【モナーク】評価・レビュー エゴと狂気に彩られた、異色のストーリーが際立つ学園RPG

総評
ユニークな試みが数多く取り入れられた学園RPG。謎解き中心のダンジョンや、シミュレーション風で情報過多気味の戦闘など、挑戦的で尖った魅力を秘めた作品です。ゲーム外での情報収集を勧めるクリア後要素は、遊ぶタイミングやプレイスタイル次第で印象が大きく変わります。
良かったところ
エゴとエゴがぶつかる独特のストーリー
戦略性の高いコマンドバトル
悪かったところ
過剰な選択肢でテンポの悪いイベント
自力到達が困難なハッピーエンド
3
B
ジャンル RPG
ハード PlayStation 4
PlayStation 5
Nintendo Switch
発売日 2021年10月14日
発売元 フリュー
開発元 ランカース
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで38時間

 フリューがおくる、エゴと狂気でユガミゆく学園RPG「モナーク/Monark」のレビュー記事です。

 ストーリー・ゲームシステムともに、完全新作らしいユニークな試みが取り入れられている本作。エンカウントがなく謎解きがメインのダンジョン攻略や、シミュレーションゲーム感の強い戦闘など、好みが分かれそうなコンテンツばかりです。特に、SNS・攻略サイト推奨のクリア後要素は、本作を遊ぶタイミングやプレイスタイルによって、印象が大きく変わりそうでした。

 良くも悪くも、事前情報から想像していた内容が裏切られる部分も多かったです。マルチエンディング形式を連想させる世界観設定でありながら、実際には全く異なる方向へと進む展開は、賛否両論を招きそうな部分でした。荒削りな部分も多く、当たり外れは大きいものの、挑戦的で尖った魅力を秘めた作品です。

「エゴ」を題材とした狂気溢れる学園ストーリー

 学園が外界から孤立し、主人公が権能の力を得るところから始まる物語は、エゴと狂気に彩られたストーリーです。人々を狂わせる謎の霧、異界へと連れ込まれる着信といった怪異を解決するため、主人公は仲間とともに学園内を探索します。各地に領域を持つ権能者たちは、自身のエゴに基づいて行動しており、単純な正義と悪の構図ではなく、互いのエゴとエゴがぶつかりあう論戦が際立ちました。

 学園を解放するためには、全ての権能者が消えなければならず、主人公や仲間も例外ではありません。敵対する権能者がいなくなれば、待ち受けているのは仲間たちとの決別です。それぞれのエゴが理由でバラバラに別れる中、4人の仲間から1人を選び、自分たちのエゴを貫く展開は、本作の大きな見所でした。

 「主人公」=「プレイヤー」という形式でありながら、主人公のセリフが多い点は独特です。仲間の中から1人を選んでバディにする構成上、1対1の会話イベントが多く、主人公のセリフは選択肢形式で行われます。選ばせることで自身の発言らしさを演出している反面、1択も含めると選択肢の発生する頻度がかなり高く、ストーリーのテンポを悪くしていたのは難点でした。

「RPG」でありながら謎解きメインのダンジョン攻略

 権能者が待ち受けるダンジョンの攻略は、謎解きと固定戦闘のセットを2~3回行ってクリアしていく構成です。エンカウントによる戦闘はなく、探索中は「RPG」というよりも、「謎解きゲーム」に近い感触でした。

 謎解きは、集めた情報やヒントを元に、パスワードやゴール地点を読み解く形式が大半を占めています。本格的な「謎解きゲーム」ほど難しくはないものの、資料を取り逃していたり、発想が至らなかったりすると、詰まって悩んでしまう場面もありました。アイテム1つ見逃さない入念な探索や、謎解き系のギミックが苦手という人には、おすすめしづらいゲームデザインです。

 探索が謎解きに偏っている都合、育成目的の戦闘は、手動エンカウントで行わなければなりません。固定戦闘だけでは経験値が足りないため、敵が手ごわいと感じたら、必要な分だけ自分で戦闘を発生させる形です。探索と経験値稼ぎが完全に分かれているため、少し作業感を覚える育成となっており、レベリング作業に楽しさを感じられるかで評価が割れそうな部分でした。

マルチエンディングではない1つだけの物語

 『バディごとに異なる結末』と謳われている本作ですが、マルチエンディング形式で大きく分岐するわけではありません。選んだバティによって会話や動機が変化するものの、全く異なる4つの物語が楽しめるのではなく、似て非なる複数の物語を体験する形です。攻略するダンジョンも使い回しになっており、2人目以降は同じダンジョン・謎解きを繰り返しプレイする形式でした。

 詳細はネタバレになるため語れませんが、4人分の異なる結末を経て、次の章へと進む特殊なゲーム構成です。物語の組み立て方としては面白いものの、マルチエンディングに至るような大きい分岐・展開を期待していると、悪い意味で裏切られてしまいます。中盤から終盤に掛けて、好きな順番で4人分のストーリーを体験できますが、本筋となる物語は1つだけです。

攻略サイト推奨の自力到達が困難なハッピーエンド

 ハッピーエンドを目指すためのクリア後要素は、SNSや攻略サイトを見る前提の、かなり特殊なコンテンツです。高難度ステージを周回して情報を集める形式となっており、他プレイヤーと協力して収集することが推奨されています。実際、数時間周回して1つ手に入るかどうかといったドロップ率の低さから、1人で全てを集めるのは現実的ではありません。

 ゲーム側で情報交換の場を設けていないため、発売直後はSNSでの情報発信・収集が中心になる想定で、公式Twitterではキャンペーンも実施中です。とはいえ、リアルタイムで盛り上がれるのは一部の積極的なユーザーのみとなっており、多くのユーザーは情報がまとめられた攻略サイトを頼ることになります。実質、攻略サイト推奨となっており、自力でクリアを目指したい人とは相性の悪いコンテンツでした。

戦略性の高いターン制コマンドバトル

 戦闘はターン制のコマンドバトル形式。移動とアクションで1セットとなっており、HPを消費して発動する「技能」、使用すると「MAD値」が増加する「権能」など、コマンドは豊富です。行動済の味方を再行動させる「リオーダー」や、仲間や敵とつながってコマンド・状態を共有する「共有」など行えることが多く、戦略性は高いと感じました。その反面、戦闘中に変化する数値・状況が多く、序盤から様々な知識を詰め込まれるので、ゲーム慣れしていない方には抵抗を感じるかもしれません。

 戦略性に加えて、敵から受けるダメージも大きく、しっかりと育成して進めなければ難易度は高めです。特に、敗北条件が「主人公の死亡」のため、1つの事故で即ゲームオーバーの緊張感を秘めていました。主人公は前に出すぎず補助に回り、バディや眷属を駆使して敵を倒す、指示出し形式のシミュレーションゲーム感が強いです。難易度選択はないものの、被ダメージを下げる代わりにアイテムドロップ率も下がる「アシストモード」が用意されています。

 クリアを優先するなら、待ちの姿勢で近づいてきた敵を各個撃破すれば安定ですが、ターン数を掛け過ぎるとリザルトのランクが落ちてしまうのは悩ましい要素でした。ランクの高さによって、経験値・通貨代わりの「SPIRIT」獲得倍率が変化するため、低ランクでは育成が遅くなります。攻略に必須の戦闘は少ないため、合間に稼ぎを挟みつつストーリーを堅実に進めるか、ストーリーで高評価を獲得して寄り道は控えめに進めていくかはプレイスタイルによって変わりそうでした。

 主題歌・挿入歌が全14曲と豊富で、ボス戦ではボーカル付きの専用BGMが流れる点は好感触です。イベントのクライマックスから流れ始め、戦闘へとつながる流れは、いやが応でも盛り上がりました。一部、余り戦闘らしさを感じさせない楽曲もありましたが、1戦闘1曲対応で使い回さない豪華な作りは高評価です。

選択が豊富な育成要素と眷属使役

 スキルツリーを伸ばすことによって、キャラクターは「技能」や「権能」を獲得していきます。面白いのは、スキルツリーを解放・強化すると同時にレベルも上がる点です。高ポイントで有用な能力を優先して獲得するか、要求ポイントの少ない能力を獲得してレベル上げを優先するか、育成方針にも選択肢がありました。スキルツリーを伸ばすために必要な「SPIRIT」は全キャラ共有で、1キャラクターに集中するか、平均的に育成するかもプレイヤー次第です。

 戦闘に連れて行ける「眷属」もユニークな要素でした。キャラクター同様にスキルツリーで育成できるだけでなく、眷属器を付け替えることでステータス・スキルが変化するため、カスタマイズ性が高いです。最初の1体はエゴ診断の結果によって生まれ、「怠惰」なら弓を装備、「傲慢」なら斧を装備というふうに、プレイヤーの選択によって性能が異なる点も風変わりな部分でした。2体目以降も主人公のエゴを基準に決まるため、序盤~中盤のパーティー構成はプレイヤーによって異なります。

さいごに

 ユニークな試みが多く、どの要素に触れても、最終的には『評価が分かれそう』と書きたくなる内容でした。万人向けどころか、全てのコンテンツが好みに合うユーザーは、ほんの一部に限られる印象です。

 私自身、好きか嫌いかでいえば好きな作風でしたが、ところどころで自分に合わないと感じる部分もあって、高評価を付けづらい作品でした。