発売日 | 2015年3月23日 |
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発売元 | ベアーズスタジオ |
開発元 | ベアーズスタジオ |
いわくつきの書物「ドグマツルギー」を巡る物語を、様々なメディアで展開するシリーズ作品第1弾「ドグマツルギー ouverture」のレビュー記事です。
壮大なシリーズの幕開けとなる本作ですが、ouverture(=開始)という名前の通り、ほとんどプロローグだけの内容です。最後まで遊んでも根本的な謎は何一つ解明されません。短いボリュームに加えて作りの粗い部分も多く、フルボイス仕様と作風に合ったイラスト以外は及第点未満の作品でした。
最低限の機能しか備えていないテキストアドベンチャー
オプション項目は音量とオート速度のみです。バックログやスキップ機能すら用意されていないため、タップミスで読み飛ばしてしまうと読み返すことすら困難でした。セーブ箇所も3つしか有りません。かなり短い作品とはいえ、テキストアドベンチャーとしてはギリギリの機能で遊ぶことになります。
手当たり次第の「探索」と勘で選ぶしかない「選択肢」
テキストを読み進める通常パート以外に、背景をタップして周囲を探索するゲーム要素が存在します。隠されたイベントを全て見つければ先に進めるのですが、タップするべきポイントがとても分かりにくいです。おかげで怪しそうなところを手当たり次第に調べていく、しらみ潰しの探索を行うことになりました。
それに対して、選択肢は間違えると1発でゲームオーバー。ほとんどは空気を読めば正解の2択とはいえ、勘で選ぶしかない物も用意されています。選択肢画面ではセーブ不可。スキップ機能もない本作にとって、巻き戻りによるやり直しは大きな手間を意味しており、違う意味で緊張感のある選択を迫られます。
プロローグ相当の内容に「起承転結」を無理やり詰め込んだストーリー
フルボイスを堪能しながら読み進めても1時間半くらいのボリュームです。急ぎ足でキャラクター設定の掘り下げが乏しく、全体的に薄っぺらい印象。最後まで遊んでも謎が1つも解明されないため、クリアしても物足りなさばかりが残ってしまうストーリーでした。結局、何の話だったのか全く分かりません。
テキストとイラストがかみ合っていないシーンも多く、短いボリュームに対して違和感は数え切れないです。目に付き始めると気になってしまい、物語に集中できない要因の1つでした。表示されていない死体をテキストで描写できても、イラストに存在しない返り血をテキストで描写するのは無理があると思います。
さいごに
iOS/Androidを皮切りに様々なメディア展開を予定しているシリーズ作品。その導入部として魅力に感じた部分は僅かでした。プロローグとはいえ、何も分からないまま終わってしまう構成では評価することも難しい。少なくとも「ouverture」しか配信されていない状態で、誰かに薦めようという気にはならないです。
内容的にも500円(セールが終われば800円)は高い。複数のメディア展開を視野に入れた壮大なプロジェクトとして売り込むのなら、本作は無料~低価格配信して間口を広く取った方が良いのではと感じます。広げた大風呂敷をちゃんと最後まで畳めるのか、現時点では不安しかない作品でした。