【オクトパス トラベラー】評価・レビュー 自由度と完成度の高さが際立つ群像劇RPG

総評
旅をコンセプトにした、自由度と完成度の高い冒険が楽しめる群像劇形式のRPG。一言で伝わるような分かりやすい面白さはないですが、奥深さのある物語と戦略的なコマンドバトルがそろっており、RPGとして高評価な作品です。
良かったところ
戦略的コマンドバトル
組み合わせ豊富な育成要素
自由度の高いストーリー
悪かったところ
ヒントが少なすぎるサブストーリー
5
A+
ジャンル RPG
ハード Nintendo Switch
発売日 2018年7月13日
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 アクワイア
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで35時間
クリア後要素まで含めると44時間

 旅人たちの物語を描いたRPG「OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー)」のレビュー記事です。

 旅をコンセプトにした、群像劇形式の物語が楽しめる本作。8人の主人公や、様々なサブキャラクターを通じて、雄大な世界を体験することができます。目に見えて派手な演出や展開は少ないですが、遊び続けるほどに染みわたってくるような、奥深い面白さを備えていました。

 一時的に強化する「ブースト」や、敵を行動不能にする「ブレイク」を駆使して戦う、戦略的なコマンドバトルも魅力的です。ジョブとアビリティを組み合わせた育成要素も用意されており、戦闘やレベル上げをしているだけでも楽しく、RPGとして高い完成度の作品でした。

自由度の高い群像劇形式のストーリー

 踊子や学者・神官など、大きく異なる立場の主人公たちが出会い、それぞれの物語を進めていくことで作品の世界は広がっていきます。一人一人のボリュームは少ないものの、全員の物語を体験することで1つの大きな物語が紡がれる、群像劇形式のストーリーです。

 各主人公の物語は、全体的に渋い感じの内容となっており、分かりやすい面白さや派手さは控えめでした。遊び続けるうちに、ジワジワと魅力が伝わってきます。気持ちの良い展開ばかりではなく、やりきれない雰囲気のシーンも多いため、対象年齢は高めの印象です。

 誰の物語から進めていくかは決められていません。推奨レベルの低い物から順番にクリアするか、1人の物語を集中して進めるかは、完全にプレイヤーの自由です。進行制限なども存在しないため、物語のクリアを後回しにして、自由気ままに世界中の街や遺跡を巡ることもできます。

主人公たちの個性を表すフィールドコマンド

 8人の主人公には、NPCに対して行使できる、独自のフィールドコマンドが用意されています。踊子のプリムロゼなら誘惑して連れ歩く、盗賊のテリオンならアイテムを盗むなど、それぞれの個性を活かした物ばかりです。大半のNPCに使えるため、話しかけながら街を歩くだけでもワクワクします。

 レベルやお金を使って正攻法で解決するコマンドと、運頼みや力尽くで解決する邪道なコマンドが存在する点も特徴的です。特に、邪道は運次第で身に余るほどのメリットを得られる反面、失敗を繰り返すとNPCとの関係が険悪になってしまうリスクを抱えており、状況によって使い分ける必要がありました。

 フィールドコマンドは、各主人公のメインストーリーでも活かされており、内容の差別化にも一役買っています。場合によっては、コマンドで得た情報を元に推理が始まったり、武闘大会に参加するため決闘を繰り返したりと、個性とストーリーがうまく組み合わされていました。

主人公同士の直接的なつながりはなし

 各主人公のメインストーリーにおいて、他の主人公が直接関与することはありません。戦闘に参加する以外は、存在しない人物として扱われます。物語全体で見ても、間接的なつながりが見えてくる程度で、サブキャラクターの方が意外と密接な関係を結んでいるくらいです。

 シーンによっては、一緒に行動しているはずなのに多勢に無勢でピンチに陥ったり、1人で戦うはずの武闘大会で団体戦が始まったりと、若干の突っ込みどころは存在しました。しかし、下手にパーティーメンバーと連動させて、当たり障りのない物語になるよりは良かったと感じます。

 ストーリーの合間にパーティーチャットが用意されており、一緒に旅をしているという雰囲気を一手に補完しています。同じ場面でもパーティーメンバーによって発生する会話内容が異なるため、組合せを変えることで、様々なやり取りを楽しむことができました。

総当たりで世界を探索するサブストーリー

 常にナビゲーションが発生するメインストーリーに対して、ほとんどノーヒントのサブストーリーは、少し難易度が高すぎると感じました。ひどい物だと、「○○を探す」という情報だけで放り出されてしまいます。全ての街とフィールドを総当たりで探索するしかありません。

 世界を旅するのが作品の醍醐味とはいえ、手掛かりもなく探し続けるのはストレスがたまり、プレイ時間の無意味な増加にもつながりました。一部のサブストーリーは重要なフラグとなっているため、無視することもできません。クリアするためには、時間を掛けた探索が必要な点に注意です。

先を読んで戦う戦略的コマンドバトル

 ターン制コマンドバトルをベースに、自身を強化する「ブースト」や敵を行動不能にする「ブレイク」を組み合わせた戦闘は、とても戦略性の高い物に仕上がっていました。常に数ターン先の展開を読みながらコマンドを選択していく、緊張感のあるバトルを堪能することができます。

 特に、ボス戦は熟考で手が止まることも多い激戦です。攻撃力が高く設定されている上、複数回行動が当たり前のため、まともに殴り合うとまず勝てません。使えるアビリティやアイテムを全て駆使してブレイクを狙い、可能な限りボスの動きを封殺することが攻略のカギでした。

 攻撃力の高さから雑魚戦でも油断できない反面、パーティー構成や立ち回り次第では、格上の強敵でも倒せるゲームバランスも魅力の1つです。敵が強ければ強いほどに戦闘が面白くなるため、長時間遊び続けてもマンネリすることはなく、満足できるバトルを楽しみ続けることができました。

組合せ豊富で悩ましい育成要素

 育成の基本は「ジョブ」と「アビリティ」の組合せとなっており、かなり自由なパーティーメイクが可能です。主人公ごとに「ベースジョブ」と「固有アクション」が用意されていることに加えて、「バトルジョブ」として2つ目のジョブを選べるため、組合せのパターンは数えきれません。

 完全に自由ではなく、主人公同士のバトルジョブ重複不可や「サポートアビリティ」の装備数など、絶妙な制限が用意されていることで悩ましさも存在します。各種制限を考慮しつつ、試行錯誤しながらパーティーを構想するだけで、何時間でも楽しめる魅力を秘めていました。

 最終的に全員を育成する必要があることに対して、控えメンバーに経験値が入らない仕様のため、レベル上げに時間を割く場面も多いです。しかし、育成自体が楽しいので苦にはなりません。8人全員を使おうとすると、更に組合せを練る必要があるため、最後まで育成を堪能することができました。

さいごに

 サブストーリーで手掛かりのない探索を強要された点には引っかかりを覚えたものの、奥深さを感じる物語や完成度の高いバトルシステムは高評価でした。

 一言で魅力を表すのは難しい作品ですが、3時間だけ遊べる体験版も配信されています。実際に物語を体験してみて、旅の続きを楽しみたいと感じたら、購入を強くおすすめしたい作品です。