【相州戦神館學園 八命陣】評価・レビュー ※ネタバレ注意

総評
八犬伝を知らなければ理解が難しいテキストや、特異なストーリーで人を選ぶ作品です。
良かったところ
マルチエンディングとループ系の複合ストーリー
主人公が霞んでしまうくらい魅力的だったサブキャラクター達
悪かったところ
八犬伝の予習必須
3
B
ジャンル アドベンチャー
ハード Windows
発売日 2014年2月28日
発売元 light
開発元 light
公式サイト リンク

 八犬伝からの引用が多くてWikipediaを手放せませんでした。作品の印象を語る上で、真っ先に思いつくのはこれです。主人公の愛読書という設定で、事有る毎に話題に挙がる八犬伝。キャラの立ち位置をなぞらえていたり、技の名前にも使われており、知識が無ければ何を言っているのか全く解りません。かく言う自分も解らない側だったので、話題が出る度にWikiで補完していました。

 作品の評価も難しく、「八犬伝」を知っているかどうかで理解度が大きく変わる点や、事前に公開されていた世界観が殆ど茶番劇。数値化された超常能力はインフレ形骸化など肩透かしな部分も多い。代わりに全体の構成や、一部のサブキャラが魅力的だった事など特筆したい部分も有って、ちょっと極端な作品です。

マルチエンディングとループ系の複合ストーリー

 ヒロイン毎にIFルートを並べるのではなく、全てのエンディングを正規ルートとして最終的には1本のストーリーへと集約する特殊な構成。結局は一本道というわけでも無く、最後に再びルート分岐する展開や、それに対するフラグ管理が秀逸でした。普通のアドベンチャー気分では、あのフラグを回収するのは困難ですね。

 クリアする事で、一部のヒロインを除いて2回のエンディングを経験する事になりますが、単純に「選んだキャラと幸せになりました」なんてベタな終わり方では無く、これまでに見てきた周回の存在を上手く伏線にした流れと、初期設定に繋がる仕込みに感慨深い気持ちになりました。

主人公が霞んでしまうくらい魅力的だったサブキャラクター達

 秀才タイプの主人公は作中で自分の事を能力的に器用貧乏と言いますが、作品の主人公としても器用貧乏。クリア後に思い返してみても特に印象深いシーンがありません。対して他の男性キャラが不器用に格好いい奴らばっかりなので、主人公が完全に食われてしまったイメージ。

 特に栄光は、どの周回においても色々と魅せてくれた忘れられない存在でした。終盤の展開は、もう栄光が主役って事で良いんじゃないだろうかと思ったくらい盛り上がりました。ちなみにヒロインの中では晶が一番好きです。周回攻略順は最後だったのですが、エピローグの1枚絵で順位を一気にひっくり返されましたね。

しばらくアドベンチャージャンルのゲームは遠慮したい……

 とにかくテキストの情報量が多く難解で「続きを読み進めたいけれど、集中力が切れたところでプレイ終了」と言う流れを繰り返しながらクリアまで辿り着きました。流石に読み疲れたので、しばらくは難しく考えずに遊べるゲームに手を出したい気分です。裏を返せば読み疲れるほど真剣に遊んだという事でもあり、今は食傷気味ですが、同メーカー・同シナリオライターの新作が発表されたら、きっとチェックしてしまうんだろうな思います。