【神獄塔 メアリスケルターFinale | PS4】評価・レビュー 最後の脱獄劇に挑むシリーズ最終章

総評
独特の世界観で紡がれる、シリーズ最終章。3DダンジョンRPGとしてはクオリティに不満が残るものの、ストーリーの評価は高く、達成感を得られる作品でした。シリーズ初プレイの方でも、過去作品の全てを楽しめる「BEFORE STORY」が用意されているので安心です。
良かったところ
最後の脱獄劇に挑むシリーズ最終章
サブシナリオに至るまで完全フルボイス
過去作品の全てを楽しめる「BEFORE STORY」
悪かったところ
手間が3倍になった育成要素
不親切でストレスのたまる操作性
複雑で分かりづらいザッピング形式のダンジョン
3
B
ジャンル 謎解き×パニック×ザッピング3DダンジョンRPG
ハード PlayStation 4
Nintendo Switch
発売日 2020年11月5日
発売元 コンパイルハート
開発元 コンパイルハート
ゼロディブ
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで52時間

 コンパイルハートがおくる、謎解き×パニック×ザッピング3DダンジョンRPG「神獄塔 メアリスケルターFinale」のレビュー記事です。

 3作目にしてシリーズ最終章となる本作。ザッピング形式でグループを分けることによって、全てのキャラクターにスポットを当てた構成は秀逸で、シリーズ最終章にして集大成と呼べる内容でした。ストーリーは大きく3分割されていますが、合計のボリュームは50時間を超えており、薄い印象はありません。過去作品を全て楽しめる「BEFORE STORY」も収録されており、シリーズ初プレイや事前に復習したい人でも安心です。

 ストーリー周りが好感触だった反面、3DダンジョンRPGとしては、荒削りな作り込みが目に付きました。特に、新規追加されたザッピング周りの機能は最低限で、全ての部屋・通路を踏破する前提の、根気を要求されるダンジョン攻略です。育成要素に関しても、手間が3倍になった影響で、遊びにくい操作性などが悪目立ちしていたのは残念でした。過去作品に比べて不具合が少ないなど、良くなった部分もあるとはいえ、ゲームとしてはギリギリ及第点の内容です。

 不満も多く、気軽におすすめはしづらいものの、クリアした際の達成感は大きく、シリーズをプレイしていて良かったと感じる作品でした。

最後の脱獄劇に挑むシリーズ最終章

 前作のエンディング直後から始まるストーリーは、予想外の光景と襲撃による慌ただしい展開で、開幕から激動の物語です。複数のグループに分かたれた主人公たちは、それぞれのドラマを描きながら監獄塔を攻略していく、最後の脱獄劇に挑みます。40人近いキャラクターが登場するシリーズ集大成でありながら、ザッピング形式でグループを分けることによって、全てのキャラクターにスポットを当てた最終章となっていました。

 グループ同士の合流もあって、ストーリーは大きく3分割される形式ですが、合計のボリュームは50時間を超えており、薄い印象はありません。ダンジョン攻略の割合が多くを占めているとはいえ、ADVパートも充実しています。残念ながら本編のイベントスチルは少なく、会話が中心ではあるものの、今回もサブシナリオ・サブキャラクターに至るまで完全フルボイスという部分は好感触です。立ち絵も大半が過去作品の使い回しですが、スパンのない完全続編という位置付けもあって、変わらない方が自然な印象でした。

 1作目から足かけ4年、シリーズの累計プレイ時間は軽く100時間を超えて思い入れが深く、完結を迎えた際には大きな達成感が得られました。ゲーム面でのクオリティに数え切れないほどの不満があったことを差し引いても、シリーズをプレイしていて良かったと感じます。特に、キャラクターのコンセプトや性格付けがうまく、全ヒロインの個別エンディングをチェックしてしまうほどに、好きなキャラクターばかりの作品でした。

過去作品の全てを楽しめる「BEFORE STORY」

 完全続編ということで、過去作品のストーリーを知らなければ、本作を楽しむことはできません。「神獄塔 メアリスケルター2」には、1作目が同梱されているとはいえ、今から併せてプレイするのは少しハードルが高いです。そんな中、本作から初めてシリーズを遊ぶ人のために、過去作品の全てを楽しめる「BEFORE STORY」が用意されています。プレイ済みの人でも、事前に復習ができるうれしい機能です。

 「BEFORE STORY」には、ボイスが付いていないとはいえ、メインシナリオだけでなく、サブシナリオも収録。さらに、ムービーやイベントスチル、背景画像・BGMまで、ダンジョン攻略以外の全てが詰め込まれていました。「BEFORE STORY」による予習込みでプレイを考えている場合、かなり情報量が多い点には注意が必要です。読むペース次第ですが、最初から最後までチェックすると、予習だけで数時間は覚悟する必要があります。

ザッピング形式で攻略に挑む煩雑な3Dダンジョン

 複数のグループに分かたれたストーリーに合わせて、ダンジョン攻略もパーティーを切り替えながら攻略する、ザッピング形式を採用しています。扉で進路を阻まれたパーティーに対して、他パーティーでスイッチ操作やカギを受け渡して、新たな道を切り開いていくスタイルです。ダンジョンの構造が複雑な上、スイッチやカギが脈絡のない場所に置かれている場合も多く、全ての部屋・通路を踏破する前提の、根気を要求されるダンジョン攻略でした。

 パーティーの切替えは、戦闘中を除いて自由なタイミングで可能です。道を切り開くだけでなく、セーブデータや拠点機能など、パーティー間で共有しているシステムも多いので、うまく活用すれば探索を有利に進められます。丁寧にプレイすると、数分に1度の頻度で切り替えるのに対して、切替え時には短いながらもローディングが発生するため、累計のロード時間は意外と積み重なりました。

 ザッピング形式の探索をサポートする機能は、最低限の物しか用意されていません。他グループの扉を開いた際に表示されるカットインと、自分たちだけでは進めなくなったパーティーに「HELP」アイコンが表示される程度です。探索において重要なマップ表示は、複数パーティーを意識していない作りで、情報の切替えなどは一切ありません。どの情報がどのパーティーに対応しているかの把握は、プレイヤーの記憶力や手書きメモに委ねられています。

 基本的には、「HELP」アイコンの表示されていないパーティーを操作すれば進めるのですが、スイッチを見逃したまま扉に到達したパーティーがいると、全てのパーティーにアイコンが表示される場合があります。また、アイコンの表示はスイッチだけを判定しており、他パーティーからカギを受け取って自分で開閉する場合は表示されないので、アイコンも過信はできません。

 とにかく煩雑でサポートも乏しいため、少しでもプレイする手を置くと、次に何をするのか分からなくなることが頻発しました。キリの良いところで終えるか、メモを残しておかなければ、翌日のプレイでも状況の把握に手間取ります。ゲームオーバーで進行状況が過去のセーブデータに巻き戻ると、二重の意味で大惨事でした。集中的にプレイしてクリアを目指すスタイルならまだ良いですが、不定期に少しずつ進めるスタイルの人には不向きです。

面白さだけでなく手間も3倍になった戦闘・育成要素

 バトルシステムは前作から引き継がれており、追加・調整は控えめです。雑魚敵の攻撃力が高く、先手必勝で倒しきれなければ、一転して全滅の危機に陥るバランスも健在。「ブラッドスケルターモード」による暴走や、不意打ちからの即ゲームオーバーなど、油断すると事故死が多発するため、大味なバランスに対して丁寧なプレイが求められます。基本的には、ストーリー同様に戦闘も前作の続きをプレイしている感触でした。

 大きな変化は、グループの分断によって、複数パーティーの戦闘・育成を平行して進めることです。最初は2~3人のパーティーが6組、合流後は5人パーティーが3組の構成で、メンバーは固定されています。同じ人数でもジョブ構成が異なるため、3パターンの戦闘・育成が楽しめる反面、レベリングや装備をそろえるのに掛かる手間も3倍になったのは難点です。洗練されたゲームシステムなら良いのですが、遊びにくい操作性などが悪目立ちしており、同じことを繰り返しているとネガティブなイメージが高まります。

 悪いことばかりではなく、基本的なゲームシステムを流用している影響もあってか、前作に比べて不具合や調整ミスが少ないのはうれしかったです。エラー落ちなど、回避しようのないトラブルで時間が無駄にならないだけでも、モチベーションが大きく変わります。不具合が少ないのは、製品として当たり前とはいえ、異常な量の修正を行っていた前作から大きな改善でした。

単なるオマケと言い切れない予約特典

 ラブラブ水着恋愛ADVゲーム「恋獄塔 めありーすけるたー true end」の存在は、予約特典を単なるオマケとは言い切れない要因でした。本編の少ないイベントスチルを補完するような、大量の新規イベントスチルに加えて、ストーリーも意外と重要なポジションとなっているため、予約特典という扱いに驚いたほどです。

 他にも、予約特典に含まれている過去作品の限定職業で、一部スキルの汎用性が異常に高い点も気になりました。全体攻撃でSP回復効果があり、序盤から終盤まで活躍するので、ゲームバランスに大きく影響しています。また、解放できる職業が少ない序盤では、育成状況に関係なく大量数の職業が解放されるため、パーティーメイクの幅が広がった点も助かりました。

 ストーリー・ダンジョン攻略のどちらに置いても、有無が評価に影響するレベルなので、購入を検討している人は、予約特典が手に入るうちにパッケージ版の購入をおすすめしたいです。

さいごに

 プレイ中は敵だけでなくストレスと戦いながらも、クリア後の満足度は高いという、評価の難しい作品でした。

 ゲームとしてのクオリティは、決して万人が楽しめるものではありません。しかし、過去作品に比べて良くなったと感じる部分も存在するので、新規で興味を持った人だけでなく、1作目や2作目で挫折してしまった人にも、改めて遊んでみてほしい作品です。