【Wo Long: Fallen Dynasty】評価・レビュー 荒削りな部分は多いものの、戦闘の面白さが際立つダーク三國アクションRPG

総評
独特のゲームシステムが数多く盛り込まれた、ダーク三國アクションRPG。装備やストーリーに荒削りな部分が目立つものの、戦闘の面白さだけで高評価を付けたくなる作品でした。
良かったところ
スピード感が際立つ攻防一体のバトル
士気ランクを意識しながら行う探索
悪かったところ
荒削りで軽視されている装備品
盛り上がりに欠けるストーリー
5
A+
ジャンル アクションRPG
ハード PlayStation 4
PlayStation 5
Windows
Steam
Xbox
発売日 2023年3月3日
発売元 コーエーテクモゲームス
開発元 コーエーテクモゲームス
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで25時間

 コーエーテクモゲームスがおくるダーク三國アクションRPG「Wo Long: Fallen Dynasty(ウォーロン フォールン ダイナスティ)」のレビュー記事です。

 独自のシステム・名称が満載で挑戦的なゲームデザインの本作。残念ながら装備品・トレハン要素やストーリーは荒削りながらも、戦闘におけるアクションが非常に高評価な作品です。慣れるまでに時間は掛かるものの、プレイスキルが上達するに従って、武術の達人になったかのようなアクションが楽しめました。

スピード感とスリル溢れるバトルシステム

 様々な独自システムが盛り込まれた戦闘は、唯一無二の体験が得られるアクションに仕上がっていました。中心となるのは「氣勢」というスタミナとMPを兼ねたゲージと、成功すれば如何なる攻撃も受け流す「化勁」の2つです。両者が組み合わさることで、スピード感とスリル溢れる戦闘が楽しめます。

 「氣勢」は0を基準としてプラスとマイナスに振れるゲージとなっており、防御的な行動や「武技」「仙術」を行うと減少します。逆に「化勁」を決めると増加するため、敵の攻撃を「化勁」で受け流しながら「氣勢」を獲得して、反撃に転じるのが基本の戦い方です。マイナスの状態でもアクション自体は行えますが、ゲージが振り切れた状態で攻撃を受けると行動不能に陥るため、常にゲージ管理を意識しなければなりません。

 敵の攻撃を受け流す「化勁」は、敵の攻撃が当たる直前でボタンを押すことで成功するアクションで、タイミングさえ合えば攻撃の種類や方向を問わずダメージを受けません。更に、「氣勢」を獲得して敵の体制も崩れる攻防一体のアクションです。本作の敵は攻撃が苛烈で、普通に回避しながらでは反撃する機会が少ないため、「化勁」を中心に立ち回るようデザインされています。

 プレイヤーだけでなく、敵側も「氣勢」ゲージを備えており、ダメージを与えることでゲージを減らせます。更に「化勁」を成功させると上限が削れるため、「化勁」と反撃を組み合わせて行動不能に追い込み、強攻撃「絶脈」を叩き込むのが攻略の流れになります。敵側にも「秘技」という強攻撃が存在しており、自身のHP次第では一撃で即死する威力を秘めているものの、「化勁」できれば「氣勢」を大きく削れるので、リスク承知で受けに行く場面も多かったです。

 敵の攻撃を「化勁」で受け流すのが前提になるため、多くのボス戦では、相手の行動を読み切って勝つ爽快感も得られました。ボスの種類が雑魚敵よりも多く、人間・妖魔、それぞれ感触が大きく異なる戦闘が楽しめた点も好印象です。

「士気ランク」を高めながら進むステージ探索

 直接戦闘だけでなく、探索においても独自のシステム「士気ランク」が存在する点も大きな特徴です。プレイヤーと敵にはランクが設定されており、相対的な数字差で、与えるダメージや受けるダメージが増減する仕組みです。

 プレイヤーのランクはステージ攻略のたびに0から始まり、敵を倒すことで増加していきます。ステージの奥へ進むほど、敵のランクは高くなるため、少しずつランクを上げながら探索する形式です。ランクは敵の「秘技」を食らうと減少したり、死亡することで殺された相手に奪われたりするため、雑魚敵相手でも緊張感が保たれていました。

 ステージの道中にあるポイントに旗を立てると、士気の最低保証にあたる「不屈ランク」が増加する仕組みも面白いです。死にながら挑戦を繰り返すボス戦では、士気ランクが必然的に下がってしまいますが、全ての旗を立てていれば、ボスと同程度のランクが保証されます。ちなみに、本作のステージは高低差が激しく、全ての旗を探すには入念な探索が求められました。

 1周目は、しっかりとランクを上げていけばボスよりも高くなるため、意外と難度は低めです。初見で倒せてしまうボスもいました。2周目に入ると、最大まで上げてもボスと同格。「不屈ランク」はボスより低い数字で止まるため、本格的な死にゲーと化します。特に、ボスの「秘技」は即死になりがちなため、1度たりとも「化勁」を失敗できない戦いが楽しめました。

荒削りで軽視されている装備品・トレハン要素

 装備品ごとにレアリティや備わっている特殊効果が異なり、トレハン遊びを期待させるゲームシステムですが、実際に遊んでみると驚くほど荒削りで軽視された要素でした。そもそも高レアリティのドロップ率が低く、欲しい装備が運良く落ちることに期待が持てません。

 仲間NPCの絆を最大まで上げると、揃え装備を一式もらえる要素があるので、多くの方がそちらに頼りそうな感触でした。実際、私は体験版で獲得した仲間NPCの防具を強化し続けて、ストーリークリアどころか2周目の最後まで問題なく遊べました。

 武器は13種類の中から2つ装備できるため、自由度が高そうに見えますが、種類ごとの性能差は微々たる物です。更に、「絶脈」のダメージが武器の攻撃力に比例する仕様から、1枠は高攻撃力の武器で埋まります。「化勁」によって生まれた隙を突くには、出の早い武器も欲しいため、残りの1枠も選択肢は限られていました。

 装備品関連のUIが非常に使いづらい点も、積極的に装備を改善するモチベーションを阻害しました。装備の付け替えにおいて、特殊効果の比較すらできません。倉庫機能も実用性を一切考慮していない出来映えで、1度も利用することはありませんでした

盛り上がりに欠けるダークファンタジー三國志

 アバター形式のオリジナル主人公が、妖魔はびこるダークファンタジーテイストの三國志に関わっていくストーリーは、盛り上がりに欠ける内容でした。主人公が特定の勢力に属したり、特定のキャラクターと親交を深めたりしないため、様々なキャラクターのイベントに浅く広く関わる物語です。

 主人公自身は喋らないので存在感が薄いのに対して、何故かみんなが主人公を持ち上げる状況に、違和感を覚えた場面も少なくはありません。義勇兵から成り上がっていくという体裁ではあるものの、立ち位置が定まっていないので、プレイヤー視点では常に蚊帳の外でした。

 ゲームでは三國志全体のうち序盤しか触れられておらず、不完全燃焼なタイミングであっさりと幕を閉じる点も、盛り上がりに欠ける要因の一つです。

さいごに

 戦闘に関するアクションが高評価だっただけに他の部分が惜しいとも、荒削りな部分を差し引いてもアクションだけで高評価だったとも言える作品でした。今後はDLCが予定されており、併せて不満点も改善されることに期待しています。