【サガ スカーレット グレイス | Vita】評価・レビュー 挑戦しがいのある良作RPG

総評
高い自由度と複雑なゲームシステムが用意されているRPG。ローディングにストレスを感じるものの、評価点も多い作品です。
良かったところ
4人の主人公で描かれる壮大なストーリー
戦略性と運要素が絡み合うバトルシステム
理解するほど面白くなっていく成長システム
悪かったところ
戦闘開始時やターンごとに発生するローディング
3
B
ジャンル RPG
ハード PlayStation Vita
発売日 2016年12月15日
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 スクウェア・エニックス
公式サイト リンク
プレイ時間 1周目クリアまで32時間

 サガシリーズの完全新作サガ スカーレット グレイス」のレビュー記事です。

 高い自由度と難易度で作り込まれている本作。全体的に難解なゲームシステムですが、理解を深めるほどに楽しめる内容に仕上がっています。ただし、戦闘中のローディングが致命的なほどストレスとなっており、無駄にプレイ時間が延びてしまう点がとても残念でした。テンポ良く遊ぶことができれば、何周でも何時間でも遊び続けられそうな作品です。

複数の主人公によって描かれる壮大なストーリー

 ゲーム開始時に問いかけられる複数の質問に答えることで、4人の主人公から1人が選ばれて物語が始まります。この際、キャンセルして選ばれた主人公以外を選択することもできるものの、ボーナスを得られないというデメリットが発生します。タイトルまで戻ってやり直せばボーナス込みで再選択が可能ですが、開幕から重要な選択を迫ってくる本作らしさを感じさせる部分でした。

 主人公による違いは、主人公やパートナーキャラクターが変化するだけでなく、ストーリーも全くの別物になります。共通するルートも存在しますが、同じイベントでも主人公によって見え方や選択が大きく違ってくることや、1人をクリアしただけでは謎が残るイベントも多いため、壮大なストーリーを複数周回して楽しむ構成です。慣れない1週目とはいえ、1人目をクリアするだけで30時間以上を要するので、合計すると、かなりの大ボリュームになっています。

様々なイベントが交錯するフリーワールドシステム

 ストーリーには、幾つかの大きなイベントが用意されています。1つクリアするごとに一区切りついて、次の大型イベントへ進む形式です。どのイベントを遊ぶことになるのかは、主人公や選択によって変化するため、同じ主人公でも遊び方次第で大きく異なるストーリー展開となります。

 メインとなる大型イベント以外にも、フィールドマップでは多くのイベントが発生。同じ場所で起こる同系統のイベントでも、やはり主人公によって展開や選択肢が違うため、周回するたびに楽しむことができます。ストーリーが進行するイベントを放置して、自由に旅を続けることも可能です。イベント数が膨大なことに加えて、選択肢による分岐もあるので、全主人公の全てのイベントを制覇するには、とんでもないやり込みが必要になります。

 どのイベントを進めるかだけでなく、進めている大きなイベントを途中で辞めるという選択肢も用意されています。イベントや主人公にもよりますが、全てのイベントを消化することなく進められるよう作られているため、メインストーリーを最低限に済ませて、急ぎ足でラスボスに挑むのもプレイヤーの自由でした。もちろん、勝てるかどうかは育成と戦略次第です。

理解するほど面白くなっていく成長システム

 レベル制を排除した、かなり独特な成長システムが用意されており、慣れるまではうまく強化するのが難しいです。戦闘によって得られる成長はHPと熟練度のみ。ステータスの上昇は素材を用いた装備の強化によって行われる。新しい技は、装備している武器の種類と系統によって確率で閃く。など、基礎部分だけでも一般的なRPGからはかけ離れています。実際に遊んでみる以外に、用意されているTIPSも熟読しなければ、システムを理解することはできません。

 一通りの仕様を理解すると、各要素の組合せは良くできていると感じるシステムとなっており、遊ぶほどに自分好みのパーティーが仕上がっていきます。新しい仲間を迎えることで、パーティーメンバーや陣形を増やしたり、各地のダンジョンで素材を獲得したりと、フリーワールドシステムを活用して、自由に探索しているだけでも強化につながる要素も多いです。

戦略性と運要素が絡み合うタイムラインバトル

 ターンごとに行動順に沿って進行するバトルは、状況に合わせたコマンド選択が重要です。特に、敵を撃破した際、左右を味方が挟んでいれば発動する「連撃」が強力で、常に意識しながら戦うことになります。行動順を操作する技や、強力なダメージを与える技を駆使して、先を読みながら一手ずつ詰めていくバトルは、高難易度ながらも格別の面白さを秘めていました。

 敵味方ともに状態異常が猛威を振るうため、運要素が戦略に差し込まれている点も目を引きます。正面からの戦略だけでは立ち回れないような場面でも、うまく状態異常が入れば巻き返せるワクワク感や、敵の状態異常によって戦略が崩れてしまう可能性を残した、程ほどの運要素です。先手で敵の行動を封じるスタンを駆使すれば、格上の敵を封殺できるなど、状態異常を活用した戦略も1つの手段として選ぶことができました。

プレイ時間を伸ばす要因となった戦闘中のローディング

 ゲームシステムやストーリーが高評価だったのに対して、それらを全て台無しにしてしまうほど長く頻度の多いローディングがとても残念でした。戦闘を始めるだけで10~20秒掛かることに加えて、ターンの開始ごとにも数秒のローディングが発生します。1回1回の時間は短いですが、とにかく発生する頻度が多いため、とてもストレスに感じました。

 発売前に公開されたバージョンに比べて、大きく改善したと言うことで公式動画もアップロードされていますが、元が悪すぎただけに多少改善されても快適とは言いにくいです。なお、公開されている動画は、敵も少なく比較的に短い戦闘パターンになります。

 体感としては、ゲームプレイ全体の半分以上が戦闘時間で、戦闘時間の半分がローディングでした。もしも快適に戦闘を遊べていれば、それだけでプレイ時間が3割ほど短縮されていたかもしれません。

さいごに

 全体的に良くできており、大ボリュームで長く楽しめるのですが、常につきまとうローディングが引っかかってしまい、気持ちよく薦めることができない作品でした。幸いにも、製品版のローディングを実際に確認できる改善動画が公開されているため、そちらを確認して問題無いと判断された方には、是非遊んでもらいたい作品です。

 ローディングに関しては不満を持ちながらも、レビュー後に未クリアの主人公や取りこぼしたイベントの回収を、ゆっくり楽しみたいと思ってしまうRPGでした。