PS Plus「ゲームトライアル」サービスに潜む問題点

トライアル版「アルノサージュ」をエンディングまで遊んでみました

  PS Plus会員を対象に体験版を配信するサービス「ゲームトライアル」 まだ実績の少ないサービスで知名度も低いのですが、このトライアル版にはちょっとした仕様の抜け穴が有ります。それを利用する事によって製品版を買わなくてもクリアまで遊べるのですが、実際は製品版を買った方が安くて手軽な為、利用した人は殆ど居ないであろう仕様です。

  しかし、2月19日~2月26日に配信されていた先行トライアル版「アルノサージュ」において、仕様を利用する事で、発売日より早くクリアまで遊べる状況が発生。ちょっとした問題になっていました。そこで今回は、まだ知名度の低い「ゲームトライアル」サービスの解説と、トライアル版「アルノサージュ」における問題点ついてまとめてみました。

まず「ゲームトライアル」とはどういったサービスなのか

タイトル配信日発売日制限時間DL版価格
ICO2012年9月19日2012年1月31日40分3,200円
ワンダと巨像2012年10月17日2012年1月31日40分3,200円
地球防衛軍42013年8月7日2013年7月4日1時間6,980円
ドリームクラブ Complete Edipyon!2013年8月7日2013年4月9日1時間6,090円
ドリームクラブZERO Special Edipyon!2013年8月7日2013年2月14日1時間6,090円
英雄伝説 閃の軌跡2013年10月16日2013年9月26日3時間6,800円
テイルズ オブ シンフォニア ユニゾナントパック2013年12月18日2013年10月10日2時間6,980円
LIGHTNING RETURNS FINAL FANTASYXIII2013年12月18日2013年11月21日1時間7,000円
戦国BASARA 42014年1月23日2014年1月23日30分6,990円

  簡単に言えば「制限時間の間だけ遊べる製品版」です。時間制限を除けば、製品版と全く同じ内容を遊べる点が大きな特徴となっています。もちろんトライアル版をプレイ後に製品版を購入した場合、トライアルの続きから遊ぶ事も可能。トロフィーに関しては、トライアル版プレイ中は仮取得になりますが、製品版をプレイする事でちゃんとサーバーと同期される仕組みです。

  常に数多くのタイトルが配信されている「フリープレイ」に比べて、「トライアルサービス」として配信されたタイトルの数は少ない。過去の配信履歴を確認してみたたところ、パッケージタイトルでトライアル版が配信された物は全部で9タイトルしか有りませんでした。そして、今回のアルノサージュが10タイトル目になります。

 ※3月2日追記:トライアル版と銘打ってはいますが、中身は製品版に時間制限を付与しただけの物です。(第2回アルノコネクション 土屋Dの発言より) 実際に、特定の条件を達成すれば見る事が出来る真エンディングのゴールドトロフィーまで取得を確認しました。

仕様の抜け穴とは、複数アカウントによるトライアル版の有効化

 1つのアカウントでトライアル版を有効化出来るのは1度限りですが、有効状態のトライアル版はアカウントに紐付いていない状態です。つまり、制限時間内なら他のアカウントでも起動する事が可能です。この仕様を利用して、複数のアカウントでトライアル版を有効化しながら、1つのアカウントで遊び続ければ、用意したアカウントの数だけトライアル版が遊べます。

  もちろん有効化する為のアカウントもPS Plusの加入は必須。500円(1カ月)からとなっており、ウォレットのチャージは1,000円からですが、500円だけチャージする方法も存在します。これらを組み合わせる事で[500円×制限時間]分だけトライアル版を遊ぶ、殆ど力業のような方法が今回のカギです。これは今まで配信されたトライアルでは全く価値を見出せない仕様でした。

今までのトライアルと「アルノサージュ」は何が違ったのか:配信開始日

タイトル配信日発売日
ICO2012年9月19日2012年1月31日
ワンダと巨像2012年10月17日2012年1月31日
地球防衛軍42013年8月7日2013年7月4日
ドリームクラブ Complete Edipyon!2013年8月7日2013年4月9日
ドリームクラブZERO Special Edipyon!2013年8月7日2013年2月14日
英雄伝説 閃の軌跡2013年10月16日2013年9月26日
テイルズ オブ シンフォニア ユニゾナントパック2013年12月18日2013年10月10日
LIGHTNING RETURNS FINAL FANTASYXIII2013年12月18日2013年11月21日
戦国BASARA 42014年1月23日2014年1月23日
アルノサージュ ~生まれいずる星へ祈る詩~2014年2月19日2014年3月6日

 いままで配信されたタイトルは、全て発売日以降のトライアルサービスでした。もっとも早いタイトルでも「戦国BASARA4」の発売当日です。しかし、今回のアルノサージュが配信されたのは発売日から半月も先駆けたタイミング。まだ発売前情報すら全て公開されていない状態でのトライアル版配信という大サービスでした。

  既に発売済のタイトルなら、無理にトライアル版を繰り返すより製品版を買った方が手間も掛からず遊び放題です。しかし、今回の場合は発売前に配信されたため、発売より早く遊べると言う付加価値が付いた上で、遊ぶための選択肢が1つしか存在しない状況が生まれました。発売日を待たずして遊べると言うのは、我慢できない人にとっては魅力的な誘惑です。

今までのトライアルと「アルノサージュ」は何が違ったのか:制限時間

タイトル制限時間DL版価格
ICO40分3,200円
ワンダと巨像40分3,200円
地球防衛軍41時間6,980円
ドリームクラブ Complete Edipyon!1時間6,090円
ドリームクラブZERO Special Edipyon!1時間6,090円
英雄伝説 閃の軌跡3時間6,800円
テイルズ オブ シンフォニア ユニゾナントパック2時間6,980円
LIGHTNING RETURNS FINAL FANTASYXIII1時間7,000円
戦国BASARA 430分6,990円
アルノサージュ ~生まれいずる星へ祈る詩~5時間6,000円

  もう1つの特徴は、5時間と言う長い制限時間です。今までに配信されたタイトルの殆どは1時間。最長でも「英雄伝説 閃の軌跡」の3時間でした。発売と同時に配信された「戦国BASARA4」なんて30分しか遊べません。それに比べてアルノサージュの5時間制限は明らかに破格です。PS Plus加入を500円で計算した場合、1時間あたり100円で遊べてしまいます。

  最新作で1時間あたりの単価が100円を切るタイトルなんて殆ど有りません。仮にアルノサージュのDL版購入と同額のチケットを用意した場合、60時間弱も遊べます。普通にストーリーを楽しむだけなら充分ですね。もし30時間でクリア出来れば半額プレイになってしまいます ※参考に、雑誌レビューではクリアまで30~40時間と記載されていました。

製品版のプレイに比べて、様々な制約が存在する

  精神的な問題として、常に時間から追われながらプレイする事。そしてトライアル版の仕様上、制限時間を遊び尽くす為には5時間単位の連続プレイが強要されます。普段から長時間プレイや早いクリアに慣れている人なら問題は無いですが、普通のプレイを好まれている方にとっては、作品を存分に楽しめない事は確実です。

  二次的な問題として、トライアル版ではトロフィーがサーバーに同期されません。ゲーム内容と直接関係は無いですが、ガストに対して金銭を支払っているわけでは無いと言う問題も存在。今回の仕様をクリアまでとは言わないまでも利用した方は、それらの障害を全て乗り越えてゲームを楽しめる。もしくはトライアルを遊んで更に製品版を買うくらいのユーザーかと思います。

この遊び方はシロかクロか、それともグレーなのか

  1つのアカウントを複数人で利用する行為は明確に規約違反と定められていますが、1人で複数のアカウントを作成する事に関する利用規約はありませんでした。PSNのアカウントは簡単に削除できない事や、IDを変えたい場合は新規アカウントの作成を薦めているので、アカウントを作成する事自体は、特に禁止された行為では無いようです。

  複数のアカウントを利用してトライアル版を繰り返す行為については規約を読んでも判断が付かなかったので、直接ソニーへ問い合わせてみました。回答は「PS Plusのサービスにおける仕様なので、利用に関して問題は無い」との事です。ハッキリとした容認が返ってくるとは思ってなかったので、問い合わせた自分でも驚きの回答でした。

最終的に仕様を利用するかどうかはユーザー次第

  自分の場合、”本当にトライアル版は最後まで遊べるのか”という確認も兼ねてプレイ。ちなみに、トライアルを遊んで更に製品版を遊ぶ方のユーザーです。本当はトライアル版の配信中に記事を書くつもりでしたが、配信中にクリアまで遊べると言う情報を拡散する事に少し抵抗を感じたので、配信期間が終わるのを待ちながら別方向から記事を書き直しました。

  個人的に「アルノサージュ」の5時間制限自体は間違っていなかったと思います。2Channelのザッピングシステムと言う事もあって、短時間では中途半端なトライアルになっていたはずです。データを引き継げる点もユーザーとしては嬉しかった。抜け穴の存在をガスト側が把握していたかは不明ですが、今回はPS Plusの仕様と相性が悪かったとしか言いようが有りません。