【マグラムロード | PS4】評価・レビュー コンカツで魔王絶滅回避を目指す魔剣創造アクションRPG

総評
「絶滅危惧種」の魔王様が冒険やデートを繰り広げる、ユニークな世界観が特徴の魔剣創造アクションRPG。メインストーリーやコンカツが高評価なのに対して、単調なアクションと乏しいイベントスチルが評価の足を引っ張る作品でした。
良かったところ
ユニークな世界観と魅力抜群のストーリー
7キャラ×男女差分の豊富なコンカツ
悪かったところ
単調になりがちなアクションバトル
6枚だけの乏しいイベントスチル
3
B
ジャンル 魔剣創造アクションRPG
ハード PlayStation 4
Nintendo Switch
発売日 2021年3月18日
発売元 ディースリー・パブリッシャー
開発元 FELISTELLA
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで13時間

 ディースリー・パブリッシャーがおくる魔剣創造アクションRPG「MAGLAM LORD/マグラムロード」のレビュー記事です。

 「絶滅危惧種」の魔王様が絶滅回避を目指して「コンカツ」する、ユニークな世界観が特徴的な本作。パートナーとなるキャラクターと一緒に、冒険したりデートしたりのストーリーは魅力抜群で、続きの気になる展開が楽しめます。キャラクターごとのイベント数・CGは控えめではあるものの、コンカツ対象が7人と多く、魔王様の男女差まで含めれば合計14パターンの様々な展開が楽しめました。

 アクション部分は、かなりシンプルなゲームシステムです。10数時間のボリュームとはいえ、最初から最後まで同じような戦い方を繰り返す単調さが目立ちます。最低限の情報だけで、手探りの探索を強要される場面も多く、好みの分かれそうな部分でした。

 ストーリー目当ての購入ならおすすめできる反面、アクション・探索部分への高い期待は控えた方が良い作品です。

ユニークな世界観で絶滅回避を目指すストーリー

 眠りから目覚めた魔王さまが「絶滅危惧種」に指定されるところから始まるストーリーは、魔王様を中心としたキャラクターたちによる、アクションあり、コンカツありの型破りな内容です。力を取り戻すため、パートナーと一緒にフィールドに出て探索したり、「コンカツ」と称してデートしたりと、様々な体験を経ながら絶滅回避を目指します。

 魔王様以外の登場人物も、たった二人だけの「勇者の一族」や、冒険アイドルを務める「最後の獣人」など、個性的ぞろいです。それぞれが様々な事情を抱えており、メインストーリーやデートイベントを通じて、二転三転する展開が楽しめました。ユニークな世界観の中に、どこか不穏な空気を感じつつ、続きの気になる物語は本作の大きな魅力でした。

 「サモンナイト」シリーズの開発会社・スタッフが参加していることで、公式サイトなどで前面に名前が出ているものの、完全新作なのでコンテンツは独立しています。私自身、サモンナイトシリーズは未プレイですが、特に問題なく楽しめました。

7人×男女差分で様々なパターンが楽しめるコンカツ

 弱体化した魔王様は、魂の飢え「魂飢(こんかつ)」を解消するため、「魂の伴侶」を見つけなければなりません。そのために、パートナーとの共闘や会話で好感度を上げて、デートを重ねることになります。デート内では意外な一面や特別なイベントスチルを見られたり、最終的にはエンディング分岐にも影響を及ぼしたりと重要なコンテンツです。

 コンカツ対象は全部で7人。魔王様は男女を選べるので、周回プレイ前提になるものの、同性・異性で併せて14パターンのコンカツが楽しめます。どのキャラクターも大きな魅力を秘めており、私は男女で2周回して、全てのイベントを堪能しました。ED分岐は終盤なので、しっかりと好感度を上げていれば、エンディングを回収しやすい構成になっていた点も好感触です。代わりに、クリア後の引き継ぎ周回がなく、男女差を確認するのは少し手間でした。

 ゲーム全体としては十分なボリュームでしたが、キャラクターごとで見ると中身のあるデートは3回程度で、少し物足りない印象でした。男女による会話の違いも、魔王様が急に無口になってパートナーが喋り分ける部分が多く、気になる人もいるかと思います。中でも、イベントスチルはパートナーに各1枚と非常に少ないです。魔王様自身や、パートナー以外のキャラクターは、立ち絵だけでした。「コンカツ」や「デート」といったキーワードから、アドベンチャー気分でプレイすると肩透かしをくらうかもしれません。

シンプルで単調さが際立つアクションパート

 シンボルエンカウントから発生する、サイドビューのアクションバトルでは、パートナーを操作して戦います。3種類の武器(剣、斧、槍)から合計3本を装備して使い分けたり、パートナー固有のスキルを使ったりして敵を全て倒せば勝利です。戦闘中に魔王様のゲージが満タンまでたまると、一定時間、魔王様に交代して強力な攻撃を放つこともできます。

 基本的な操作はシンプルで、武器を使った攻撃は、1つのボタンとスティック入力だけで行います。武器種ごとの攻撃モーションは全パートナー共通で、武器以外のスキル使用は頻度が低いため、最初から最後まで同じ戦い方が続く単調さが目立ちました。最大ダメージが3桁と低く、一撃が重い攻撃は中盤あたりからカンストしてしまうので、手数の多い攻撃が中心になる後半ほどアクションの幅が狭まります。

 武器の種類によってアクションが変わるとはいえ、全ての敵に弱点となる武器種が設定されているため、単調さの回避には至りません。弱点以外の武器ではダメージが大幅に減少するので、戦闘のたびに相手の弱点武器に持ち替えて、同じコンボを繰り返すのが基本です。3種類の武器を3本まで自由に装備できますが、弱点と耐性の仕様から、各武器種を1本装備で固定されているのと変わらない点も今ひとつでした。

 難易度選択は存在しないものの、基本的にはイージー難易度で固定といった難しさのため、ストーリー目当てでアクションが苦手な方でも遊びやすいです。しっかりと育成していれば、回復アイテム多用の力押しで大体クリアできます。戦闘で死んでしまっても、即座に戦闘前からやり直せるので安心です。逆に、手応えを求める方には、前述した単調さもあって物足りないかと思います。

レベルアップと武器鍛造で強化を重ねる育成要素

 育成要素は、大きく分けて「キャラクター強化」と「武器の鍛造」の2種類が用意されています。レベルアップによって成長する「キャラクター強化」は分かりやすく、ポイントによってスキルを獲得することもできます。ただし、スキルの種類は少なく、大半は同系統のパッシブスキルです。キャラクターによって槍系が伸ばせる、斧系が伸ばせるといった個性はあるものの、使用武器は敵の弱点によって固定されてしまうため、ほとんど意識することはありません。

 「武器の鍛造」では、素材を消費することで、51種類の魔剣(剣、斧、槍がそれぞれ17種類)を作成できます。武器の攻撃力がダメージに大きく影響するので、敵が硬いと感じたら武器を作って解決する、もっとも重要な育成要素です。素材は敵を倒すことで手に入るため、ストーリーを進めるばかりではなく、素材集めを行う必要があります。鍛造した魔剣は分解も可能で、全ての素材が返ってくる仕様は、過剰な素材収集を要求してこないので助かりました。

 鍛造した魔剣は、デコアイテムを付けることで、更に強化することができます。単純にステータスを上乗せする以外に、種族・サイズ特攻や、状態異常の確率アップなど、効果は多種多様です。外見や攻撃時の演出を変えられる遊び心も用意されています。獲得したデコアイテムを処分する方法がなく、性能によるソートやフィルタもないので、数が増えると管理が煩雑になったのは残念でした。

手探り感覚で探索を繰り返す魔王様へのリクエスト

 ゲーム進行の基本は、魔王様へのリクエストに応じて、フィールド探索や会話イベントが発生する形式です。ストーリー進行に関わる重要リクエストの数は少ないですが、レベル上げや素材集め目的で、汎用リクエストも平行してクリアする必要があります。汎用リクエストは周回も可能で、素材を集めるために何度も同じ物を受注することも多いです。パートナーとの好感度やデート状況によって発生する、特別なリクエストも存在しました。

 リクエスト受注中は、四角を線でつないだマップ情報しか用意されていないので、常に手探りの探索を要求されます。討伐対象の敵や収集アイテムが見つかりそうな場所を推測して、実際に行ってみるしかありません。幸いなことに、キャラクターの移動速度がかなり早いので、探索のストレスは控えめです。代わりに、カメラの描写範囲が狭くて方向も固定されているため、手前への移動では不慮のエンカウントが多発しました。

 リクエストのクリア以外に、「絶滅危惧種」や「映像・音楽ギャラリー」といった「収集要素」も用意されています。「絶滅危惧種」は見つけることで、新たなリクエストが発生したり、店売りアイテムが増えたりするのですが、リクエスト目標以上に手探りで全てのフィールドをしらみつぶしにチェックしなければなりません。「映像・音楽ギャラリー」は敵からレアドロップする物もあって、コンプリートを目指すと意外な鬼門でした。

さいごに

 そこまで高い期待をしてはいなかったものの、ゲーム全体で6枚しか存在しないイベントスチルの少なさや、シンプルすぎるアクション周りから、想像以上に低予算を感じさせる作品でした。このあたりは、ユニークな世界観を活用したプロモーションや見せ方がうまかったと評価せざるを得ません。

 最終的にはプラチナトロフィー獲得までプレイしたこともあって、細かいところに不満を抱きつつも、満足度はそれなりです。荒削りな部分が多いことから、総評として高評価を付け難いとはいえ、ストーリー周りに興味のある方には購入を勧めたい作品でした。