【鬼ノ哭ク邦 | PS4/Switch】評価・レビュー 独特の世界観で構築された輪廻転生のアクションRPG

総評
一風変わった世界観が目を引くアクションRPG。決して万人向けとはいえないものの、とがった作風のストーリーが魅力の作品です。アクションパートが評価の足を引っ張っているのが残念でした。
良かったところ
独特の世界観で紡がれるストーリー
悪かったところ
テンポの悪いアクションパート
形骸化しているジョブシステム
冗長で中身のないやり込みコンテンツ
3
B
ジャンル アクションRPG
ハード PlayStation 4
Nintendo Switch
発売日 2019年8月22日
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 Tokyo RPG Factory
公式サイト リンク

 Tokyo RPG Factoryとスクウェア・エニックスがおくるアクションRPG「鬼ノ哭ク邦」のレビュー記事です。

 輪廻転生を題材とした、独特のストーリーが目を引く本作。主要キャラクターだろうと容赦なく死がつきまとう展開に、何度も予想を裏切られたのが印象的でした。少し難解な構成ということに加えて、万人受けする結末ではないものの、ひと味違った物語を堪能したい方におすすめです。

 アクションに関しては、余り褒められない完成度となっており、過度の期待は厳禁です。敵をロックオンできなかったり、ひるみをともなう攻撃で頻繁に足止めされたりとテンポが悪く、ストレスのたまる要因が豊富でした。疑似的なジョブチェンジが行える「鬼ビ人」も、ゲームシステムとして洗練されていないため、全体的に爽快感に欠けています。

 決して悪いゲームではなく、不満を感じながらもやり込み要素までクリアしたとはいえ、ストーリー・アクションともに人を選びそうな感触の作品でした。

独特の世界観で構築された輪廻転生のストーリー

 輪廻転生が信仰されている世界で、迷える死者の魂を救済する「逝ク人守リ」を中心に進む物語は、予想も付かないイベントの連続です。死と輪廻転生を題材にしているだけあって、主要キャラクターであっても容赦なく死ぬため、激動の展開に油断ができません。

 全体を通して淡々とした進行で、導入の説明も最低限なので、主人公に感情移入しにくい辺りは人を選びそうなポイントです。覚えにくい固有名詞も満載で、情報を整理しながらのプレイを要求する難解さが存在しました。決して王道ではない展開に加えて、明確なハッピーエンドも用意されていないため、かなり好みの分かれる魅力を備えたストーリーになっています。

 フルボイスではなく、相づちのようなパートボイスだけ用意されているのは、地味にマイナス評価でした。種類が少ないため、同じボイスをワンパターンに繰り返し使用される場面が多いです。微妙に会話内容とかみ合っていないボイスもあって、少し気持ち悪さを感じます。正直なところ、相づちのボイスはなしで、見せ場だけフルボイスにするといったCVの活用をしてくれた方がうれしかったです。

テンポの悪さがストレスに繋がるアクションパート

 とがった魅力を備えているストーリーに対して、アクションパートはギリギリ及第点という感触です。基本的な動きが鈍重で、爽快感がありません。一部の技を除いて、攻撃対象をロックできない仕様のため、攻撃するたびに方向調整で気を遣います。敵の攻撃でひるみが発生することも多く、状況によっては死ぬまで連続攻撃を受ける場合もあって、とにかくストレス要因が豊富でした。

 ストーリーとリンクした「現シ世」と「幽リ世」の二重構造フィールドは、それなりにユニークな要素ですが、どこか工夫不足が否めません。「幽リ世」側で特殊効果が発生するくらいしか変化はないので、単純に同じマップが複製されているだけです。探索のボリュームは倍増しているものの、遊び続けていると二度手間感が生まれます。発想自体は面白かったので、もっと思い切ったギミックを用意して、長時間プレイしても飽きさせないよう工夫が欲しかったです。

 難易度は「CASUAL」から「MANIAC」までの3段階が用意されています。敵が全体的に堅く、回復アイテムはドロップでしか入手できないため、ゲームになれるまでは少し難しい感触でした。難易度を変更しても、敵が堅くなって時間ばかり掛かってしまうため、気持ちよく遊びたいなら「CASUAL」推奨です。逆に、「MANIAC」を選んでも劇的に難しくなるわけではないので、オマケ程度の難易度選択でした。

形骸化している疑似ジョブチェンジシステム

 アクションパートにおいて、最大4人の「鬼ビ人」を切替えながら戦う疑似ジョブチェンジは、本作の大きな特徴です。武器や技だけでなく、回避アクションも変化するため、主人公1人で4人分の性能を駆使することができます。しかしながら、ゲームバランスの調整が今ひとつとなっており、最大人数を活用して戦う場面はほとんどありません。

 大前提として、仲間になったばかりの「鬼ビ人」はスムーズに切替えできない、不可思議な仕様が足を引っ張ります。ある程度まで成長させなければ、切替えするたびに待ち時間が発生するため、悪いテンポが更に悪化しました。成長させるためには、該当の「鬼ビ人」で戦いドロップアイテムを集める必要があるものの、技を覚えるにも同様のアイテムを消費するため、1人を戦力に育てるのも一苦労です。

 成長した「鬼ビ人」が増えても、切替えを多用する機会は訪れません。遠距離キャラクターの使い勝手が良すぎるため、近距離キャラクターの活躍する場がとても少ないです。遠距離は覚えられる技もホーミング・全体攻撃がそろっており、攻撃力の低さは手数で補えるため、雑魚戦からボスまで1人で問題なくクリアできました。意図的に複数の「鬼ビ人」を使うよりもストレスなく楽しめるので、せっかくの疑似ジョブチェンジが形骸化しています。

冗長で中身のないやり込みコンテンツ

 ストーリー本編に加えて、クリア後に解放されるコンテンツは、数時間規模の大ボリュームが用意されていました。しかし、内容は使い回しのマップと敵を100ステージ以上クリアし続けるだけとなっており、同じ操作を淡々と繰り返します。やり込み要素とはいえ、長ければ良いというものではありません。

 ゲーム内に存在するマップ数は20に満たないため、使い回しのマップをやり込みコンテンツ内で更に使い回すのも悪印象です。各マップのクリア条件は一定数の敵を撃破となっているので、途中でレベルがカンストしても雑魚を狩り続けることになります。いつまで経っても終わりの見えない作業に、挑戦したことを途中で後悔するレベルでした。

さいごに

 Tokyo RPG Factoryの物静かなテイストが好きで購入した本作ですが、アクションを中心にいろいろと期待外れだったのは残念でした。何だかんだと文句を言いつつ全てのコンテンツを遊び尽くしたので、決して悪いゲームではないものの、気軽におすすめできる作品ではありません。

 幸いなことに、序盤とアクションパートがプレイできる体験版が配信されているため、本作に興味を持った方は事前のプレイを推奨です。「鬼ビ人」固定で育成要素も封印されていますが、アクションの感触は十分に体験できます。製品版になっても大きく変わることはないので、体験版の評価が購入の指標に直結している作品です。