【月姫 -A piece of blue glass moon-】評価・レビュー 圧倒的なクオリティで描かれたリメイク版1作目

総評
約21年越しのリメイク版となる伝奇ビジュアルノベル。原作の一部ルートだけを収録した分割作品ながらも、ボリューム・クオリティともに圧倒的で、異常なまでの作り込みが際立つ作品です。リメイク版の1作目にあたり、各ルートのメインストーリーは完結していますが、良くも悪くも次回作が気になる構成でした。
良かったところ
濃密で長大なボリューム
圧倒的なクオリティで描かれるストーリー
リメイクされた「おしえて!シエル先生」
悪かったところ
5
A+
ジャンル 伝奇ビジュアルノベル
ハード PlayStation 4
Nintendo Switch
発売日 2021年8月26日
発売元 TYPE-MOON
開発元 TYPE-MOON
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで34時間

 TYPE-MOONがおくる伝奇ビジュアルノベル「月姫 -A piece of blue glass moon-」のレビュー記事です。

 約21年越しのリメイク版となる本作。収録されているのは、『「月の表側」を語る物語』と謳われる「アルクェイドルート」「シエルルート」の2篇だけですが、大幅に増強された密度とボリュームで中身に不足はありません。元々は1つの作品を分割している都合上、本作だけでは様々な謎を残す構成となっており、高評価ながらも2~3部作の1作目という感触でした。

 ボリュームだけではなく、クオリティも圧倒的です。全編がイベントスチルで構成されているのでは?と感じる作り込みで、長丁場でありながらプレイヤーを全く飽きさせません。PS4版のゲーム容量が約36GBという点も、本作のボリューム・クオリティが規格外ということを物語っていました。リメイク版「おしえて!シエル先生」も収録されており、各ルートのエンディングだけでなく、バッドエンドまで全てコンプリートしたくなる魅力を秘めた作品です。

分割でもボリュームは十分なリメイク第1弾

 原作では、大きく分けて5つのルートが存在しましたが、本作で遊べるのは「アルクェイドルート」「シエルルート」の2篇だけとなっています。公式でも『「月の表側」を語る物語』と謳われる、原作の「半月版」に近い構成です。残りのルートは次回作以降とされており、「月姫 -A piece of blue glass moon-」はリメイク第1弾という形になっています。

 ルート数は半分以下ですが、密度は2倍以上に増しているため、ボリュームに不足はなかったです。私はボイスの途中でも読み終えたらページを進めるプレイスタイルですが、ボイスを飛ばしながらでもストーリークリアまでに30時間以上を要しました。フルボイスでボイス量もかなり多いため、全て聞きながらプレイすれば、公称の60時間も誇張ではありません。

 元々1つだった作品を分割している都合上、本作だけでは解消されない謎が数多く残る点には注意が必要です。もちろん、各ルートのメインストーリーは完結しており、内容も高評価でしたが、次回作への布石と推測されるイベントも目立ちました。たとえ原作をプレイ済みでも、新規要素を中心に様々な疑問が残ります。本作だけで一区切りは付くものの、2~3部作の1作目という感触でした。

圧倒的なクオリティと演出で描かれるストーリー

 長大なボリュームだけでなく、2D系アドベンチャーゲームの限界に挑むかのようなクオリティにも、目を見張るものがありました。立ち絵やエフェクトのバリエーションが豊富な上、拡大や回転といった演出をうまく使い、長丁場のストーリーでありながらプレイヤーを全く飽きさせません。背景の描き込みも非常に細かく、単なる会話シーンですら、イベントスチルのような美しさでした。

 特に、拡大の使い方が巧みだと感じながらも、かなりクローズアップしているシーンでも、全く粗の見えないビジュアルには驚きでした。ゲームとしてはフルHD(1920×1080)対応となっていますが、各種素材は、それを遙かに上回るサイズで制作・収録されています。ギャラリー機能で閲覧できるCGも、拡大に対応しており、美麗なイラストを思う存分に堪能が可能です。

 ビジュアル面以外でも、あらゆる面で豪華さが目に付きました。収録されている楽曲数は、サウンドギャラリーで確認できるだけでも100曲近くに及びます。オープニングアニメもルートごとに用意されており非の打ち所がありません。PS4版のゲーム容量が約36GBと、アドベンチャーゲームとは思えない大容量を備えている点も、本作のボリューム・クオリティが規格外ということを物語っていました。

チープに作り込まれたリメイク版「おしえて!シエル先生」

 バッドエンド後のオマケ要素「おしえて!シエル先生」もリメイクされて収録。本編とは異なり、チープな雰囲気が特徴のコンテンツですが、中身はしっかりと作り込まれています。もちろん、こちらもフルボイスです。攻略のヒントを聞けるだけでなく、ちょっとした小ネタや、ここでしか聞けない話も少なくはありません。場合によっては、複雑なフラグ管理でたどり着くバッドエンドもあって、ヒント機能としても有用でした。

 本作には20種類を超えるバッドエンドが存在しており、ほとんど運任せで選ぶしかない理不尽な選択肢も多いです。とはいえ、間違えても本コンテンツを楽しめるため、どちらに転んでもプレイヤーが楽しめる構成となっています。各ルートのエンディングだけでなく、「おしえて!シエル先生」を全て閲覧するため、バッドエンドまでコンプリートしたくなる魅力を秘めていました。

さいごに

 ストーリーの詳細については、ネタバレ厳禁の内容のため詳しく振れられないものの、ボリューム・クオリティだけでも語れることが豊富でした。良くも悪くも次回作が気になって仕方ない作品ではあるものの、原作のプレイ有無にかかわらず、興味を持っているならプレイをおすすめしたい作品です。