ジャンル | シューティング |
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ハード | PlayStation 5 |
発売日 | 2021年4月30日 |
発売元 | ソニー・インタラクティブエンタテインメント |
開発元 | Housemarque |
公式サイト | リンク |
ソニー・インタラクティブエンタテインメントがおくるローグライクTPS「Returnal(リターナル)」のレビュー記事です。
ローグライク×TPS×弾幕シューティングという、異彩な組合せが特徴的な本作。何度も死んでしまう容赦のない難易度に加えて、再スタート時に全ての装備・アイテムを失う過酷なゲームシステムとなっており、命懸けの戦いを堪能できる作品です。プレイヤーのスキルアップと経験の積み重ねが重要で、死亡を繰り返すうちに自然と熟練されていく、ただ難しいだけではない絶妙なバランスでした。
自動生成のマップや、リスクとリターンを天秤に掛ける強化要素によって、ループするたびに異なる体験を楽しめた点も高評価です。ストーリーを進行するための挑戦はもちろん、クリア後でも繰り返して遊びたくなる面白さを秘めていました。救済措置などは存在せず、想像していた以上に難易度は高かったですが、覚悟のある人には是非挑戦してほしい作品です。
目次で流し読み
難易度の高いTPS×弾幕シューティング
ゲーム開始直後に警告が表示されることからも分かるように、本作の難易度はかなり高めに作られています。基本は三人称視点で敵を撃つTPSであるものの、敵の攻撃が弾幕レベルで苛烈な上、回復手段は限られています。常に敵の位置や弾幕の状況、地形を意識しながら立ち回り、被弾を抑えつつ反撃しなければなりません。ダッシュ中は一部の攻撃を除いて無敵のため、ジャンプと組み合わせて三次元機動で回避する場面が多く、プレイヤーの空間把握能力が問われる戦いでした。
回避・射撃だけでなく、バリアを打破する近接攻撃や、リロード中にタイミング良くボタンを押すと即座に完了するシステムも存在しており、戦闘中の操作は非常に忙しいです。その反面、エイムアシスト機能を利用すれば、回避しながら雑に射撃しても命中するため、程よく爽快な点は好印象でした。もちろん、オートエイムはON/OFFの切替えやレベルの調整が行えるので、完全手動でエイムすることも可能です。
スーツの耐久度を回復する手段が乏しく、小さなダメージでも積み重なると致命傷につながります。ダメージを受けずに敵を倒し続けると、様々な恩恵を得られる「アドレナリンレベル」が上昇するシステムも存在しており、とにかく被弾しないことが重視されていました。死亡した場合、全ての装備・アイテム・熟練度を失った状態で再スタートになってしまう点も過酷です。アドレナリンリセット・ダメージ蓄積の短期的な被弾リスク、再スタートによるリセットの長期的な死亡リスクがあり、戦闘中は一瞬たりとも気が抜けません。
難易度選択はなく固定で、何度死んでも救済措置はないため、プレイヤーのスキルアップと経験の積み重ねが全てです。慣れるまでは何度も死を繰り返すことになりますが、戦いに熟練してくると、考えるよりも先に手が動くくらいゲームに没入できました。スタイリッシュに戦えるようになってクリアするか、途中で心が折れて諦めてしまうかの2択なので、購入を検討している方には覚悟が必要です。
全てを失い再スタートする過酷なループシステム
常にプレイヤーを殺しに掛かってくる難易度に加えて、死亡すると装備やアイテム、レベルに相当する熟練度を全て失ってしまう点も、本作の大きな特徴です。どんな状況で死んでも、ループして再スタートするときは標準の耐久値で、装備もピストルのみで始まります。死亡を回避する装置・アイテムは存在するものの、いずれも希少で回数も限られており、ループによるリセット自体を回避する方法はありません。開始早々に死亡するのはマシですが、ある程度まで進んだ状況で死ぬと本気で悔しく、ゲームながらも生き残ることに必死でした。
様々な物を失うループですが、完全に初期化ではなく、ゲームの進行度だけは引き継がれる仕様となっています。具体的には、次のエリアへの扉を開放したり、移動範囲を広げる恒久的なアイテムを獲得したりといったイベントです。ただし、チェックポイントに相当する目標達成の間隔は広く、一筋縄ではいきません。特に、各エリアのボス戦は、長い道のりの先に待ち受ける難関で、リセットか目標達成かを分ける緊張の一戦でした。
毎回、再スタートする地点は同じであるものの、恒久アイテムを獲得することによって、過去のエリアでも移動範囲が広がる仕組みはうまくできていました。新しくいけるようになった場所には、アイテムやショートカットが設置されているため、間接的に序盤の難易度緩和につながっています。また、ワイヤーを射出して移動する恒久アイテムは戦闘中も使用できるため、回避の幅が広がるといった副次効果も攻略に役立ちました。
ループの再スタートは、死亡だけでなく、ゲームを終了することでも発生します。中断したい場合、ゲームを起動したまま本体をレストモードにする形で、途中データをバックアップするといった不正は行えません。エラーなどでゲームが落ちてもリセットされてしまうため、安定性に自信がなければできない仕様ですが、残念ながら私は1度だけ落ちて滅入りました。頻度としては約20時間に1回と許せる範囲なので、容赦のない難易度はさておき、システム面での大きな不満やストレスはなかったです。
プレイするたびに体験が異なる自動生成マップ
本作のマップは、ループするたびに自動生成されるようになっており、毎回異なる体験が楽しめます。正確には、エリアごとに数十種類のパターンが存在して、それらをランダムにつなぎ合わせている形です。多すぎず少なすぎずの程よいパターン数で、何度も繰り返しプレイすると特徴的な地形は覚えてくるため、そういった部分もプレイヤーの経験として積み重なりました。複雑な形状のマップも多いですが、ポーズから確認できる3Dマップが回転・拡大/縮小に対応しており、過剰に迷うことはありません。
各エリアには、クリアすることで使えるようになる、次以降のエリアへ進むショートカットが必ず生成されます。安定した攻略を目指すなら、エリアを順番にクリアして装備を調えるのが賢明ですが、いきなり最新のエリアに飛び込むことも可能です。各エリアの開始位置には、熟練度を大きく上げるアイテムが置かれており、最低限の戦力は整います。苦戦は必至ながらもショートカットを駆使して挑戦するか、地道に強化を積み重ねるかはプレイヤーの遊び方次第です。
一部を除いて、手に入るアイテムや登場する敵は全てランダムなので、運が悪いとまともに強化できずに死ぬ場合もあります。モンスターハウスのような、大量に敵が登場するマップは事前に予告されていますが、いきなり強敵のいる部屋に閉じ込められる場面も少なくはありません。特に、序盤は運によって大きく左右されるため、状況が良くないと判断したら、手動で再スタートすることも多かったです。逆に、強力なアイテムを序盤から獲得できる可能性もあって、自動生成の結果に一喜一憂していました。
リスクとリターンを天秤に掛ける強化要素
自身を強化する場面では、リスクとリターンを天秤に掛ける場面が目立ちます。筆頭は「パラサイト」と呼ばれる寄生生物で、取り付けることによって、何らかのメリットを得られると同時にデメリットも発生します。組合せはランダムで、『致死ダメージを耐える代わりにデメリットが発生する』といった死ぬよりマシな優しい物から、『メリットと同時にアイテムを拾うたびにダメージを受ける』といった避け難い物まで様々です。一度付けると簡単には外せないため、うれしいメリットと厳しいデメリットがセットのときなどは、付けるか否かで思い悩みました。
取得時に、確率でスーツに故障を発生させる悪性アイテム・コンテナも存在します。故障によるデメリットは厳しい内容が多いものの、発生するかどうかは運次第なので、貴重なアイテムを獲得するため賭けに出ることも多いです。耐久値が減少した状況で、生き残るために悪性の回復アイテムに手を出す場合もあり、「パラサイト」とは異なる形で、リスクとリターンに揺れ動きます。事故につながるため、後半になるほど手を出しづらいものの、序盤は悪性でも積極的に獲得していき、故障が発生したらリセットするといった選択が取れるのも、ループ形式ならではの遊び方でした。
敵を倒した際にドロップして、アイテムの製造で消費する「オボライト」も、獲得するのに一定のリスクが発生します。ドロップした「オボライト」は敵の周囲に散らばるのですが、近づかなければ獲得できず、消えるまでの時間は数秒しかありません。遠くから安全に敵を倒せば被弾のリスクを下げられる代わりに、獲得できる「オボライト」は減ってしまいます。より多くのオボライトが欲しければ、被弾覚悟の近距離で戦う必要があり、プレイヤーは常に生き延びるための取捨選択を要求されていました。
もちろん、全ての強化にリスクが存在するわけではなく、「アーティファクト」と呼ばれる自身を強化するだけの装備も用意されています。ただし、獲得するためには大量の「オボライト」や、ロックを解除するためのキーが必要です。1度のループで手に入る「オボライト」は有限なので、全てを獲得はできません。本当に欲しい物が出現した際、「オボライト」が足りない状況に陥らないよう、どのタイミングで消費するのかといった判断も重要でした
固有能力で多彩に変化する10種類の武器
戦闘中に使用できる武器は10種類用意されており、アサルトライフルのような性能の物から、誘導ロケット砲や貫通レーザーなど、多種多様です。全てエネルギー武器という扱いで、リロードは存在するものの、弾薬数に制限はありません。さらに、「セカンダリファイア」と呼ばれる特殊な武装が10種類の中からランダムに備わっており、クールタイムが発生する代わりに強力な攻撃が行えます。PS5の特性を活かして、アダプティブトリガーを半分押し込むと照準、完全に押し込むと「セカンダリファイア」モードに切り替わる機能も便利です。戦闘中は操作が忙しく、なるべく使用するボタンは少なくしたいので、1つのボタンに複数の役割を持たせられるのは好感触でした。
各武器には、ランダムで固有能力が付与されており、同じ武器でも能力によって使い勝手が大きく異なります。武器は同時に1つしか持てないため、同じ武器でも固有能力の違いで持ち替えるか悩む場面も多いです。固有能力はロック状態の特性が付いた武器で戦闘を行うことで解放されるようになっており、解放の進捗率はループをまたいで持ち越せる数少ない要素でした。固有能力の解放が進むほど、強力な能力が複数付いた武器を入手しやすくなります。
武器を使い続けることで固有能力の解放が進むとはいえ、同じ武器ばかり愛用していると、手に入らなかったときに苦戦してしまう点は難しいところでした。10種類のうち1種類を毎ループで序盤から手に入れるのは困難です。たとえ早期に獲得できたとしても、敵を倒して熟練度が上がると、より強い武器が手に入る仕様なので、同じ武器でうまく持ち替えられるとは限りません。なるべくプレイを安定させるためにも、2~3種類の解放を進めて、取得状況に合わせて使い分けるのが良い感じでした。
狂気を感じるサイコホラーストーリー
謎の惑星「アトロポス」に不時着するところから始まるストーリーは、主人公・プレイヤーのどちらにとっても不可解な出来事の連続です。探索中に発見した死体を調べてみると自分自身だったり、初めて訪れた場所で自身が記録したオーディオログを見つけたりと、新しい発見で謎は深まるばかりでした。たとえ死んでしまっても、不時着したところにループするだけとなっており、解放されることのない繰り返しが待ち受けています。
登場する敵の多くは触手の付いた異形で、ループする際などに不気味な映像が流れるため、狂気的な何かを感じる場面も多いです。特に、存在するはずのない地球の家屋を探索する際には、一人称視点に切り替わることで、気味の悪さを煽ってきます。ストーリー自体も難解で、余り万人向けする内容ではないものの、プレイヤーの興味を掻き立てるような魅力は十二分に備えていました。
トロフィー獲得のバグには注意が必要
ゲーム本編に大きな不満はなかったのですが、一部のトロフィーが正常に獲得できない点は気になりました。私の場合、チャプター1クリアのトロフィーを未獲得のままで、チャプター2以降のクリアトロフィーを獲得している状況です。他にも、幾つか条件を達成しているはずのトロフィーが獲得できていないことを確認しています。トロフィーの取得率を気にしないスタイルなら良いですが、コンプリートまで遊ぶスタイルの場合は注意が必要です
私自身、トロフィー獲得にこだわりはないので、取りこぼし自体は大きな問題ではありません。しかしながら、ゲームクリアに相当するトロフィーを初回に獲得できなかったのは、混乱を招きました。ストーリーが難解ということもあって、ゲームをクリアしているのか、やり残しが存在するのか判断が付きません。恐らく不具合だと予想して、もう一度クリアした際に獲得できましたが、2度目のクリアでも獲得できていなければ、いまだに迷い続けていた可能性すらあります。
さいごに
これまでにプレイしてきたタイトルの中でも、1.2を争うレベルで、ゲームプレイに没入していたと感じる作品です。ボス戦などは、死んでしまうと1時間以上のプレイが無駄になってしまうこともあって、気分は正に命懸けでした。考えるよりも先に手が動くような没入感を味わいたい方や、歯ごたえのあるゲームに挑戦したい方におすすめです。