【Voice of Cards ドラゴンの島】評価・レビュー カードとナレーションだけで構成されたTRPG風RPG

総評
カードとナレーションだけで構成されたユニークなRPG。TRPGを強く意識したコンセプトで、他のゲームでは味わえないような独特の雰囲気を持った作品です。勇者がドラゴンを倒す王道RPGかと思いきや、中身は異端なストーリーも見所でした。
良かったところ
カードだけで表現された世界観
ナレーションで誘導するTRPGの雰囲気
悪かったところ
単調になりがちなバトル
焦れったいゲームスピード
3
B
ジャンル RPG
ハード PlayStation 4
Nintendo Switch
Steam
発売日 2021年10月28日
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 エイリム
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで9時間

 スクウェア・エニックスがおくるRPG「Voice of Cards ドラゴンの島」のレビュー記事です。

 カードとナレーションだけで構成された、ユニークな作風が際立つ本作。カードの動きやゲームマスターの語りだけで全てを表現しているため、見方によっては地味なゲームにも映りますが、他の作品では味わえないような独特の魅力を備えています。TRPGを強く意識しており、実際にコマやカードを手で動かしているような操作感で、バトルではダイスを振って成否判定を行うシステムも用意されていました。

 自称勇者がドラゴンを倒すために冒険する王道RPGに見せかけて、中身は異端なストーリーも見所です。人を選ぶほど救いのない物語ではないですが、ダークテイストで闇深さを秘めていました。残念ながら、バトル周りに不満が多く評価を落とす要因となったものの、ゲームのストーリーや雰囲気を重視する人になら、おすすめしやすい作品です。

カードとナレーションだけで構成されたRPG

 本作は、アナログ感を強く意識したRPGとなっており、最大の特徴は全ての要素がカードで表現されている点です。キャラクターやアイテムだけでなく、マップもカードをマス目のように敷き詰めて構成されています。イベントシーンもカードを利用する形で、姿や状況の変化を裏返すことで表現したり、破り捨てることによって死を描写したりといった、カードならではの演出も目に付きました。

 ゲームの進行やストーリーは、全てゲームマスター(CV:安元洋貴)のナレーションで進行する点もユニークです。プレイヤーとゲームマスターの2人で、実際にTRPGを遊んでいるような雰囲気が楽しめます。語りを阻害しないようBGMも控えめで、見方によっては地味なゲームにも映る作風ですが、他の作品では味わえないような独特の魅力を備えていました。

 全てがカードで表現されているため、キャラクターやエネミー、アイテムをコレクションとして閲覧も可能です。キャラクターやモンスターにはフレーバーテキストも用意されており、物語の理解を深めるのに一役買っています。特定の条件を満たすと、カードの裏面が解放されて、様々な真実が明らかになる要素も存在。一目見て『かわいい』と思った看板娘は、表面に納得のテキストが書かれているが、裏返してみると……といった体験が楽しめました。

王道のようで中身は異端のストーリー

 自称勇者の主人公が、ドラゴンを倒すために旅立つところから始まるストーリーは、王道のようで中身は異端です。登場するキャラクターは、変わり者や裏のありそうな人物ばかりで、イベントも闇の深い内容が目立ちます。街の名前やNPCの発言にネタを仕込んで、王道RPGをいじるような部分もあって、遊び心があちこちに取り入れられた作品です。

 開発スタッフのネームバリューから、容赦ないダークストーリーを期待するところですが、想像していたよりは控えめでした。後に引きずるような暗鬱さや、トラウマを残すような展開は少なく、過度の期待は厳禁です。人を選ぶほどの尖ったストーリーではなく、闇深さを秘めてはいるものの、普通の感性を持ったユーザーにもおすすめできる物語でした。

 TRPG風でビジュアル的な演出が質素なだけでなく、テキストの文字数も限られているため、ストーリーの細部はプレイヤーの想像力に委ねられている部分が多いです。全体的に説明が乏しいので、見えている範囲の情報からプレイヤー自身が深掘りしなければなりません。表面上のテキストを読み進めているだけでは、説明不足からの急展開に感じる部分もありました。

シンプルだが単調になりがちなコマンドバトル

 エネミーとの戦いは、敵味方を問わず素早さの高いキャラクターから行動するコマンドバトルです。キャラクターのステータスは、攻撃力・防御力・ライフ・素早さの4種類しかありません。攻撃側の攻撃力が、相手の防御力を上回った分だけライフにダメージを与える、とてもシンプルなルールになっています。

 単純な攻撃以外に、ダメージの上乗せや属性を付与するスキルが存在しており、ジェムを消費する形で発動します。ジェムは味方の行動順が回ってくるたびに1つ増加するため、小出しに消費するか、貯めて強力なスキルを発動させるかといった選択が発生しました。キャラクターごとに使えるスキルが大きく異なるので、どのメンバーでスキルは何をセットするか、パーティー構成を考えるのは面白い要素です。

 一部のスキルでは、追加ダメージや状態異常の付与に、ダイスを振って成否判定を行うTRPGらしいシステムも用意されています。その反面、攻撃のミスやダメージのバラツキといった、ダイスとは無関係の乱数要素が存在している点には違和感を覚えました。一般的なRPGでは当たり前の乱数ですが、TRPGをモチーフにしている本作においては、作風とかみ合っていない印象です。

 プレイヤーがジェムを使ってスキルを発動するのに対して、エネミーはジェムに関係なくスキルを発動できる仕様も残念でした。エネミー側のジェムが貯まったのを見て警戒や、ジェムが少ないのでチャンスといった読み合い要素がなく、場当たり的で単調な戦闘になりがちです。バランス調整が難しくなるのは理解できるものの、エンカウント率が高く戦闘の多いゲームなので、もう少し工夫が欲しいと感じる部分でした。

スローテンポで焦れったいゲームスピード

 実際にカードで遊んでいる雰囲気にこだわっているため、コマの移動やカードを動かす動作も、実際に手で動かしているような早さに統一されています。ビデオゲームとしてはスローテンポで、TRPGらしいスピード感で遊んでほしいという、開発側の強い意志を感じました。

 こだわりのゲームスピードは、プレイヤーの好みが分かれそうな部分ではあるものの、オプション等で速度変更や演出の省略を行うことはできません。サクサクとした進行が好みの場合、焦れったいと感じる人も多そうです。私自身、イベントやバトルが低速なのは慣れたのですが、アイテムの購入や整理といったゲームシステム面まで動きが鈍い点はストレスでした。

 体験版で要望が多かった影響か、今後のアップデートでスピードを上げられるようにすると公式でアナウンスが行われています。実際、どれくらいの速度・範囲までスピードアップするのかは不明ですが、軽快に遊びたい人は、アップデートを待ってからプレイするのがおすすめです。

さいごに

 開発スタッフのネームバリューから、想像を絶するような展開・仕掛けを期待していたのですが、良くも悪くも常識的な内容に収まった作品でした。欲をいえば、ゲームスピードやバトル周りの不満なんて吹き飛ばしてくれるようなインパクトが欲しかったです。

 ビデオゲームでありながらTRPG風という独特なコンセプトや、こだわりのゲームスピードは実際に触れてみないとイメージしづらい部分もあり、購入の検討においては体験版のプレイも推奨です。体験版自体、本編の前日譚を描いた物語で、キャラクターを掘り下げるストーリーになっているため、購入を決めている場合でも事前に触れておいた方が良い内容でした。