【屍喰らいの冒険メシ】評価・レビュー なんでも食べて生き残る異食のサバイバルシミュレーションRPG

総評
カロリーを管理しながら探索するサバイバルRPG。料理による補給&強化を中心としたゲームデザインで、他にはない体験が楽しめます。コンセプトは面白いものの、基礎部分のクオリティは低く、総合的には惜しい印象が強い作品でした。
良かったところ
異色のサバイバル・料理要素
悪かったところ
装備を整えづらいハクスラ要素
不親切なゲームシステム
使い勝手の悪いUI
3
B
ジャンル サバイバルシミュレーションRPG
ハード PlayStation 4
Nintendo Switch
発売日 2022年1月27日
発売元 日本一ソフトウェア
開発元 日本一ソフトウェア
公式サイト リンク

 日本一ソフトウェアがおくるサバイバルシミュレーションRPG「屍喰らいの冒険メシ」のレビュー記事です。

 モンスターの死体や虫を食べてでも、ダンジョンからの生還を目指す本作。シビアなカロリー&水分管理と、料理による補給&強化を組み合わせたゲームデザインで、他にはない独特の作風が際立ちます。残念ながらUIや操作性が洗練されておらず、煩雑に感じる部分も多いですが、ユニークな体験が得られました。

 サバイバル関連の要素が豊富な反面、ダンジョン探索のゲームバランスや、ローグライク/ハクスラとしての面白さは今ひとつです。特に、装備品関連の作り込みは粗雑で、遊べば遊ぶほど評価が下がりました。新規IPとしては面白味のあるゲームですが、総合的には惜しい印象の作品です。

生還を目指す冒険者たちの物語

 冒険者たちがダンジョンで遭難するところから始まるストーリーは、モンスターの死体や虫を食べてでも生き残る、異色のサバイバルです。奥地に築いた拠点から探索に繰り出し、地上への生還を目指します。

 冒険者は全員キャラクターメイク形式となっており、固有の登場人物は存在しません。イベントもほとんどなく、探索中に発見した手記を読み解く形で、ダンジョンの秘密や脱出方法が明らかになっていきます。

 メインストーリーに関する手記は少なく、内容も雰囲気作り程度で、プレイ時間の9割以上をダンジョン探索が占めていました。体験にメリハリが乏しいため、淡々と探索に没頭できる人向きのゲームです。

餓えと戦いながら探索するサバイバル

 水も食料も尽きた状況から始まるダンジョン探索で重要になるのは、食事によるカロリー&水分の補給です。倒したモンスターの死体や、採取ポイントから素材を集めて、キャンプで料理を作成して餓えをしのぎます。素材が現地調達のため、美味しそうな料理からゲテモノまで、何でも食べなければなりません。

 冒険者たちのカロリーと水分は、全ての行動で消費されていきます。移動するだけで減るのはもちろん。ダッシュを行うと消費が早くなったり、戦闘中は攻撃やスキルでも消費されたりします。尽きてしまうと急激にHPが減るため、探索に慣れないうちは、飢え死にすることも多いです。

 ダンジョンの環境によってもカロリー&水分の消費量は変化します。暑い火山マップでは水分の消費が早くなり、寒い氷峰マップではカロリー消費が早くなるなど特色豊かです。作成する料理によっても得られるカロリーと水分の量が異なるため、状況に合わせて作成する料理を変える工夫が求められました。

食事で様々なスキルが発動する成長要素

 食事で得られる物は、カロリーと水分だけではありません。料理ごとに付与されるスキルが設定されており、食べることで冒険者のステータスなどが伸びていきます。本作では、レベルアップによる強化と並んで、重要な成長要素です。

 レベルが存在するスキルは、繰り返し食べるとレベルが上がり、より高い効果を得られます。たとえ満腹でも、過食で強化が可能です。カロリー回復後は、今後の探索に備えて素材を残すか、積極的に食べて強化を図るかの選択も発生します。素材には消費期限も存在するので、悩ましい部分でした。

 階層を進める際に休憩するかどうかは任意ですが、消費期限やカロリーを意識すると、2~3階層に1度は食事になります。一部の素材は加工で用意する必要もあるので、探索時間の半分は料理に費やされる形でした。料理の効果は累積していくため、攻略のコツは地道な食事です。

低リスクで緊張感控えめのローグライク

 ダンジョン探索は、ランダム生成の階層を進み、拠点に戻るとレベルと料理による強化がリセットされるローグライクです。料理やクラフトの素材も失われますが、装備品や熟練度は引き継がれます。料理による強化は倍率形式となっているため、装備を調えることでステータスの基礎値を上げ、乗算で強化していくゲームデザインです。

 失われる物が素材だけなので、ローグライクとしては死亡時のリスクが控えめです。大半の素材には消費期限も存在するため、貯め続ける物でもありません。実質、拠点から再スタートになるタイムロス以外に被害はないので、『別に死んでも構わない』と思ってしまい、緊張感は控えめでした。

 SRPGとしては事故死や初見殺しが多く、ゲームバランスの悪さも目に付いたので、カジュアルに遊びたい人にとっては好ましい低リスクです。しかし、手に汗握るような緊張感を求める人には物足りないかもしれません。

装備を整えづらいハクスラ要素

 キャラクターの基礎ステータスを上げる装備品は、武器(4種類)・頭防具・体防具・アクセサリー2点の5箇所に装備可能です。装備品のレアリティやスキルはランダムとなっており、同じアイテムでも性能にバラツキがあることから、ハクスラ要素も備えています。

 装備品を獲得する機会が乏しく、普通にプレイしていては装備が揃いにくいのは難点でした。フィールドに存在する宝箱が少ないことに加え、一部を除いてモンスターからのドロップもなく、ボスを周回してレアアイテムを効率的に集めるといった要素もありません。さらに、終盤になっても低ランクの装備が排出され続けることから、進めば進むほど良い装備が落ちにくくなる厳しい仕様でした。

 装備に付属するスキルも、種類が多すぎて混沌としています。特定の種族や属性に対するピンポイントな物が多く、付いてうれしいスキルは希少です。武器は1つしか持てないにもかかわらず、槍に「剣装備性能強化」が付くなどルールも完全ランダムで、クリアまでプレイしても当たりと感じたアイテムは僅かでした。

 分の悪い仕様に加えて、スキルの移替えや合成等もないので、装備が整うかどうかは運任せです。手間を掛ければ収集する方法が存在するものの、示唆される導線はなく、気付くかどうかはプレイヤー次第になります。実際、私は気付かないまま序盤~中盤に獲得した装備を工夫してクリアまで辿り着きました。

不自由・不親切が目立ったシステム回り

 サバイバル関連の要素が豊富な反面、使い勝手の悪い操作性・UIや、不自由を感じるゲームシステムは残念でした。何をするにしても手間が多く、操作も煩雑になりがちです。結果的に、料理の作成や装備品の管理に要する時間が増えてしまい、無駄にプレイ時間が長くなる要因となっていました。

 特に、料理作成の際、同じ種類の素材でも鮮度などで別アイテム扱いになるため、一括作成できない点は大変でした。素材AとBを組み合わせた料理を作る場合、素材A・Bのパターン分だけ操作を繰り返す必要があります。1度の操作は1-2秒とはいえ、実行回数が多いので、積み重なると相応の時間を取られました。

 倉庫機能が存在しないため、インベントリもゴチャゴチャしがちです。身につけていない装備品は、常にインベントリを圧迫します。保護機能もないので、誤って分解してしまったことも1度や2度ではありません。サバイバル向けの装備で探索して、ボス戦で戦闘向きの装備に付け替えるといった工夫すら困難でした。

 各種情報の閲覧も非常に見にくいです。装備の耐久値や強化値といった要素を詰め込んでいるにもかかわらず、それらの管理や操作は粗雑な感触でした。一風変わったコンセプトに注力するのは良いですが、ゲームの基本的な部分も、ある程度は洗練させてほしかったです。

さいごに

 体験版をプレイしていた時点では、操作性やUIに不安を覚えていたものの、同時に期待も高かったです。キャラクターメイクに職業要素が存在するため、何度かパーティーを作り直して遊ぶほどでした。

 しかし、体験版の少ない情報量だからこそ成り立っていた面白さで、素材や料理の種類が増えると操作が煩雑化。装備品獲得や戦闘のバランスも悪く、評価を落とす要因となっていました。

 製品版で劇的に面白くなる要素はないので、体験版を遊んでも購入を迷ってしまう人は、避けた方が無難な作品です。