当に存在するかのように感じる作り込まれた世界観の元、本作にはストーリーのメインとして”取引”が組み込まれています。売買の内容が少年達を一喜一憂させる構成となっており、それが本作最大の魅力です。

 必然的に作中では取引に関する専門用語も飛び交うことになりますが、それなりにかみ砕いた説明を作中で受けられる事。そして最終的にストーリーを楽しむ事で自然と飲み込む事が出来る作りになっているので安心です。取っつきにくそうなジャンルながら、普段から接していない人ほど逆に興味が沸いて魅力的に感じる作品だと、自身のプレイから実感しました。

エピソードが進むごとに物語は壮大に、そして少年は夢を追い求め続ける

 個人取引がメインのEp1から企業規模になるEp2。さらにEp3では、その上を行くスケールへと盛り上がっていきます。ハガナに加えて、新ヒロインであるエレノアや成長したクリスの存在で華やかさを増しながらも、実に現実的かつ無慈悲な展開で進行していくストーリー。ネタバレになる為、詳細は語れませんが文句なしの面白さだと言う事は断言出来ます。

ビジュアルノベル作品である事を活かした上手い演出も満載

 選択肢は無く完全に一本道のストーリー。終始クリックして文章を読み進めるだけなので単調なように感じるかもしれませんが、この作りが本作品とは相性が良い。1分1秒の駆け引き、どのタイミングで売るか・買うかといった緊張がワンクリック毎に高まっていく感覚は、プレイし終えたあとでも忘れられない高揚感でした。

沢山の方に知って、楽しんで貰わなければ勿体ないとまで思う作品

 同人作品なので販促や購入経路は限られていますが、そんな程度の事で埋もれてしまうのは本当に惜しい。『こういう時に、ブログを持ってると言う事を活用しなくてどうするんだ!』という気持ちいっぱいで紹介記事を書いてみました。

追記:エピソード1の無料ダウンロード配信がスタート

 登録などは不要で、ワンクリック簡単ダウンロード。それだけでエピソード1の魅力を余す事なく体験出来ると言うのなら、実際に遊んで貰うのが面白さを伝える1番の近道ですね。エピソード1だけでも約7時間程と言う大ボリュームなので、かなり読み応えがありますよ。