ジャンル | 陣取りアクションRPG |
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ハード | PlayStation 4 Nintendo Switch |
発売日 | 2020年6月25日 |
発売元 | 日本一ソフトウェア |
開発元 | 日本一ソフトウェア |
公式サイト | リンク |
プレイ時間 | ストーリークリアまで11時間 |
日本一ソフトウェアがおくる陣取りアクションRPG「少女地獄のドクムス〆」のレビュー記事です。
二心一体をコンセプトに、身体を貸し借りするバディストーリーや、TPSと陣取りを組み合わせたアクションが特徴の本作。少女が生み出す地獄「少女地獄」という独創的な世界観を舞台に、毒娘との不思議な関係を描いた物語は面白く、設定・シナリオはとても好感触でした。少女地獄の主たち全員に立ち絵・イベントスチルが用意されていたりと、演出面にも注力されていると感じます。
しかし、アクションゲームとしては、惜しい部分が多いどころか、惜しいところしか見当たらないクオリティで、低質な評価を付けざるを得ません。アクションはオマケで、ストーリーを中心におすすめしようにも、ポップなビジュアルに反して難易度が無意味に高く、遊ぶハードルを上げています。まともなデバッグが行われていないのではと疑うほど「エラー落ち」「不具合」も多いため、クリアするには相当の根気が必要でした。
多くの不満を感じながらもプラチナトロフィー獲得まで遊んでみたのですが、いくらストーリーが良くても、マイナス部分が大きすぎる作品です。
目次で流し読み
二心一体で少女地獄を浄化していくバディストーリー
気が付いたら地獄に迷い込んでいた主人公と、主人公の身体を奪った毒娘。二心一体となった2人は、現世へ戻るため、少女たちが生み出した地獄「少女地獄」を浄化していくことになります。同じように二心一体で地獄を浄化するライバル「喪服の少女」と「白い毒娘」や、1人で徘徊する「黒い毒娘」など、登場するキャラクターは曲者ぞろいで、コメディテイストと非道徳的な世界観が入り交じったストーリーです。
主人公は自分自身ということで、ゲーム開始時に簡単なキャラクターエディットが用意されています。名前や性別だけでなく、数は少ないですがボイスも選択可能です。浄化の道中、定期的に毒娘とのコミュニケーションが発生する点も見どころの1つでした。育成要素にも絡んでいるため、直感的に答えにくいところはあるものの、毒娘の反応がかわいいので、全てのパターンを網羅したくなります。毒娘からの信頼や特定の条件を満たすことで、結末が変化するマルチエンディング形式も大きな特徴でした。
十人十色の欲望から生み出される少女地獄
少女たちの無念や執念などから生み出される「少女地獄」の存在は、とても独創的です。それぞれ浄化するための条件が定められており、開始前に流れる「ヒガンラジオ」や、実際に地獄内で手に入れた情報をヒントに、謎を解き明かしていく感覚が楽しめます。登場する少女は約20人で、残念ながらボイスはないのですが、全員に立ち絵とイベントスチルが用意されており演出面も豪華です。少女たちの物語は様々で、分かりやすい欲望から複雑怪奇な執着まで、プレイヤーを飽きさせません。ちょっと病んでる女の子が好きな人なら、より取り見取りでした。
ストーリーに直接関わる存在ではないものの、「ヒガンラジオ」のDJ「カグツチミドリ」「キキリツツリ」も印象的なキャラクターです。少女地獄の主たちとは逆に、ボイスだけの登場ですが、少女地獄の浄化前後に必ず挿入されるため、登場頻度は毒娘に次ぐ高さとなっています。奇抜なセンスのイメージを交えながら、毒舌トークで楽しませてくれるだけでなく、終盤には見せ場も用意されており、本作において欠かせない存在でした。
ユニークなだけで面白味のない陣取りアクション
少女地獄では、「主人公」と「毒娘」、異なる特性を持った2人を切り替えながら戦います。主人公の役割は、TPSのように毒で射撃して敵を撃退。毒娘は、走って囲むことによって地面の毒を回収するのが主な役割です。主人公の射撃はリロード制となっており、毒の回収によってリロード時間の短縮が発生します。回収に敵を巻き込めばダメージやダウンも狙えるため、両者のサイクルを上手く回すのが攻略のカギです。毒娘の操作は制限時間付きで、操作中も白骨状態の主人公に当たり判定が残るなど、同時に考えなければならないことが多いアクションでした。
二心一体を組み込んだ基本システムは悪くないものの、TPSとして見た場合は、とても低質な評価です。弾を当てても敵の反応が乏しく、自分の姿やエフェクトで当たっているのか判別が付かない場面も多いので、全く手応えがありません。リロード短縮が存在する代わりに、リロード時間が長めに設定されており、装備が整っていない序~中盤は頻繁に弾切れを起こす点もテンポを悪くしていました。手動リロードが存在せず、残弾を0にする以外でリロードが行えないため、工夫で補う余地もなかったです。それどころか、武器を切り替える際や敵を倒した後は、毎回無駄撃ちをして残弾を使い切る面倒なプレイが求められました。
ポップなビジュアルから簡単そうに見えますが、クセのある仕様が多くて難易度は少し高めです。敵から受けるダメージが多く、最初のステージですら1発で半分減らされます。被ダメージ時の無敵時間もほとんどないため、近づかれるだけでピンチです。残機制で即ゲームオーバーではないものの、移動や回避行動で敵をすり抜けられないことから、部屋の隅に追い詰められて残機が尽きるまで殴られることもありました。一応、必殺技のような物が存在するとはいえ、発動時に無敵時間がないので、緊急回避には全く使えません。むしろ、発動まで操作不能で無防備におちいる危険な技です。ゲームオーバーになると、ステージ内で獲得した経験値・お金は全て失われるため、何も残りません。
意図した高難易度というよりもバランス調整・作り込み不足のような感触なので、クリアするには相当の根気が必要です。オプションに「照準自動補正」が用意されているとはいえ、難易度調整といえるほどの機能ではありません。救済措置にあたる「残機の最大数を増やすアイテム」はDLC販売とされている上、ゲーム発売日の時点でゲーム内からの動線はあってもストアで販売されていないなど、わだかまりが残る部分も目立ちました。
不親切な育成要素と作業感の強い装備収集
経験値によるレベルアップ以外に、毒娘とのコミュニケーションによるステータス上昇・スキル獲得の育成要素が用意されています。しかしながら、項目名は「肉体同調」「知識共有」「毒適応」など不明確で、実際に上げるまで何が強化されるのか分からない不親切なシステムです。獲得できるスキルも、5種類の項目に対して3つしか表示されないため、計画的な育成は困難でした。1度の選択で伸びる量が少ないことから、特定の項目を育てるためにはステータス準拠で回答する必要があって、ストーリーとのかみ合わせも悪いと感じます。
少女地獄では、特殊なアイテムを3個集めることで、新たな毒装備の獲得も可能です。それぞれ地獄の元になった少女をモチーフにしており、「攻性」「防性」「触媒」の3種類が存在。汎用的な性能を持った毒から、高威力・低弾数といったピーキーな性能の毒まで多種多様です。前述したリロード時間や仕様の問題もあって、快適に戦うための組合せは悩みどころであり、同時に面白いと感じる部分でもありました。お金によるランクアップもできるため、プレイスタイルに合った毒装備を育てていく楽しさも備えています。
毒装備の試行錯誤が面白い反面、獲得するための特殊アイテムを集めるのは、少し作業感が強いです。ステージ内のどこかに隠されているという情報しかなく、怪しそうな場所をしらみ潰しに探すしかありません。分かりやすいオブジェクトを壊すだけで手に入る物もあれば、特定エリアの敵を全滅させるといった手間の掛かる物など様々です。無視してステージをクリアすることも可能ですが、育成が大きく制限されるため、基本的には全て回収しながら進むことを要求されている感触でした。私の場合、毒装備の種類を増やすことにモチベーションを見いだせたのでコンプリートできましたが、人によっては苦痛でしかないと感じます。
目に余る頻度で遭遇する「エラー落ち」「不具合」
いろいろと惜しいところが目立つ中、全く擁護できないのは「エラー落ち」「不具合」「処理落ち」の多さでした。特に、「エラー落ち」は2~3時間に1度の頻度で、これまでPS4で遊んだゲームの中でもトップレベルで多かったです。オートセーブや中間セーブといった気の利いたシステムもないので、発生すると最後の手動セーブまで巻き戻ります。そのため、ステージをクリアするたびにセーブするのは必須です。長いステージをクリアして、イベントを見ている最中に落ちることもあって、可能な限り気を付けてプレイしてもストレスと失われた時間が積み重なりました。
「不具合」に関しても、まともなデバッグが行われていない感触です。1周プレイしただけで、ボスを倒しても死体が消えずに進行不能。出現した隠し宝箱に道を塞がれて進行不能。といった状況に遭遇しました。リタイアして再プレイすれば解決したものの、お金や経験値は失われるため、状況としてはエラー落ちと同様です。軽微な物でも、出現前の敵に対してホーミング弾が反応したり、ボスの召喚した敵がフィールド外に現れて戦闘に参加してこなかったりと、雑な作りが目立ちました。終盤のボス戦では、戦闘開始直後に部屋から出ると、外から一方的に殺せてしまう穴も存在します。ボスの死因は、部屋のドアを閉めなかったことです。
アクション周りの作り込み不足に比例して、開発人数が少なくスタッフロールも短いのですが、QA・デバッグに関しては項目すらありません。少しチェックしてみたところ、チュートリアルやステージ1で死ぬと、本来なら死亡時に移行するワールドマップが未解放のため、確実にゲームが止まる不具合まで残っていました。PS4 Proで遊んでいたにもかかわらず「処理落ち」も酷く、一応は完成品であるものの、ゲームとしての品質は最低レベルです。
さいごに
日本一ソフトウェアは発売後にアップデートを行うことが少ないため、余り期待はできないですが、願わくば不具合の修正や遊びやすさの調整を行ってほしいと強く感じます。ところどころに光るものを持っているので、しっかりと作り込まれていれば評価が違ったかもしれないと、本当に惜しさを拭えない作品でした。