【ディオフィールドクロニクル】評価・レビュー 王道物とはひと味違う軍記シミュレーションRPG

総評
王道物とはひと味違う軍記物語が楽しめるSRPG。一癖も二癖もある登場人物ばかりで、味方同士の対立も際立つストーリーが特徴的でした。RTS風のバトルシステムも独特で、一風変わった物語・戦闘を楽しみたい人におすすめの作品です。
良かったところ
遊びやすいRTS風SRPG
傭兵部隊を中心に語られる軍記物語
4つの兵科を駆使する部隊運用
悪かったところ
5
A+
ジャンル シミュレーションRPG
ハード PlayStation 4
PlayStation 5
Nintendo Switch
Steam
Xbox
発売日 2022年9月22日
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 ランカース
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで17時間

 スクウェア・エニックスがおくるシミュレーションRPG「ディオフィールドクロニクル」のレビュー記事です。

 傭兵団を中心とした、王道物とはひと味違う軍記物語が展開される本作。一癖も二癖もある登場人物ばかりで、国内外の戦争だけでなく、味方同士の対立も際立つストーリーが大きな特徴です。登場人物や勢力の多さに対して、イベントはあっさり描かれるため、細部はプレイヤーの想像で補完する必要がありました。

 ステージクリア型の戦闘は、リアルタイムで敵味方が行動するRTS風のSRPGです。コマンド選択時の時間停止に加えて、やり直し機能も備わっており、雰囲気に反して難度は低めです。自由度の高い部隊運用も好感触でしたが、中盤で成長が頭打ちになるバランスには若干の不満を覚えました。

 やりこみ要素や高難度コンテンツがなく、手応えを求める人にとっては物足りないものの、一風変わった物語・戦闘を楽しみたい人におすすめの作品です。

王道物とはひと味違う軍記物語

 ディオフィールド島を舞台に、傭兵団「ブルーフォックス」を中心に語られるストーリーは、戦争を通して様々な人間模様が描かれる物語です。メインキャラクターである4人の幹部を筆頭に、一癖も二癖もある登場人物ばかりで、王道物とはひと味違う軍記が楽しめました。

 メインキャラクター同士の関係が、決して円満とはいえない点も、本作の大きな特徴です。作中では対立が頻発し、最後まで一緒に戦う未来が見えないため、予想の付かない展開が続きました。拠点で操作キャラクターになる主人公がいるとはいえ、主人公の意図や内情をプレイヤーからはうかがえない視点も独特です。

 登場するキャラクターや勢力が多いのに対して、一つ一つのイベントはあっさり描かれる構成は、好みの分かれそうな部分でした。意味深な発言や行動の結果が全ては語られないため、想像で補完する必要があります。見方によっては、未回収の伏線が数多く存在するストーリーでした。

リアルタイムで敵味方が行動するSRPG

 戦闘は、敵味方ともにリアルタイムで行動するシミュレーションRPGで繰り広げられます。RTS(リアルタイムストラテジー)に近いですが、味方ユニットが4体と少なく、コマンド選択時には時間が止まるので、比較的カジュアルなゲームシステムです。戦闘速度を倍速にしても、必要な時には熟考できるため、テンポ良く楽しめました。

 難易度は「カジュアル」「ノーマル」「ハード」の3段階が用意されていますが、「ノーマル」でも難度は低めです。味方のスキルが即時発動に対して、敵のスキルは阻止可能な溜めが発生するため、手堅く立ち回れば封殺できます。ヘイト管理やバックアタックによるダメージ増加などの要素が存在するものの、要求される戦術は控えめでした。

 チェックポイントからのやり直し機能といったサポートも手厚く、リアルタイム進行という語感や見た目に対して、誰でも遊びやすい作風です。その反面、クリア後のやりこみ要素などはなく、普段からRTSを遊んでいたり、戦闘に手応えを求めていたりする人にとっては、物足りないかもしれません。

4つの兵科を駆使・育成する部隊運用

 戦闘に参戦する部隊は、「歩兵」「騎兵」「狙撃兵」「魔術兵」と4つの兵科が存在。同じ兵科でも2~3種類の系統に分かれており、装備できる武器や使用できるスキルが異なります。1度に参戦できる部隊は4つと控えめではあるものの、組合せによって戦い方は大きく変化しました。

 戦闘中に表示されるユニットはキャラクター単独ですが、複数人で構成された部隊扱いとなっており、各部隊にはリーダーと副官を設定可能です。基本はリーダーの性能が適用されるのに加えて、副官のスキルが使用できるシステムとなっており、構成を考える上で戦術の幅が広がり好感触でした。組合せにボーナスはあっても、制限はないため自由度も高めです。

 キャラクターの成長は、主にレベルと武具で構成されています。使用できるスキルは武器に依存しており、スキルツリーによるスキル強化は兵科単位で行う、少しクセのあるシステムでした。武器の開発もツリー形式で素材が必要になるため、どの兵科から伸ばしていくかは自身の部隊運用と相談になります。武具の購入に加えて、ツリーの解放にもお金が必要なので、序盤~中盤はお金の使いどころも悩ましい要素でした。

成長・経験値のバランスには若干の難あり

 中盤を過ぎた辺りで武器開発・スキルツリー解放が終わり、以降は成長が頭打ちになるバランスは、少し残念なポイントでした。装備やスキルの変化が乏しくなるので、部隊構成や戦略が固定化されてしまいます。序盤~中盤は不足しがちだった資金も使い道がなくなってしまい、終盤は大量に余らせてしまいました。

 参戦した部隊にしか経験値が入らない仕様も、部隊の固定化が進む要因です。控えのキャラクターには経験値が一切入らないため、どんどんレベル差が開いてしまい、入替えが難しくなります。結果、ストーリー後半は同じ部隊・戦略での戦いが続き、単調なプレイになりがちでした。

 様々なキャラクター・兵科を使い分けることができれば、強化のベクトルや資金の使い道が分散して感触も変わったと思うので、この辺りはもう一工夫が欲しかったです。

さいごに

 戦闘の手応えに少し物足りなさがあったものの、自身が戦略を洗練させていった結果ということもあって、大きな不満には至りませんでした。作風とはいえ、ストーリーで語り尽くされていない部分が気になったため、DLCや続編等で補完される機会が訪れないか期待したい作品です。

 物語の雰囲気やバトルシステムが独特なので、本作が気になっている方は、1章が最後まで遊べる体験版のプレイを推奨です。2章以降は、更に物語が不穏な空気に包まれ、バトルシステムは中盤をピークに面白くなっていきます。