ジャンル | DRPG革命DRPG |
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ハード | PlayStation Vita |
発売日 | 2017年10月5日 |
発売元 | コンパイルハート |
開発元 | ゼロディブ コンパイルハート |
公式サイト | リンク |
プレイ時間 | ストーリークリアまで30時間 |
コンパイルハートがおくるDRPG革命DRPG「塔亰Clanpool(トウキョウクランプール)」のレビュー記事です。
各種育成システムから難解なダンジョン探索まで、膨大な数のゲームシステムが詰め込まれている本作。ゲーム慣れしているかどうかで難易度が大きく変わるため、余りDPRGや複雑な育成RPGを遊ばないという人には、少しすすめにくいです。その反面、効率良く育成すれば爽快な戦闘が楽しめることや、複雑なギミック・トラップが満載のダンジョンに面白さを見いだせる人には、おすすめの作品でした。
目次で流し読み
フルボイスで描かれる少女たちのストーリー
トウキョウ上空に出現した逆さ都市群から魔物が襲来する世界。対抗するために組織された「電脳戦術内閣」の少女たちが、逆さ都市群とつながる「黒界議事塔」を攻略するストーリーです。設定だけを読むとかなり奇抜な内容ですが、実際に遊んでみると意外に筋の通ったストーリーとなっています。
敵味方を併せて20人ほどのキャラクターが登場。イベントは全てフルボイスで展開されます。残念ながらメインストーリー以外の個別イベントは少なく、1人につき1~2種類程度しかありません。同様にイベントスチルも公式サイトに掲載されている物でほぼ全てです。代わりに、挿絵付きの前日譚「電撃PS連載小説」が公式で公開されているため、不足分はそちらで補完している印象でした。
なお、プレイし始めて、公式サイトに掲載されているストーリーとゲーム内のストーリーに差違がある点が少し気になりました。前者が「黒界議事塔」出現後に「電脳戦術内閣」が結成されているのに対して、後者は「電脳戦術内閣」結成後に「黒界議事塔」が出現しています。同様に「電撃PS連載小説」とゲーム内イベントも話が食い違っており、コンテンツ同士の調整が不十分だと感じました。
ハクスラから合成まで多種多様な育成システム
キャラクターの育成には様々なシステムが用意されています。ハクスラ要素を備えた武器・防具。タイプごとに能力補正やスキルが大きく変化するデジスキン。最大5体まで装備できる電脳精霊ガジェッティア。エーテル感応によって得られる政痕など、項目を挙げていくだけでも盛りだくさんです。
全てのシステムに能力補正やスキルがひも付いているので、しっかりと把握して活用できれば、どんどんキャラクターが強化されていきます。しかし、要素・項目がゴチャゴチャしている状態のため、複雑でインフレの激しい育成システムに慣れていない人は、使いこなせるまでに苦労するかもしれません。
個人的な印象としては、いろいろと詰め込まれた雑多な感じは嫌いではなかったです。むしろ、使いこなしてサクサクと攻略することに楽しみを覚えました。長大なダンジョン攻略で戦闘回数も多いため、育成システムを有効に使えるかどうかで難易度や面白さが大きく変わる作品となっています。
高速戦闘が快適なEP制コマンドバトル
コマンドバトル形式の戦闘は、毎ターン回復するEPの範囲内で複数個のスキルを発動できる仕様となっています。少ない消費のスキルを複数回発動させて1人コンボを発動させたり、消費の大きな強力スキルを発動させて他のキャラクターと連携したりと、かなり選択肢の多い戦闘です。
各キャラクターが1ターンに発動するスキルは登録制となっており、変更がなければRボタンだけで戦闘が始まる仕様はとても良かったです。しっかりと育成した状態で戦闘速度を最大にすれば、雑魚相手にエンカウントから戦闘終了まで1-2秒しか掛かりません。リザルト画面の方が長いくらいでした。このサクサクとした高速戦闘がなければ、総プレイ時間が倍になっていたのではないかと思います。
多彩なギミックと高エンカウントのダンジョン探索
本作のダンジョン探索では「電脳アプリ」と呼ばれる様々なツールが使用可能です。特定の壁を掘り進める「トンネル掘り」、落とし穴やダメージ床を無視できる「空中浮遊」、水中マップを探索できる「水中移動」といった便利ツールから、ダンジョンを脱出する「エスケープ」やモンスターを呼び出す「エネミーサーチ」など多種多様です。しかし、どのツールも使用するにはバッテリーを消費します。
各種便利ツールは、使用することでダンジョン探索を楽に進められるのですが、そもそも使用しなければ進めない場面も多く存在しました。また、ツールを使用する前提でかなり複雑に作られた階層も多く、常にバッテリー残量を気にしながらのダンジョン探索となります。幸いにも、しっかり探索すればバッテリー回復アイテムが手に入りやすいため、バッテリー管理のストレスは控えめでした。
他にも特徴として挙げられるのが、異常に高いエンカウント率です。敵と出会わずに10数歩も進めれば運が良い方。運が悪いと、戦闘終了後の1歩目でエンカウントする場合があります。前述した育成システムと高速戦闘を活用すれば一瞬で終わるとはいえ、かなり極端な印象でした。エンカウント率を低下させるアプリも存在しますが、バッテリーを消費するため活用する機会はほとんどなかったです。
後半になるほど大ざっぱになっていくゲームバランス
ゲームシステムに慣れてくると楽しい前半に対して、後半は延々と続くダンジョン探索に飽きてしまいました。効率良く育成を続けると、雑魚どころかボスでも瞬殺できるため、戦闘が作業になってしまうことが要因の1つです。途中から難易度を上げたものの、難易度があがると経験値入手量も増えてキャラクターが強化されるため、相対的な難しさは全く変化しません。
更に、経験値の多い高難易度でプレイし続けると、クリアするよりも先にステータスがカンストし始めます。設定ミスかと疑うような経験値の敵が登場するためレベリングも容易で、全キャラ全ステータスカンストが当たり前になってしまい、育成システムが形骸化していました。
キャラクターの育成が成熟して、戦闘が常時1ターンキルになると、残るのはダンジョンのギミックだけです。しかしながら、終盤は踏破してきた階層のギミック使い回しが多く、目新しさがありません。構造だけはアリの巣のように入り組んでいるため、煩雑な探索が延々と続きます。結果的に長く遊ぶほどに評価を落とす内容になっており、とても残念でした。
さいごに
体験版を遊んだ時点では、育成システムや快適な戦闘が好感触で、ダンジョン探索に不安を感じていたのですが、蓋を開けてみると評価を落とした要因はゲームバランスでした。目立つ不具合も何点か見かけており、もう少し丁寧に作り込まれていれば良作になりそうだったと惜しく思います。
とはいえ、これまでに遊んだコンパイルハートのDRPGに比べるとクオリティは高く、積み重ねや評価に対するフィードバックはしっかり反映されていると感じました。過去のコンパイルハート作品を遊んだことのある人や購入を迷っている人に対しては、十分おすすめできる作品です。