【竜星のヴァルニール | PS4】評価・レビュー 竜を喰らうことで竜を討つ、捕食バトルRPG

総評
個性的で評価の高いゲームシステムに対して、低クオリティのストーリーが足を引っ張っている、とても惜しい作品でした。細かいことには突っ込まず、キャラクターのかわいさやバトルを楽しむプレイがおすすめのRPGです。
良かったところ
3層構造フィールドで戦う浮遊バトル
喰らうほど強くなる捕食の育成要素
悪かったところ
ご都合主義が目立つストーリー
説明不足を補完する強引な展開
イベントCGが10数枚と少ない
3
B
ジャンル 生きるために竜を喰らうRPG
ハード PlayStation 4
発売日 2018年10月11日
発売元 コンパイルハート
開発元 コンパイルハート
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで19時間

 コンパイルハートがおくるガラパゴスRPG 第5弾「竜星のヴァルニール」のレビュー記事です。

 「竜の呪い」をテーマにした絶望的な世界観を、ストーリーとゲームシステムの両方から楽しめる本作。コンパイルハート作品に関わる複数のイラストレーターがキャラクターデザインを担当していることに加えて、タカヤマトシアキ氏デザインのドラゴンが目を引きます。

 突き抜けて面白い部分は少ないものの、3層構造のフィールドで戦う「浮遊バトル」や、竜を喰らってスキルを得る「捕食」など、バトルシステムは好感触でした。しかし、ストーリーのクオリティはとても低く、RPGにしてはバトルや探索は控えめの構成ということもあって、冴えない印象が強い作品です。

薄っぺらいダークファンタジー

 『狂気に支配されるか、竜に喰われるか』の二択を迫られる、「竜の呪い」をテーマにした絶望的な世界観は魅力的だったものの、ストーリーが設定をうまく活かせていないのは残念でした。ご都合主義や説明不足の展開が目立ち、興ざめしてしまう場面も少なくはありません。

 特に、サブキャラクターの使い捨ては目に余りました。状況を解説するためだけに突然登場したり、出番が終わったら戦闘もなく死んだりと、都合良く利用してポイ捨てです。行動原理が不明なまま、1人で盛り上がって退場するキャラクターもいて、プレイヤーは置いてきぼりでした。

 RPGにしてはストーリーパートの比率が高いものの、背景に音だけを鳴らした演出が多用されていたこともマイナスです。複数のイラストレーターを起用した作品にも関わらず、まともなイベントスチルは個別エピソードを含めても10数枚しかなく、低コストでの製作が透けて見えるような薄っぺらい作品に仕上がっていました。

狂気度で分岐するマルチエンディング

 ストーリーは、主人公たちの狂気度や「妹の餌付け」によってルートが分岐する、マルチエンディングとなっています。序盤から分岐を示唆されるため、強く意識させられる要素です。全部で3ルート用意されており、結末は大きく変化するため、コンプリートを目指したくなります。

 エンディングに影響を及ぼすポイントは多いですが、分岐条件は分かりやすいので、狙ったルートを目指すのは容易です。妹の餌付けも、アイテム目当てに欲張らなければ、かなり余裕のあるシステムになっていました。たとえ1周目で失敗しても、引継周回があるので安心です。

3層構造のフィールドが特徴的な浮遊バトル

 空を飛んで戦う「浮遊バトル」は、3層構造のフィールドが特徴のバトルシステムです。立体的な範囲攻撃やフォーメーションなど、高さを取り入れた戦いが楽しめます。適切な階層への移動は自動で行われるため、必要以上に階層を意識しなくて良い点も遊びやすかったです。

 ボス戦では、複数の階層にまたがる巨体や部位破壊といった要素が追加され、通常戦闘とは大きく異なるバトルが楽しめます。長期戦で絶大な効果を発揮するバフ・デバフや、複数の部位にダメージを与える全階層攻撃といった、ボス戦で活躍するスキルも多く、立ち回りの変化が良いアクセントになっていました。

 ノックバックによる敵の位置移動、設置型のトラップスキル、他にも細かいシステムが豊富に用意されているものの、全てを使いこなす必要はありません。しっかりとキャラクターを育成していれば、何となくで戦っていてもサクサクと進める、お手軽な難易度です。

竜を喰らうことで強くなる捕食の育成要素

 竜を喰らうことでスキルツリーを獲得する「捕食」は、浮遊バトルと並んで個性的なシステムです。スキル習得は捕食経由でしか行えないため、必須の育成要素になっています。新しい竜が登場するたびに強化のチャンスが発生するので、戦闘のモチベーションが格段に上がりました。

 捕食を発生させるには、捕食スキルで敵を倒す必要があります。確率で一撃死に加えて、範囲攻撃や属性攻撃など、種類は豊富に用意されていました。全ての竜を捕食して進むのがベストということもあって、ボス戦以外は捕食スキルだけでもクリアできる極端なバランスも良かったです。

 スキルツリーは捕食者自身しか使用できないため、戦闘に参加していないキャラクターとの性能差が広がってしまい、気軽に入れ替えられない点は残念でした。全員が同じスキルを覚えるので、キャラクターの個性が乏しくなってしまう辺りにも、もう一工夫が欲しかったです。

意外と控えめな不具合・不満点

 何度か無限ローディングや戦闘中にコマンドがループして進行不能に陥ったものの、コンパイルハートの作品としては、不具合は控えめです。ステータス表示が突然数百万倍にはね上がったり、画面の表示がおかしくなったりといった、笑って済ませられる不具合は目をつぶりました。

 主な不満点はフィールド探索に集中しています。シンボルアタックの射程距離がほぼ0なので、使い勝手が極端に悪いこと。特性魔法を使用するたびに操作キャラクターを変更しなければならない煩雑な操作と、変更時にカメラの高さがガクガクする気持ち悪い挙動などが挙げられます。

 しかしながら、慣れれば些細な不満点ばかりなので、発売時点でまともに遊べる状態といっても過言ではありません。そもそもRPG部分のボリュームが控えめですが、コンパイルハートはパッチを重ねた結果、別ゲームになってしまう作品も多いので、最初からコンパクトにまとめているだけでも好印象でした。

さいごに

 面白いと感じる部分は存在するものの、魅力を前面に出せていないため、残念なストーリーにばかり目が行ってしまう惜しい作品でした。ストーリーはパッチで改善できるレベルではないので、時間を置いても評価が大きく変わることはないと思います。

 あまり細かいことは気にせず、キャラクターのかわいさや独特のバトルシステムを楽しむくらいのつもりで遊ぶのがおすすめの作品です。