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【ベオグラードメトロの子供たち | Steam】評価・レビュー 架空のセルビアを舞台に描かれる歪んだボーイ・ミーツ・ガール

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総評
超能力者が存在する、架空の「セルビア・ベオグラード」が舞台のサイコサスペンスノベル。陰鬱な雰囲気に、歪んだボーイ・ミーツ・ガールと、尖った魅力を備えた作品です。
良かったところ
歪んだ人間関係を描いたストーリー
物語の隙間を埋めるゲーム内資料
悪かったところ
ボリュームに対する演出不足
分かりにくさを感じた状況描写
ジャンル サイキックバトル&サイコサスペンスノベルゲーム
ハード Steam
発売日 2020年9月11日
発売元 Summertime
開発元 Summertime
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで8時間

 Summertimeがおくるサイコサスペンスノベル「ベオグラードメトロの子供たち」のレビュー記事です。

 超能力が存在し、地下鉄の施工が途中放棄された、架空の「セルビア・ベオグラード」が舞台の本作。女尊男卑のヒロインと、女装して近づく主人公の、歪んだボーイ・ミーツ・ガールを中心に、超能力者たちの様々な物語が展開されていきます。独特な題材に加えて、閉塞感や劣等感を描写した陰鬱なシーンが多く、万人向けではないものの、好みが合えば突き刺さるような魅力を備えていました。

 ストーリークリアまで8時間と十分なボリュームを有しているだけでなく、エピソード内で語られなかった部分を補完する、ゲーム内資料も用意されています。一部の資料は、エピソードと並行して閲覧することで一時的に謎が深まる要素を秘めており、見どころの1つでした。目まぐるしく変化する展開に対して、演出や状況描写に不満を感じる部分もありましたが、一風変わったアドベンチャーをじっくり楽しみたい人にはおすすめの作品です。

架空のベオグラードを舞台にした物語

 「ベオグラードメトロの子供たち」というタイトルのとおり、作品の舞台は、南東ヨーロッパの国「セルビア共和国」の首都「ベオグラード」です。ただし、本作のセルビアでは、若者を中心に特殊な能力に目覚める現象が発生しており、超能力者が存在する世界観となっています。能力者によるトラブルや、大企業と能力者の対立が発生するベオグラードで描かれる、少年少女たちの物語です。

 作中では、「ベオグラードメトロ」がたびたび登場するのですが、実際のベオグラードには地下鉄が走っていない点も大きな特徴です。半世紀以上も前から計画は存在するものの、資金不足などの理由で建設には至っていません。作中のベオグラードメトロも完成はしていないものの、施工後の中止とされており、能力者や行き場を失った者たちの溜まり場として機能しています。実在しない物がいびつな形で題材とされる構想は、購入の切っ掛けに至った設定の1つでした。

 プレイ中の背景に、セルビアで撮影された写真を使用していることも、雰囲気作りに一役買っています。ベオグラードの土地勘がないため、地域や建造物の名前が出てもピンと来ませんでしたが、Googleマップで街を眺めてみるくらいには興味が湧きました。セルビアに関する固有名詞には、TIPS機能も用意されているので、予備知識やゲーム外の下調べが最低限でも安心して遊べます。

歪んだボーイ・ミーツ・ガールと超能力者たち

 主人公の少年が大企業の令嬢と出会い、一目惚れするストーリーではあるものの、ありふれた印象は全くありません。表面上は「ボーイ・ミーツ・ガール」ですが、女尊男卑のヒロインと女装して近づこうとする主人公の関係は、とても歪んでいます。関係の歪みは、ストーリーが進行するにつれて悪化していき、行き着く先の読めない展開が続きました。

 主人公自身は無能力者ですが、周囲には複数の能力者が登場します。超能力の種類も、サイコキネシス、未来予知、テレパシーなど多彩です。一部のメインキャラクターを除いて、エピソードごとにスポットの当てられる能力者が入れ替わっていく形式となっています。能力者ということもあって、一癖も二癖もあるキャラクターばかり登場するので、読んでいて飽きません。

 登場人物の大半が少年少女のため、青春を感じさせる部分もありますが、全体的に閉塞感や劣等感の描写が多く、陰鬱なシーンが目立ちます。ドット調のグラフィックで生々しさはないとはいえ、R-18相当の残虐表現・性的表現が含まれており、尖った演出も豊富です。題材の時点で独特なこともあって、決して万人向けではないものの、好みに合えば突き刺さるような魅力を備えていました。

ゲーム内資料で埋められていく物語の隙間

 全9エピソードで構成されているストーリーは、エピソード間で閲覧できる手紙の中で「読み物」として扱われており、徐々にエピソードと手紙の間が埋まっていく展開も見どころの1つです。他にも、ニュース・日記といったドキュメントが用意されており、エピソードの進行とともに解放されていきます。読み解くことで、エピソード内だけでは分からなかった事実を間接的に補完できる仕組みです。

 ただし、全てを読んでも完全解明に至らない点には、注意が必要です。疑問に感じた点が最後まで不明確なままだったり、掘り下げが中途半端なままで退場するキャラクターがいたりもしました。良くも悪くも、ほの暗い雰囲気にのっとって、様々な部分に闇が残ります。最後には何もかもを知ることができて、スッキリと大団円を迎える作風ではありません。

ボリュームに対する演出不足と分かりにくい状況描写

 公式サイトで『総スチル数120枚強』と謳われているとおり、イベントCGやアニメーションの点数は豊富です。しかし、能力者同士の戦いを中心に、立ち絵による会話だけでは描ききれないシーンが多く、作品のボリュームに対して演出の不足を感じました。アニメーションなど注力された演出が用意されている見せ場に対して、背景すら存在しないテキストだけのシーンも目立ちます。

 難解な言い回しや、特異な状況が発生する場面では、一読では状況を理解できないことも少なくはありません。特に、描写が複数のテキストにまたがるような場合、バックログを表示して読み返す行為が頻発しました。読み返して理解さえできれば納得がいくものの、プレイする手が止まってしまうため、サクサク読み進めて楽しみたい人には、余りおすすめできません。

さいごに

 演出・描写面が少し印象を損なったものの、ストーリー自体は満足のいく内容でした。エピソード3話まで遊べる体験版も配信されているため、感触をつかみたい方は、そちらを先にプレイしてみるのがおすすめです。ただし、体験版と製品版では異なる部分も多く、基本的には製品版でより面白くなっている前提で遊んでみるのが良いかと思います。