【VA-11 Hall-A(ヴァルハラ) | Vita】評価・レビュー カクテルが運命を変えるユニークなアドベンチャー

総評
カクテルが選択肢の代わりとなる一風変わったゲームシステムや、一癖も二癖もある登場人物たちなど、個性的なアドベンチャーゲーム。万人受けする内容ではないものの、強い魅力的を感じる作品です。
良かったところ
独特の世界観と雰囲気
ムード抜群の豊富なBGM
絶妙なセンスのローカライズ
カクテルで分岐するユニークなシステム
5
A+
ジャンル アドベンチャー
ハード PlayStation Vita
発売日 2017年11月16日
発売元 PLAYMORE
開発元 Sukeban Games
公式サイト リンク
プレイ時間 1周目クリアまで6時間

 あなたのカクテルが、誰かの運命を変える。サイバーパンクバーテンダーアドベンチャーVA-11 Hall-A(ヴァルハラ)」のレビュー記事です。

 お客に出すカクテルが選択肢の代わりとなる、一風変わったゲームシステムが特徴の本作。近未来の、企業と犯罪帝国が牛耳る街を舞台とした独特の世界観や、一癖も二癖もある登場人物たちなど、システム以外も個性的な要素が満載です。

 プレイヤーが行うことは、お客にカクテルを出すだけです。しかし、それによって生じる自然なストーリー分岐は、驚くほどの奥深さを備えています。決して万人受けするコンセプトやストーリーではないものの、気に入ればとても魅力的に感じる作品でした。

近未来の街を舞台にしたサイバーパンクストーリー

  • VA-11 Hall-A オープニング

 企業と犯罪帝国が牛耳る街「グリッチシティ」に存在するバー「VA-11 Hall-A」を中心に、物語は進んでいきます。ゲーム内では「ヴァルハラ」と呼ばれていますが、認定番号がそう読めるだけで、正式な名前は存在しないという設定からも、ディストピア感がすごいです。

 プレイヤーは、ヴァルハラに勤めるバーテンダーのジルとなって、お客にカクテルを出す日々を過ごします。基本的に、ヴァルハラと自宅以外の場所が描かれることはなく、カクテルを通して紡がれるジルとお客の関係や、会話から聞く街での出来事が物語の主体です。

訳ありで個性的すぎる登場キャラクターたち

  • blank

 ヴァルハラを訪れるお客は、変人という言葉では済まない、一癖も二癖もある人物ばかりです。売春アンドロイドや24時間自分を生放送する女の子、喋る犬など、常識人どころか人間自体が希少でした。常識的な人間でも、見た目は瓶詰め脳みそという場合もあって油断はできません。

 彼らはカクテルを飲みながら、様々な話を聞かせてくれます。単なる世間話のときもあれば、深刻な悩みを相談されることも多いです。会話を繰り返すうちに、お客同士の意外なつながりが見えてくる場合もありました。常連以外は謎が残ったままになるなど、絶妙なリアリティも良かったです。

 なお、ゲーム内で展開される会話の特徴として、下ネタがかなり多いです。作品の軽いテイストもあって、下品や不快と感じる内容は少ないですが、露骨な表現が多いと感じました。同性愛者も多く、主人公もレズビアンです。百合百合した展開から友情まで、人間関係の幅も広いです。

カクテルによって変化する特殊なストーリー分岐

  • VA-11 Hall-A カクテル作りの基本

 アドベンチャーゲームですが、メインストーリーに会話選択肢は存在せず、全てはカクテルによって分岐します。ちょっとした会話の変化から、個別エンディングの発生まで、影響する範囲は様々。正に『一日を変え、一生を変えるカクテルを!』というフレーズにふさわしいユニークなシステムです。

 注文通りに作るだけでなく、お客の様子などから、飲みたいカクテルを推測しなければならない場面も多いです。中には『いつもの』で済ませたり、謎かけのような注文を行うお客もいます。世間話で話題に挙がったカクテルの由来や、常連客の好みなどを覚えておくのが攻略のコツでした。

 カクテルの作り方は、常にレシピを参照できるので覚える必要はありません。同じカクテルでもサイズやアルコール量を調整できるので、選択肢は豊富です。ゲーム内に登場するカクテルは、架空の物ばかりなので、ふだんはお酒をたしなまないという人も、基礎知識などを気にせず楽しめます。

プレイしていくうちに気分はバーテンダー

  • VA-11 Hall-A キムにビールを

 序盤は、レシピ片手にカクテルを作るだけの地味なゲームという印象でした。しかし、カクテル作りに手慣れてきて、お客の話題に耳を傾ける余裕ができると、どんどん面白くなります。よく注文されるカクテルなどは、レシピを見なくても手早く作れるようになって、気分はバーテンダーです。

 営業中に流れるBGMも、プレイヤーが自由に選んでジュークボックスにセットできます。種類も60曲以上とかなり多く、雰囲気の良い曲ばかりです。初回特典として、12曲だけ収録されたCDが付属していましたが、追加でサウンドトラックを購入してしまいました。

 他のやるべきことを全て済ませ、飲み物を用意してリラックスした状態で遊ぶと、濃厚な時間を堪能できる作品でした。

さいごに

 Steamで英語版が販売されていた頃から興味を持っていたのですが、日本語版がコンシューマーで発売されるということで、迷うことなく購入しました。実際に遊んでみると、期待を上回る面白さで、正式な日本語版を待たずにSteam版もプレイしておけば良かったと思うほどです。

 コンシューマー版の発売と同時にSteam版も日本語アップデートが行われており、コンシューマー版よりも安価で購入可能です。癖の強い作品ですが、レビュー記事や紹介ムービーを見て興味を惹かれた方は、是非プレイしていただきたいと思います。