ジャンル | アクション |
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ハード | PlayStation 4 |
発売日 | 2020年6月19日 |
発売元 | ソニー・インタラクティブエンタテインメント |
開発元 | Naughty Dog |
公式サイト | リンク |
プレイ時間 | ストーリークリアまで23時間 |
Naughty Dogがおくるポストアトカリプス・サバイバルアクション第2弾「The Last of Us Part II」のレビュー記事です。
ジョエルとエリーの壮大な旅路から5年後を描いた本作。主人公の入れ替わりや「復讐」というテーマなど、前作に比べて対極にあたる部分が目立ち、単なる続編ではないストーリーになっています。単純に良い悪いで語るなら良いゲームなのですが、かなり挑戦的な内容から、合う合わないの好みも大きく分かれる作品です。私自身、腑に落ちない部分が多く、今ひとつ好きになれませんでした。
サバイバルアクションとしては、本質的に大きな変化こそないものの、敵のAIが洗練されたことで増した臨場感は見どころです。ジャンプや匍匐前進といった新規アクションは、戦闘が奥深くなっただけでなく、探索のシチュエーションにも多彩な変化を与えていました。豊富なアクセシビリティで、誰でもストレスなくクリアまで遊べるようになっており、アクションゲームとしての完成度はとても高いです。
なお、『前作を未プレイでも楽しめる』といえる程度の情報はそろっているため、今作からプレイすることも可能です。しかし、基本的には前作を体験してこその続編となっているため、未プレイの方は前作と併せてのプレイを強く推奨します。
復讐の連鎖を描いた挑戦的なストーリー
続編にあたるストーリーですが、前作は中年男性のジョエルが主人公だったのに対して、今作は19歳のエリーが主人公と、視点が大きく変化しています。旅路を共にした2人とはいえ、性別も年齢も違うため、プレイの感触は大きく異なりました。衝撃的な事件を発端とした「復讐」をテーマにしており、「希望」のために旅をした前作と同一の世界観でありながら、様々な部分で「対極」を感じさせられるストーリーです。
単純な善悪では割り切れない、あまりゲームらしくないストーリーは、好みが分かれそうな部分でした。復讐の連鎖によって生まれる葛藤や、敵味方それぞれのドラマが、登場人物だけでなくプレイヤー自身も悩ませます。登場人物たちは、自身の胸中を語る場面が少なく、プレイヤー側が考察する余地が大きいため、良くも悪くもクリア後の感触は人それぞれです。序盤からネタバレに相当する展開が盛りだくさんで、具体的な内容がほとんど公開されていないため、実際にプレイするまで体験が未知数という点も印象の振れ幅を大きくしていました。
「復讐」の連鎖が発生する流れや勧善懲悪に終わらないストーリーは、とても考え抜かれており、良い悪いでいえば良作です。客観的な評価を挙げるなら、多くが好評に振れると思います。しかし、合う合わないでいえば、残念ながら私には合いませんでした。どうにも腑に落ちない部分が多く、感情移入することができないまま、登場人物たちの行動をひとごとのように眺めている場面が多かったです。凝りに凝った物語は、「映画のようなゲーム」どころか「ゲーム付き映画」のようで、主要な部分をダイジェストで観た方が、楽しめるのではないかと感じました。
様々なシチュエーションが存在する都市探索
公式では「復讐の旅」と謳われているものの、前作のように都会から片田舎まで多種多様なフィールドを旅するのではなく、全体の大半はシアトルで構成されています。都市間の道中も、ストーリーの本筋とは関係ないため省略されており、旅路というよりは都市探索の色が濃いです。様々な都市や自然を楽しみたい人には、少し物足りなさがあるかもしれません。
ほとんどシアトルで完結しているとはいえ、荒廃した街の雰囲気やリアリティは大きく進化しており、見応えは抜群です。ジャンプや匍匐前進、ガラスを割るといったアクションが増えたことで、地形のバリエーションも多彩で、似たようなフィールドが続くこともありません。水没した地域をボートで進んだり、高層ビル同士をつなぐ橋を渡ったりといった、ユニークなシチュエーションも存在します。
基本的には一本道のルートで構成されていますが、必要最低限の誘導でスムーズに進めるため、自分の意思で探索している感触が楽しめました。道中にある建物を探索するかどうかの自由度が存在しており、コレクション要素も用意されているため、プレイスタイルによってボリュームは変動します。私の場合、7~8割程度の収集率でクリアまで約23時間でした。フォトモードも完備されており、撮影が好きな人なら何時間でも堪能できそうな世界が広がっています。
敵AIの洗練が目立ったサバイバルアクション
アクションやアイテムの追加によって奥深さが増したとはいえ、「聞き耳」を立てながら行動して、敵を処理・回避していく基本的なゲームデザインに大きな変化はありません。どちらかといえば、敵のAIが大幅に進化したことで、より増した臨場感が見どころです。仲間同士で声を掛け合って追い詰めてくる動きや、やられた仲間の名前を叫ぶ行動など、AIでありながら人間味があふれていました。戦ってる相手も、単なるNPCではなく、ひとりの人間だと痛感させられます。
主に人間同士の戦いにスポットが当てられているため、感染者の存在感は控えめでした。「シャンブラー」と呼ばれる新種や、特殊な個体が登場するものの、基本は「ランナー」「クリッカー」といった、前作をプレイしていれば対処に手慣れた相手が中心です。代わりに、敵対する人間に対して感染者を誘導したり、その逆パターンでけしかけられたりなど、存在を活かした局面としては面白い物が用意されていました。常にプレイヤーを脅かす脅威ではなく、アクセントとしてうまく使われていた印象です。
限られた資源を駆使して戦うサバイバルアクションと聞くと、難しいイメージを抱きがちですが、本作にはかなり細かい難易度調整が用意されています。単純な難易度だけでも、「VERY EASY」から「SURVIVOR」まで5段階が用意されているうえ、「敵の強さ」「隠れやすさ」「資源の量」など項目別に調整も可能。1度でも死んだら終わりの極限状態や、資源多めのアグレッシブなアクションに寄せるなど、好みのプレイスタイルに合わせた難易度も構築できます。後述する各種アクティビティと組み合わせれば、多少アクションが苦手でもクリアまで遊べるので、ストーリーを中心に楽しみたい人でも安心です。
自在にカスタマイズできる豊富なアクセシビリティ
「アクセシビリティ」と聞いて、ピンと来ない人も多いかと思います。簡単にいえば、オプションのカスタマイズ設定が豊富に存在する認識で問題ありません。画面・字幕・操作といった一般的な項目だけでも、かなり細かく調整できることに加えて、視覚・聴覚機能に制約がある場合でも遊びやすい設定まで、これ以上は思いつかないくらいの豊富なアクセシビリティが用意されています。
難易度に直結する項目も多く、リアリティゆえにストレスの溜まる部分を、ゲームライクに遊びやすくすることも可能です。例えば、通常ならエネミーの位置が曖昧に判別できる程度の「聞き耳」は、「拡張モード」をオンにすることによって、アイテムの位置まで特定したり、音響キューで相対位置を確認できたりと、まるで超能力のようなスキルに変化します。自動照準やスロー、謎解きの緩和まで用意されており、誰でも最後まで遊べるといっても過言ではない配慮です。
私は、レビュー記事用スクリーンショット映えのために字幕の表示ONとサイズ大。いろいろと試しながら遊びたかったので資源の量を増やした以外はデフォルトでプレイしました。様々な項目が存在するからといって、必ず調整する必要はなく、基本設定でも問題なく楽しめます。酔いを軽減するための調整や、頻繁に発生するボタン連打を長押しに変える項目もあるので、プレイ中にストレスを感じたり困ったりしたら、各種項目を確認してみるくらいがちょうど良いかもしれません。
さいごに
ストーリーが合う・合わないという部分を除けば、良い作品でした。おそらく、個人的な好みの部分に目をつむって語れば、良作の評価だと思います。とはいえ、私の主観的な感想としては、理解に苦しむ部分が多く、前作と比べても今ひとつの手応えしか残りませんでした。サバイバルアクションとしては純粋に面白いとはいえ、気軽におすすめはしにくい作品です。