ジャンル | RPG |
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ハード | PlayStation 4 Nintendo Switch |
発売日 | 2021年6月24日 |
発売元 | フリュー |
開発元 | ヒストリア |
公式サイト | リンク |
プレイ時間 | ストーリークリアまで16時間 |
フリューがおくる学園ジュブナイルRPG 第2弾「カリギュラ2(Caligula2)」のレビュー記事です。
「カリギュラ」から5年後の新たな仮想世界を舞台にした本作。基本的な世界観は前作の焼き直しですが、2度目の事件だからこそ起こりうるシチュエーションや、自身の二番煎じにならないよう工夫が見受けられた点は好感触でした。シリーズの特徴である楽曲も、演出の強化が行われて魅力は健在です。
ゲームとしては前作の良いところ・悪いところをどちらも引き継いでおり、クオリティの低い3Dモデルや、テンポの悪い戦闘などが評価の足を引っ張ります。一応、オートバトル&難易度「EASY」で戦闘を割り切る選択肢が用意されているため、ストーリー・楽曲を中心に楽しみたい方には、おすすめしやすくなりました。
公式では『本作から遊んでも楽しめる』とされていますが、前作とつながっている要素が多く、しっかり楽しみたいなら両作品を併せてプレイを推奨です。このレビュー記事も、前作をプレイしており、今作の購入を迷っている人を対象に執筆しています。未プレイの方は、先に「カリギュラOD」からチェックしてみてください。
目次で流し読み
新たな仮想世界を舞台にしたストーリー
前作から5年後、新たな仮想世界「リドゥ」を舞台としたストーリー。現実の存在に気付いた主人公たちは、2代目の「帰宅部」を結成して、現実への帰還を目指します。仮想世界やバーチャドール同士の対立など、世界観は前作の焼き直しですが、2度目の事件だからこそ起こりうるシチュエーションも豊富に盛り込まれていました。
公式サイトで『本作から遊んでも楽しめる』と記載されているものの、しっかりと楽しみたいのなら、事前の前作プレイは推奨です。前作の話題や固有名詞が頻繁に登場するため、未プレイでは面白さが半減します。独立した作品なので、本作だけで形になっているとはいえ、前作知識があってこその続編です。
逆に『前作が好きで、キャラクターが一新された続編を楽しめるか不安』という人からすれば、前作要素が豊富な点はうれしい部分です。両作品で名前・声優が同じキャラクターが登場しており、前作ファンサービスに近いイベントも用意されています。ネタバレになるので詳しくは語れませんが、メインストーリーを差し置いて、作中で強く印象に残った場面でした。
心の奥へ踏み込むキャラクターシナリオ
”理想の自分になれる世界”だった「メビウス」に対して、「リドゥ」は”後悔が存在しない世界”として作られているため、登場キャラクターは、いずれもやり直しの人生を過ごしています。一緒に戦う帰宅部のメンバーも、後悔から現実とは異なる姿形を取っており、「キャラクターシナリオ」を進めることで、心の奥へ踏み込むことが可能です。
「理想」と「やり直し」、似て非なる世界とはいえ、単純にトラウマやコンプレックスを隠すだけでは、前作と代わり映えがありません。そのため、メインストーリーで後悔や真実が暴露されて、その上で更に心の奥に踏み込む形になるキャラクターが登場するなど、工夫が見受けられました。意外性は若干薄れてしまうものの、前作の二番煎じを回避していたのは良かったです。
直接の会話以外に、ダンジョン探索中に会話が発生する「フィールドトーク」が追加されたことで、コミュニケーションの情報量も大幅に増加しました。ただし、ボイスがなくテキストが表示されるだけなので、存在感は薄めです。会話中に宝箱を開けたり、戦闘が発生したりすると消えてしまうのも難点でした。確認するためのログ機能が用意されているとはいえ、スマートさに欠ける印象です。
クオリティの低さが目立った3Dモデル
トレーラームービーを見たときから不安を感じていましたが、想像していた以上に3Dモデルのクオリティが低かったのは残念でした。見た目だけでなく、動きもぎこちないため、安っぽい印象が拭えません。喜怒哀楽の表現も乏しいので、イラストやボイスが良いにもかかわらず、イベントシーンは素人の演劇を見ている気分でした。
前作も、決してハイクオリティの3Dモデルではなかったですが、イラストを大きく映して、うまくカバーしていました。対して今作では、イラストの表示が小さく、3Dモデルを大きく映す場面が増えたため、クオリティ不足が悪目立ちした形です。
演出の強化でさらに魅力の増した楽曲
「カリギュラ」シリーズの魅力である、楽士たちをイメージした楽曲は今作でも高評価です。楽士に対応した楽曲がダンジョン内に流れ、バトル開始と同時にインストゥルメンタルからボーカル付きに切り替わる演出も健在。更に今作では、フィールドを仕切る壁にMV風の映像が流れて、演出が強化されていました。
新曲は全部で9曲ですが、「リグレット」と「キィ」、それぞれのボーカルVerが用意されているので、ボリュームは2倍です。楽士を倒すことで敵の曲を「キィ」のレパートリーにして、楽曲の上書きと同時に味方を強化する新システム「フロアージャック」は、演出・効果ともにプレイヤーを盛り上げます。新曲以外に、「リグレット」「キィ」による、一部の前作楽曲が流れる点もうれしい要素でした。
オートバトル実装で手軽になったバトルシステム
未来予測を確認しながらコマンドを選択していく独特のバトルシステムは、良い部分も悪い部分もほとんど据置きという印象でした。1度に選択できるコマンドが3個から1個に減ったとはいえ、全ての戦闘で真面目に戦略を練っていると、テンポが非常に悪いです。戦闘勝利時の演出も無駄に長く、僅かな時間とはいえ冗長に感じます。
バトルシステム自体は据置きですが、仲間のオートバトル機能が追加されたのは、すばらしい進化でした。仲間の行動や命中率が読めなくなるので、未来予測が役立たずになるものの、主人公を操作するだけでサクサクと戦闘が進みます。オートバトルのON/OFFはワンボタンなので、強敵に挑むときだけ手動操作に切り替える。といった遊び方も可能です。
難易度「EASY」とオートバトルを組み合わせれば、何も考えずに決定ボタンを押し続けているだけで攻略できます。未来予測が不要になる点は、少し本末転倒ですが、全てのプレイヤーが複雑な戦闘に興味を持つわけではないので、良い割り切りです。ストーリーや世界観を中心に楽しみたい方でも遊びやすくなりました。
煩わしさが目に付いた細部の作り込み
前作ではダンジョン間の移動がタウンマップ形式だったのに対して、拠点である「キィトレイン」を経由する「ファストトラベル」になった仕様変更は、常に移動がワンクッション増えて煩わしさを感じました。一応、セーブポイントからのワープなど、「キィトレイン」への導線は豊富に用意されているとはいえ、演出のために利便性が犠牲になった感触です。
他にも、ギミックとフラグ操作ばかりが続くダンジョン。主人公の覚えるパッシブスキルは数十個と多いにもかかわらず、覚えているかではなく、装備しているかで判定するクエスト条件など、遊びにくい部分が目に付きました。1つ1つは小さな不満でも、積み重なるとストレスにつながるので、もう少し遊びやすい工夫や調整が行われていると良かったです。
さいごに
とがった魅力を備えているものの、粗が目立つことから、褒めきれない評価は前作同様でした。とはいえ、最初から期待している部分は絞られており、細部の作り込みが甘いのは許容範囲という印象です。
決して万人向けの良作ではないですが、自分に刺さりそうだと感じた方には、前作と併せて遊んでほしい作品でした。