【FORSPOKEN】評価・レビュー 約70種類の魔法に彩られたオープンワールドアクションRPG

総評
魔法を主軸に展開される異世界アクションRPG。約70種類の魔法を用いた戦闘と探索が非常に好感触だったものの、急展開のストーリーや大雑把なフィールド構成に不満を覚える作品でした。
良かったところ
爽快な魔法パルクール
約70種類の多彩な魔法
豊富なアクセシビリティ
悪かったところ
急展開で肩透かしのストーリー
大雑把で変化が乏しいフィールド
3
B
ジャンル アクションRPG
ハード PlayStation 5
Steam
Epic Games Store
発売日 2023年2月24日
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 Luminous Productions
公式サイト リンク

 スクウェア・エニックス/Luminous ProductionsがおくるアクションRPG「FORSPOKEN(フォースポークン)」のレビュー記事です。

 魔法を主軸に展開されるストーリーとアクションが魅力の本作。「攻撃魔法」「支援魔法」から「魔法パルクール」まで、約70種類の魔法に彩られたアクションは、非常に好感触でした。豊富なアクセシビリティによって、難易度やプレイスタイルを自分好み調整できる点も良かったです。

 アクションが面白かった反面、ストーリーは今ひとつ盛り上がりに欠ける内容でした。序盤こそ丁寧に描かれるものの、中盤以降は急展開を見せ、物足りなさが残ります。広大なフィールドに用意されたイベントも変化が乏しく、プレイ時間が長くなるにつれて評価を落とす作品でした。

序盤は手厚く、終盤は急展開のストーリー

 ニューヨーカーの主人公「フレイ」が意思を持つ腕輪「カフ」と出会い、異世界へ迷い込むところから始まる物語は、序盤からとても丁寧に展開されるストーリーです。いきなり異世界から始まるのではなく、転移するまでに1時間近くのプロローグが用意されていました。

 オープンワールドを自由に移動できるまでには、チュートリアルを兼ねた様々なイベントを経て、更に1時間ほどを要します。物語をじっくり楽しみたい方にとっては嬉しい反面、私のようにアクションをメインに期待していた場合、少し冗長に感じてしまう構成でした。

 幸い、プロローグを過ぎればアクションパートがメインになるため、テンポ良くストーリーは進行します。右も左も分からない異世界で、激動の流れに翻弄されながらも冒険を繰り広げ、世界の真実が徐々に紐解かれていく物語には引き込まれる物がありました。

 最後まで丁寧なストーリーが続けば良かったのですが、中盤以降は急展開が続き、拍子抜けだったのは残念でした。具体的には、物語が折り返しに差し掛かったと思っていたら、実は終盤だったという感じです。作品を通して主人公の成長が描かれるものの、急展開の勢いだけで押し切ってしまう場面も目立ち、評価を落とす要因でした。

多彩な魔法とパルクールで冒険する異世界

 本作においての「魔法」は、ストーリー・戦闘・探索の全てに関連する重要な要素です。4系統のスキルツリーで約70種類が用意されており、徐々に解放されていきます。ちなみに、公式では『100種類の魔法』と謳われていますが、同じ魔法の[Lv1~3]を3個とカウントしているため、ちょっと盛っている印象でした。

 魔法を用いた戦闘は、攻撃的なバランスとなっており、かなり好みでした。特に、主軸となる「攻撃魔法」は無制限に撃ち続けられるので、どのような場面でも攻撃の手が止まることはありません。様々な効果を持つ「支援魔法」はクールタイムが長いものの、切り替えていくことで並列に発動できるため、「攻撃魔法」とは異なる気持ちよさを秘めていました。

 広大な異世界を探索するために用意された「魔法パルクール」は、ただ走り続けるだけでも爽快感を覚えるシステムです。ボタン1つで発動し、様々な地形に合わせて半自動でアクションをしてくれるので、誰でもダイナミックかつ迅速に移動できます。スキルツリーが解放されていくにつれてパルクールに関する魔法も増えるため飽きにくく、終始移動が楽しい作品でした。

 約70個と種類が多くても、使い勝手やプレイスタイルによって同じ魔法の繰り返しになりがちです。様々な魔法を使うきっかけとして、ミッション形式の成長要素が存在するのは上手い工夫でした。ミッション対象の魔法だけでなく、同系統の魔法が全て強化されるため、間接的に主軸として使用している魔法の強化にもつながります。

フィールド上のイベントは大雑把で変化が乏しい

 異世界のフィールドは広く、マップ上には様々なイベントスポットが配置されているものの、一定の間隔で大雑把に置かれているだけ。という印象が強かったです。フィールドが変わってもイベントは似たり寄ったりの物が多く、大半は「敵を殲滅」するシンプルな内容でした。敵の種類が豊富とはいえ、変化に乏しく、探索のモチベーションを維持するのは困難です。

 魔法パルクールが制限された状況で、移動と会話を繰り返す街パートは、評価の足を大きく引っ張りました。街へ戻る気が進まず、ストーリー進行を後回しにして、未踏破エリアの探索に逃げてしまうほどです。全体のボリュームに対して、街パートは決して大きな割合ではないですが、爽快な探索とのギャップがつらく感じました。

豊富なアクセシビリティと高速ファストトラベルは好感触

 設定で変更できる項目が多く、ちょうど良い遊びやすさに調整できるアクセシビリティは、本作の魅力の1つです。難易度だけでも、「イージー」「ノーマル」「ハード」といった基本的な項目から、ダメージ量・自動回避・自動回復アイテム使用など、多岐に渡ります。クールタイムの完了した「支援魔法」に自動切替えの項目をONにすると、支援魔法の乱れ打ちも可能です。

 魔法パルクールを使用するためのスタミナも回復速度が調整できるようになっており、最速にすれば、ほぼ無制限にパルクールを継続可能です。パルクールは戦闘中の回避にも使用するため、難度にも影響しますが、フィールド探索をメインに進めたいときだけ回復速度を高めて快適に遊ぶといった使い分けも行えます。

 細かい点としては、アイテムの自動回収や、宝箱のパズルを自動スキップできる項目も嬉しかったです。特に後者は、オンにするとパルクールからスタイリッシュに宝箱を開けられるようになるため、パズルに飽きたら常時スキップでプレイしていました。

 広大なフィールドの探索を補助する「ファストトラベル」は、驚くほど高速です。世界の端から端まで移動しても、ローディングを感じさせません。ちょっとした距離でもロードを気にせず多用できるため、魔法パルクールによる爽快な探索のテンポを阻害せず好感触でした。

さいごに

 体験版の戦闘・魔法パルクールに惹かれて購入して、該当部分の満足度は高かったものの、作品全体としては今ひとつの評価でした。今後、前日譚のストーリーDLC販売が予定されているものの、もう少し本編も丁寧に制作して欲しかったと感じる作品です。