【有翼のフロイライン | PS4】評価・レビュー ボリューム不足が目立つ、手応えのない3Dシューティング

総評
簡単操作で空中戦が楽しめるハイスピード3Dシューティング。低すぎる難易度に加えて、2時間程度で終わってしまうボリュームで、戦闘・ストーリーのどちらも中途半端な作品です。
悪かったところ
手応えのないシューティングパート
全6ミッションの物足りないボリューム
1
C-
ジャンル ハイスピード 3Dシューティング
ハード PlayStation 4
Nintendo Switch
Steam
発売日 2021年6月3日
発売元 Clouded Leopard Entertainment
開発元 Production Exabilities
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで2時間

 Production Exabilitiesがおくるハイスピード 3Dシューティング「有翼のフロイライン Wing of Darkness」のレビュー記事です。

 高速で空を駈ける「フロイライン」を操作して、未知の敵「ブランカー」との空中戦を繰り広げる本作。「ハイスピード3Dシューティング」という難しそうなジャンルながら、簡単操作で誰でも手軽に遊べる反面、低すぎる難易度が目に付きました。適当に攻撃を繰り返すだけで勝手に敵が落ちていくので、シューティングパートに手応えを求める人にはおすすめしにくいです。

 ミッションが6個しかなく、2時間程度で終わってしまう物足りないボリュームも残念でした。2人の少女によって語り紡がれるカットシーンパートは独特であるものの、ボリューム不足からダイジェスト気味に進行するため、感情移入もしにくいです。戦闘もストーリーも中途半端な印象が否めず、特筆するほど褒められる部分が見当たらない作品でした。

高速の空中戦が展開されるシューティングパート

 「シューティングパート」では、空中を自由自在に飛ぶ「フロイライン」を操作して、未知の敵「ブランカー」と戦います。「ハイスピード3Dシューティング」というジャンルから、難しそうなイメージが湧くものの、簡単操作で誰でも手軽に遊べるよう作られていました。照準を合わせるだけで自動的に偏差射撃をしてくれたり、弾薬やシールドは時間経過で回復したりと、シューティングにありがちなシビアさはありません。

 良くも悪くもシンプルな操作感で、複雑な操作を求められない反面、意図通りの動きが行えずに、もどかしさを覚える場面も多いです。例を挙げると、狙う敵を固定する「フォーカスターゲット」機能は、対象を選ぶルールが曖昧で意図した相手を固定するのが難しく、固定中に対象の変更もできません。PS4の場合、高度の上昇が[×ボタン]、下降が[○ボタン]と直感的な配置ではない点も、気になる人が多そうでした。キーコンフィグ機能もなく、プレイヤーが調整できるのは、視点操作の感度と上下反転だけです。

 武器は装備箇所によって「プライマリ兵装」「セカンダリ兵装」「ターシャリ兵装」と分類されており、それぞれ3~4種類の兵装が存在します。連射性能の高いガトリング砲や、威力の高いバトルライフル、ロックオン式のホーミングレーザーなど、本作のプレイヤーが求めそうな武装を一通り押さえている印象です。組合せは、プレイヤーが自分好みに変更できるほか、ミッションごとに推奨セットも用意されています。

手応えの感じられない戦闘と低すぎる難易度

 戦闘中、大型の敵を除いて視認が困難で、何と戦っているのかよく分からない点は残念でした。特に、敵の主力である敵性フロイラインは、動きが早くて小さいことから、ほとんど姿が見えません。姿形のある敵と戦っているというより、敵の位置を示す◇表示ばかり追うことになります。兵装によっては、自身が撃ちだした弾も見えないので、戦闘の手応えは全く感じられません。

 低すぎる難易度も、手応えのなさを助長していました。開発の想定した最適難易度とされるノーマルでも、体感としてはイージー相当です。敵の攻撃が消極的で、プレイヤーの周りを飛び回るだけで、攻撃してこない敵も存在します。ハードで棒立ちにでもならないかぎり、ダメージが自動回復を上回ることはなく、敵の攻撃で死ぬのが難しいくらいでした。

 敵の攻勢が手ぬるいのに対して、こちらの攻撃は自動的に行われる偏差射撃の精度が異常に高く、適正距離で照準内に収めていれば、ほぼ必中でした。照準を敵に固定する「フォーカスターゲット」と併用すれば、プレイヤーの操作はトリガーを引くだけです。攻撃を回避する必要性も低く、ブーストやクイックマニューバーを多用して戦うよりも、その場で「フォーカスターゲット」と射撃を繰り返すだけの方が効率的でした。

全6ミッション構成の物足りないボリューム

 挑戦するミッションは、空中戦、低空潜入任務、海上要塞攻略、巨大空母戦といった、好きな人にはたまらないシチュエーションが一通り用意されています。ただし、それぞれ1ミッションしか存在せず、チュートリアルを除いたミッション数は、わずか6個とかなり乏しいです。前述したとおり難易度が低いこともあって、ゲームオーバーや詰まってしまうこともなく、クリアまで2時間くらいのボリュームでした。

 メインストーリー以外に、サブミッション的な物は存在せず、遊びのバリエーションもありません。リザルトでクリアタイムやスコアが存在するものの、オンラインランキングどころかゲーム内にすら記録されないので、自己満足の世界です。トロフィーも少なく、「プライマリ兵装を5万発撃つ」や「1,000回被弾する」といった、やりこみというよりも単純作業ばかりでした。ストーリークリアと併せても、4~5時間でプラチナトロフィーが獲得できます。

2人の少女によって語り紡がれるカットシーンパート

 ストーリーは、静止画とフルボイスを組み合わせたカットシーンパートと、シューティングパート中の通信で構成されています。主人公たち以外の味方キャラクターにセリフはなく、「フロイライン」である少女2人の視点から語り紡がれる形でした。カットシーンパートは常にどちらかの独白になるため、ストーリー描写の癖はかなり強いです。テキストを読み飛ばすことができないので、静止画の映画を見ているような感触でした。

 6ミッションしか存在しないボリュームのため、ストーリーもダイジェスト気味に進行します。シーンが切り替わると大きく時間が経過していたり、重要度の低い話は大胆にカットされたりといった感じでした。2人の仲が進展する経過や、「フロイライン」としての成長も、かなり駆け足になります。『静止画の映画を見ている気分』と前述しましたが、1クールのアニメを総集編の劇場版に仕立てたようなスピード感です。

 未知の敵による世界の危機。という大きな風呂敷に対して、全てが少女2人の視点で語られるため、プレイヤーからは見えない部分も多いです。最終的に、よく分からないままで終わってしまうセリフや設定も目立ち、物語に区切りは付いているものの、後味が良いとはいえませんでした。

さいごに

 インディーゲームらしい荒削りさの中に、コンセプトが光る部分も僅かにあったとはいえ、パブリッシャーと組んで大きく展開するにはクオリティ・ボリュームの不足を感じました。下手にボリュームを水増しせず、コンパクトにまとめているともいえますが、流石に2時間は短すぎる作品です。