【カニノケンカ -Fight Crab- | Steam】評価・レビュー カニとなりカニと闘う本格3D格闘アクション

総評
最強のカニを目指して、相手をひっくり返していく3D格闘アクション。シュールな見た目とは裏腹に、中身はしっかりと作り込まれており、奥深い対戦が楽しめる作品です。オンライン機能やランキング要素も完備されており、ボリュームも十分でした。
良かったところ
シンプルだが奥深いバトルシステム
こだわりを感じるカニの再現と物理演算
23種類のカニと48種類の武器
悪かったところ
オンラインプレイの人口が少ない
5
A+
ジャンル 3Dアクションゲーム
ハード Steam
Nintendo Switch
発売日 2020年7月30日
発売元 PLAYISM
開発元 Calappa Games
公式サイト リンク

 Calappa Gamesがおくる最先端3Dアクションゲーム「カニノケンカ -Fight Crab-」のレビュー記事です。

こことは違うどこかの世界、 神に知性と力を授かったカニ達は人間の武器を奪い、地上を支配しました。 カニ達は不死身で、剣も銃でも殺すことはできません。 しかし、たった一つだけ、誰にも逆らえぬ、甲殻の掟がありました。 『背を大地につけた者は負け…』 そう、ケンカで逆さにひっくり返された者は屈服しなければなりません。 あなたは今、最強のカニを目指し、全てをひっくり返す旅に出るのでした。

 カニとなって、カニと闘う本作。まるで冗談のようなゲームですが、実際のカニに準じて再現されたカニが物理演算で動く、本格的な3D格闘アクションです。「相手をひっくり返せば勝ち」という、シンプルながらも奥深いバトルシステムで、熱い駆け引きが楽しめます。世界中の海から集まった23種類のカニと、バリエーション豊かな48種類の武器を組み合わせた、プレイスタイルの幅広さも大きな特徴です。

 最強のカニを目指す「キャンペーンモード」と、他のプレイヤーと闘う「バーサスモード」が用意されており、どちらにもランキング要素が存在します。NPCを相手に最高スコアを目指すも良し、ランクポイントを賭けて強豪とカニ捌きを競うも良しで、ボリュームも十分です。オンラインのプレイ人口が少なく、マッチング待ちや同じ人との連戦といった問題はあるものの、面白さを損なうほどではなく、満足度の高い作品でした。

カニとなりカニと闘う最先端3Dアクションゲーム

 カニ同士のケンカは至ってシンプル、闘い方や武器を問わず「相手をひっくり返せば勝ち」です。場外負けという例外もあるとはいえ、基本的には、いかにして相手をひっくり返すかに尽きます。もちろん、カニは不死身のため、HPバーはありません。剣や銃で攻撃されても、背中を地につけて3カウント取られない限りは大丈夫です。ただし、ダメージを受けすぎると体勢が崩れやすくなるため、攻撃を当てた方が有利になります。どれだけ少ないダメージ量でもひっくり返されると負けなので、一発逆転も秘められた、ハサミを削る真剣勝負です。

 カニの操作は意外と難しいです。人間には手足が2本ずつしかないのに対して、多くのカニは脚が5対10本もあります。左右のスティックでハサミを動かしながら攻撃・ガード、同時に前後左右の移動を行うだけでも慣れるまで苦戦しました。テクニックも豊富に備わっており、カニの基本となる「ウォールラン」や相手の甲殻や武器を挟む「白羽取り」から、ハイパーモード中は「カニハメハ」「カニオウケン」といった必殺技まで様々です。とはいえ、取りあえず接近して殴り合えば、良い感じに闘えるゲームに仕上がっています。

 カニの挙動やダメージの計算は物理演算で動いている点も大きな特徴でした。勢いよく武器を当てれば、その分だけダメージも大きくなるため、手慣れたカニは武器をハサミのように扱います。カニの構造や特徴も再現されており、軽いカニは軽快ですが浮いたり吹き飛ばされたりしやすく、重いカニは鈍重であるものの安定性が高く、重い武器も扱いやすいです。名前や見た目は冗談のようなゲームですが、中身には強いこだわりを感じました。

 ゲームとして楽しめるだけでなく、「フォトモード」や「VRoid Hub連携」も完備しており、SNSや動画で映える点もおすすめのポイントです。

10,000パターンを超えるカニと武器の組合せ

 本作には23種類のカニと48種類の武器が用意されており、単純計算でも1,000パターンを超えるビルドの組合せが存在します。片手武器は、左右別々で装備することもできるので、組合せの総数は軽く10,000パターンを超える計算です。初期装備の武器だけでなく、バトルステージのオブジェクトを武器代わりにつかんだり、相手の武器を奪ったりもできるので、多少の相性差があっても、駆け引きでくつがえせる奥深さを備えています。

 プレイアブルのカニは、「ズワイガニ」「タラバガニ」といった食材で有名なカニから、巨大な「タスマニアオオガニ」や、甲殻類だがカニじゃない「シャコ」など多彩です。中には、ジェット噴射で移動する「メタルクラブ」といった架空のカニも登場しました。実際のカニに準じて構造や特徴が再現されている影響で、カニごとに操作感も大きく異なります。物理演算で動いていることもあって、カニの特徴を意識したプレイが求められました。

 カニ同様、武器も古今東西のあらゆる物が取りそろえられています。「ナイフ」「刀」「リボルバー」「ショットガン」などのベーシックな銃砲刀剣類から、ロマンあふれる「ドリル」「パイルバンカー」「蛇腹剣」、光刃が伸びる「ビームセイバー」、剣から金色の本流が放たれる「エクスカニバー」などバラエティが豊かです。武器の持ち方・振り方はカニの形状に左右されるため、同じ武器でも組合せによって使い勝手が変化することも少なくはありません。軽いカニに重量系武器を装備させると、武器に振り回される場合もありますが、それを逆手にとって全身を回転させて武器を当てに行くなど、闘い方の幅は驚くほど広いです

最強のカニを目指して闘うキャンペーンモード

 キャンペーンモードでは、7つのバトルステージで待ち受ける、様々なカニたちを倒していきます。ストーリー性は薄く、とにかく闘う硬派なスタイルです。西洋の武器を持ったカニがそろう「蟹卓の騎士」や、日本の刀剣類を持ったカニが登場する「蟹武芸帳」など、ステージの特徴も奇抜で、ただ相対するだけで盛り上がります。各ステージのラストでは、巨大なボスカニとの決戦も繰り広げられました。

 ファイトマネーによるカニ・武器の購入に加えて、カニを強化する育成要素も存在。5段階の難易度は、難しくなるほど報酬も増加するため、闘いと強化を繰り返して最強のカニを目指します。NPCのパートナーを連れて行けたり、他プレイヤーとの協力プレイを楽しめたりと、機能面でも充実していました。

 敵を倒し続けるチャレンジモードもあって、クリアしたWave数を、ステージごとのオンラインランキングで競い合うこともできます。カニと武器のチョイスから強化の配分まで、自身とNPCパートナーの2体分を熟考、またはフレンドと協力して挑戦しなければならないため、こちらも奥深いです。キャンペーンだけでは物足りないが、対人戦は苦手という方でも、じっくりとやり込めるランキングだと感じました。

強豪やフレンドと対戦が楽しめるバーサスモード

 カニとなりカニと闘う対戦ゲームなので、最終的にはプレイヤー同士で闘うバーサスモードに行き着きます。対戦は大きく分けて、3本勝負でランクポイントの変動が発生する「ランクマッチ」と、部屋を作って自由に闘う「フリーマッチ」の2種類です。もちろん、かかしやNPCを相手にトレーニングモードで腕を磨くこともできます。オンラインマッチだけでなく、画面分割でのオフライン対戦も用意されているので、来客時の対戦プレイも可能です

 ポイントを賭けた「ランクマッチ」は、カニ同士が覇を競う熾烈なケンカです。上手いプレイヤーが相手だと、巧みなカニ捌きで、一瞬たりとも油断はできません。プレイスタイルは千差万別で、様々なカニとの真剣勝負が楽しめました。ただし、プレイ人口は決して多いといえず、時間帯によってはマッチングに時間が掛かったり、同じ人と連続でマッチングしたりも多いです。狭い世界での争いという印象は拭えないものの、バトルステージが異なるだけで闘いは大きく変化するため、たとえ連戦でも同じようなケンカの繰り返しにはなりません。

 「ランクマッチ」同様、「フリーマッチ」もオンラインのプレイ人口は少なく、基本的には示し合わせてのプレイになります。フレンド部屋の作成もできるので、知り合いを誘ってプレイすれば、じっくりと対戦を堪能できました。一緒に遊ぶ相手が多ければ、2対2のタッグマッチも可能です。私自身、フレンドと遊んでみたところ、真剣勝負からネタ武器同士の闘いまで4時間くらい白熱してしまい、これだけでも価格分の元が取れた気分でした。

 このレビュー記事を書いている時点では、Steam版が発売したばかりの状況ですが、話題になっているためプレイ人口の増加に期待しています。2020年8月20日にはSwitch版の発売も予定されており、「フリーマッチ」はクロスプレイでも遊べるらしいので、今後状況が変わっていく可能性も高いです。

さいごに

 元々、体験版・アーリーアクセス版を遊んでいたこともあって、製品版は想像通りの高評価という印象でした。決して一発ネタではなく、ゲームとしても楽しめるクオリティなので、興味を持ったら実際に遊んでみて欲しい作品です。