【NG | Vita】評価・レビュー おとぎ話とホラーゲームを大胆に融合させた裏御伽ADV

総評
多彩なホラー演出や、グロテスクなイベントスチルが目を引くアドベンチャー。ほどよいボリュームに考察要素なども用意されており、そつなく作り込まれた作品です。
良かったところ
日常を浸食するホラー演出
恐怖を助長するイベントCG
おとぎ話を大胆にアレンジした物語
悪かったところ
直感的に操作しにくいUI
5
A+
ジャンル 裏御伽・心霊ホラーアドベンチャー
ハード PlayStation Vita
発売日 2018年9月13日
発売元 エクスペリエンス
開発元 エクスペリエンス
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで11時間

 エクスペリエンスがおくる、”心霊ホラー”シリーズ第2弾「NG」のレビュー記事です。

 1999年の東京を舞台に、おとぎ話を題材とした怪異の謎を解き明かしていく本作。懐中電灯を頼りに進む「心霊スポット調査」や、入手した情報から考察して生き残りの道を見つける「選択イベント」など、アドベンチャー要素を活かした様々なホラー演出が特徴です。

 グロテスクなイベントスチルも豊富に用意されており、プレイヤーの選択によっては、主要キャラクターが死亡する点も目を引きます。ほどよいボリュームに加えて、突発的な恐怖演出の頻度を調整できる機能も備わっており、そつなく作り込まれていると感じる作品でした。

おとぎ話を題材とした心霊ホラーADV

 消えてしまった妹の捜索と、自身の呪いを解くために、主人公は様々な怪異と対峙します。いずれも「桃太郎」や「鶴の恩返し」といった、おとぎ話を大胆にアレンジした存在ばかりです。対峙することで、恐怖を味わえることはもちろん。怪異ごとに用意された存在理由を考察することも、面白さの1つです。

 怪異が現れるのは、心霊スポットだけに限りません。ストーリーの進行に合わせて、日常風景にも様々な形で浸食してきます。明確な安全地帯が存在しないため、気の抜けない緊張感が心を刺激しました。電話や隣室の音など、身近な物事を活用した演出が多く、恐怖が現実とリンクする点も好印象です。

 ホラーシリーズ第2弾ということで、前作「死印」と同じ世界ということが示唆されるものの、直接的なつながりはありません。プレイ済みの方だけがピンとくる程度なので、いきなり本作から遊んでも大丈夫です。作風が気に入ったなら、本作クリア後に「死印」を遊んでみるのもおすすめします。

懐中電灯を頼りに行う心霊スポット調査

 舞台となる心霊スポットは、幾つかの区画に分けられており、連結された区画を移動しながら調査を行います。各区画には、懐中電灯で照らすことによって調べられるポイントが点在。アイテムやヒントの見落としがないよう、1つ1つ丁寧に調べながら進むことになります。

 1つの心霊スポットに用意されている区画数は少なく、代わりに調べられるポイントは多めの構成です。同じ区画を何度も行き来する展開には、少し煩わしさを感じます。しかし、前回調べたときには存在しなかった違和感が突然現れる演出には、たびたびドキッとさせられました。

 調査するスポットによっては、所持しているアイテムの使用や、特定の同行者を連れていくことが必要です。謎解き要素になりますが、必ずヒントが用意されているため、会話や資料を見返すことで解決します。難しくて詰まってしまうような難易度ではありません。

怪異との直接対決とストーリー分岐

 各章のクライマックスでは、怪異との直接対決が発生します。これまでに手に入れた情報を元に、怪異の行動パターンや弱点を推測。所持しているアイテムと周囲の状況を最大限に活用して、危機を乗り越えます。制限時間はありませんが、選択の組合せは豊富なので、しっかりとした考察が攻略のカギです。

 怪異の撃退には、霊的な苦痛を与えて破壊する「デストロイ」と、呪いごと浄化する「キュア」の2パターンが用意されています。デストロイでもストーリーは進行しますが、同行者の生死やエンディングに影響を及ぼすため、可能な限り「キュア」を目指した考察や試行錯誤が求められました。

 選択を誤ってゲームオーバーになっても、簡単に再挑戦することができます。どうしても正解が分からなければ、選択肢を総当たりで試すことも可能です。デストロイ進行時でしか見られないイベントスチルも多いため、複数周回前提で、1周目は行き着くままに進めていくのも面白いかもしれません。

ホラーに慣れた人は「恐怖モード」推奨

 アドベンチャーというジャンルの仕様上、落ち着いて考えられる時間が多いので、ホラーゲームとしての怖さは控えめでした。演出を最大限に楽しむため、閉め切った部屋で明かりを消してプレイしましたが、それでも少し物足りなかったくらいです。

 恐怖体験の調整として、オプションで「調査中に発生する突発的な恐怖演出」の頻度が選択可能です。『ワッ!』と驚かせる系の演出は好みが分かれるところですが、調査中のドキドキ感は確実に増すので、ホラーに慣れている人は「恐怖モード」でのプレイを推奨します。

 逆に、怖いのは苦手だけど、怖い物見たさやストーリーを目当てにする場合は「オフモード」を選ぶと良いでしょう。必要最低限の恐怖演出だけで楽しめます。少し物足りなさを感じるとはいえ、ホラーゲームとしては、遊びやすい作品に仕上がっていました。

さいごに

 特徴的なストーリーやイベントスチルに加えて、前作「死印」で感じた不満点が改善されており、期待に十分応えてくれました。体験版はありませんが、ファミ通連載の前日譚小説を読むことで、作品の雰囲気やバックストーリーに触れることができるため、購入の参考になるかと思います。

 地味な印象や作風からB級感は拭えないものの、そんなB級感を含めて興味を引かれた方には、おすすめできる作品でした。

blank 【死印 | PS4/Vita/Switch】評価・レビュー 丁寧に作り込まれた謎解きホラーADV