ジャンル | アドベンチャー |
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ハード | PlayStation4 PlayStation Vita |
発売日 | 2017年4月27日 |
発売元 | 日本一ソフトウェア |
開発元 | レジスタ |
公式サイト | リンク |
プレイ時間 | ストーリークリアまで13時間 |
12人の男女による、生き残りを賭けたデスゲームアドベンチャー「追放選挙」のレビュー記事です。
約1,300パターンという膨大なシナリオバリエーションが魅力の本作。作中には、数え切れないほどの選択肢と分岐が用意されており、周回するたびに違うストーリーが楽しめるようになっています。全てのシーン・メッセージを網羅するためには、とてつもないやりこみが必要です。
しかし、シナリオの分岐を増やすことばかりに注力されており、ゲームとしての完成度は今ひとつの評価でした。構成が複雑すぎて整合性の取れていないストーリーや、ほとんど運任せのデスゲームなど、粗が目立ちます。どれだけ分岐してもエンディングは1つだけという展開もあって、せっかくのシナリオバリエーションすらも余り活かせていないと感じる作品でした。
脱出不能の遊園地を舞台にした12人のデスゲーム
12人の男女が2人になるまで「追放選挙」という名のデスゲームを繰り返すストーリーは、様々な異常が満ちあふれています。どうやって連れてこられたのかわからない、欠落した記憶。管理者を名乗る謎の機械人形アリス。遊園地の外を徘徊する化け物など、開幕から謎だらけのアドベンチャーです。
発言の嘘が見える主人公を筆頭に、登場人物も個性的な存在ばかりで、更にストーリーは混迷していきます。様々な疑問に翻弄されながらも、最初の選挙で追放されてしまった妹の復讐と生存のために他者を追放していく展開は、とても興味をそそる内容になっていました。
膨大なシナリオバリエーションに潜む作り込みの甘さ
本作のストーリーは、誰から追放するかによって大きく変化していきます。追放する相手はプレイヤーが選べるものの、自由選択ではありません。主人公グループを除いた9人を3人ずつのグループに分けて、グループ単位で追放していきます。とはいえ、どのグループから追放するか6パターン。グループの誰から追放するか6パターン。6の4乗で1,296通りと制限付きでもシナリオ数は膨大です。
ある程度は共通の会話で構成されていますが、同じシーンでもシナリオによって会話が微妙に変化しており、かなり細かく作り分けられている印象を持ちます。既読スキップもシーン単位ではなく、1メッセージ単位で判定しているため、周回で同じ会話を繰り返し読まされることもありません。プレイログが用意されており、現在の進行状況が一目で把握できることもうれしい要素でした。
残念ながら良い点ばかりではなく、プレイを続けていると違和感を覚える場面も多かったです。2度は起こるはずのないイベントが2日連続で発生したり、現在の状況と会話が噛み合わなかったりなど、齟齬の内容は様々。中には、テキストとボイスが食い違っている場面も存在します。
いろいろと含みのある会話も多い作品なので、最初は何らかの伏線なのかと疑ったものの、何事もなく単なる不具合や誤字ばかりでした。膨大なシナリオバリエーションを構築するのは良いのですが、複雑になりすぎて、製作側も管理し切れていないように感じる作り込みの甘さです。
運任せで緊張感のないデスゲーム「追放選挙」
立候補者と対立候補で討論を行い、支持の少なかった方が舞台から追放される「追放選挙」は、シナリオバリエーションと並んで本作の代表的要素です。主人公はアリスに課せられたペナルティによって毎回立候補者となり、対立候補を指名して1人ずつ追放していくことになります。
ゲームとしてのルールは単純で、討論の中で出てきたキーワードを保存していき、イベントが発生したタイミングで適切なキーワードを選択するだけです。しかし、短いキーワードから主人公の主張を想像するのが難しく、どれを選べば正解なのかわかりにくいゲームになっていました。何も選択しないという回答も用意されているため、ほとんど勘で回答する場面も多かったです。
ストーリー後半の討論ほど覚えられるキーワードが増えていき、選択肢も増加することからゲームは難しくなっていきます。覚えているキーワードが3つを超えると、代わりに1つを忘れるのですが、イベントが発生する前に取捨選択しなければならないため、完全に運任せの選択になっていました。
討論のクライマックスには、対立候補の本音を暴き出す最後の選択が用意されています。こちらは運任せではなく、ストーリーや討論の内容を把握していれば、間違えることのない問題です。しかし、制限時間が7秒と短いので、ゆっくり考える余裕はありません。対立候補によっては、選択肢の文章量が多い相手もいるため、読むスピードが遅いと難易度が跳ね上がってしまう仕様です。
突っ込みどころの多いゲームですが、幸いにもコンテニューが容易で、ストレスが溜まることはありません。むしろ、敗北時にしか見られないシーンも存在するため、初回は負けてもかまわない心持ちで挑むことが多かったです。結果、勝敗に対する緊張感もなく、手ごたえのないゲームが続きました。
たった1つのエンディングと期待外れの真相解明
膨大なシナリオバリエーションに対して、エンディングが2種類しか用意されていないのは残念でした。厳密にいえば、本編のエンディングは1つしか存在しないため、プレイヤーがどのような選択をしても同じ結末にたどりつきます。そこまで含めて演出ともいえるストーリーですが、プレイヤーの介入に余り意味がなく、アドベンチャーゲームとしては面白みに欠ける内容です。
トゥルーエンディングへの分岐も、複雑な構成の本編に対して、選択肢を1つ選ぶだけという驚くほどシンプルな仕掛けで拍子抜けでした。クリアするだけなら周回プレイを行う必要もありません。分岐後は真相の解説が淡々と続く展開になっており、本編のシナリオ分岐に対して真剣に取り組み、先の展開にワクワクしていた気持ちも、蓋を開けてみると期待外れで徒労に終わった感触でした。
さいごに
豊富なシナリオバリエーションは魅力的だったものの、その他はパッとしない要素ばかりで、総合的には良いところが見当たりません。プロモーションムービーの大きな誤字や、公式サイトのスクリーンショットがサムネイルと表示で食い違っているまま放置されているなど、発売前から不安を感じる作品でしたが、良い意味で裏切られることもなく、残念な評価となりました。