【エースコンバット7 | PS4 】評価・レビュー リアルを超えて進化したフライトシューティング

総評
立体的に広がる雲の存在によって、想像していた以上の空戦が体験できるフライトシューティング。新たな英雄誕生の軌跡を描いたストーリーや完成度の高い「VRモード」など、高評価のポイントが多く、エースコンバットシリーズに惚れ直してしまった作品です。
良かったところ
新たに紡がれる英雄譚
縦横無尽に空を飛ぶ爽快感
立体的な雲による新体験
臨場感溢れるVRモード
悪かったところ
ルールの少ないマルチプレイ
5
A+
ジャンル フライトシューティング
ハード PlayStation 4
Xbox One
発売日 2019年1月17日
発売元 バンダイナムコエンターテインメント
開発元 バンダイナムコエンターテインメント
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで10時間

 「空の革新」をテーマに掲げた、12年ぶりのナンバリング最新作「エースコンバット7(ACE COMBAT 7)」のレビュー記事です。

 リアリティの追求によって、大幅な進化を遂げた本作。爽快感抜群の空戦は、立体的に広がる雲の存在によって、美しいだけではない新体験を楽しめるようになりました。ただ現実的に作るのではなく、ゲームとしての面白さも兼ねそろえており、リアルを超えたフライトシューティングといっても過言ではありません。

 もちろん、主人公を取り巻く人々によって語られる、英雄誕生の軌跡を追うストーリー展開も健在です。シリーズとしては20年以上の歴史があるタイトルで、ナンバリング以外も含めると既に10作品を超えている中、飽きさせない工夫と進化を重ね続けていると感じる、すばらしい作品でした。

架空世界で紡がれる新たなストーリー

 他者の視点で語られる、プレイヤー=主人公が英雄に成長していくストーリーは、今作でも健在です。開幕当初は接点のない登場人物たちですが、予想だにしない展開と目まぐるしく変化する情勢によって、物語は複雑に交差していきます。架空世界「ストレンジリアル」に刻まれる、新たな英雄譚は必見です。

 エースコンバットのストーリーを語る上で、架空兵器の存在も欠かせません。今作では、無人航空機「UAV」の台頭にスポットが当てられており、多種多様な無人機が登場します。無人機ならではの空中機動や増援演出、航空母艦による圧倒的な物量投入など、敵ながら心躍る演出が満載でした。

 シリーズファンにはうれしい、過去作品とのつながりも所々に用意されています。知っていれば作品の魅力が増すものの、予備知識が必須となっていないさじ加減も絶妙です。本作から始めて、過去作に遡っていくプレイ順でも全く問題はありません。私自身、途中からシリーズを遊び始めたプレイヤーの1人です。

雲の存在によって大きく進化した空戦

 広がる空を縦横無尽に飛び回り、敵機を撃墜していく爽快感は、フライトシューティングならではの魅力です。しかしながら、シリーズを重ねても空戦の基本は変わらないため、マンネリを感じていたことも否定できません。そんな中、新たに実装された「立体的に広がる雲」の存在は、革新的な進化でした。

 ただの背景でしかなかった雲が実体を持ち、様々な影響を及ぼすことによって生まれるリアリティは、想像以上の体験をプレイヤーに与えます。視界を塞がれるだけでなく、乱気流で機体が流されたり着氷が発生して機体性能が低下したりするなど、シミュレーター感の拭えなかった空戦が本物になった感触でした。

 雲の存在によって、ミッションの幅も大きく広がりました。衛星の目から逃れるために雲中を進む電撃戦や、砂塵に包まれた地上に対する掃討戦など、演出のバリエーションは多彩です。落雷によって発生する計器異常といった、ランダム要素の強いアクシデントも用意されており、空戦に油断は許されません。

 あまりの体験に、雲の存在ばかりクローズアップしてしまいましたが、もちろんゲームとしての評価も高いです。限りなくリアリティを追求した空の革新に加えて、ゲームらしい面白さも兼ねそろえており、リアルを超えて進化したフライトシューティングといっても過言ではありません。

カスタマイズ性を備えた機体ツリーシステム

 本作では、ミッションの達成によって得られるポイントを消費することで、新しい機体やカスタムパーツを獲得できる要素が用意されています。下位の機体から入手ルートが枝分かれしているツリー構成となっており、限られたポイントで何から手に入れていくのか悩ましいシステムです。

 獲得した機体とカスタムパーツを組み合わせることで、性能をカスタマイズすることも可能です。長所を伸ばすか短所を補うかによって、同じ機体でも操作感は大きく異なります。ストレスに感じない程度のコスト制限も用意されており、工夫や試行錯誤を行う面白さが存在しました。

 ツリー形式の構造に加えて、機体・パーツの種類も多いので、全てを獲得するためには膨大な量のポイントが必要になります。そのため、ミッションで高評価を意識したり、高難易度のキャンペーンモードを周回したりといった、プレイのモチベーションにつながったことも良い副次効果でした。

圧倒的な臨場感が満ちたVRモード

 PS4版で楽しめる「VRモード」は、これまでにない次世代のフライトシューティングです。自身の動きに連動した一人称視点に加えて、VRの魅力を最大限に引き出す専用ミッションが用意されています。進化した空戦と組み合わさることで、「本物のパイロット体験」を堪能することが可能です。

 残念ながら専用ミッションは3種類と少ないのですが、それぞれ特徴的な内容となっており、満足度は高いです。特に、基地襲撃からの緊急発進シークエンスは、ゲームと分かっていながらも、危機を感じてしまうほどの臨場感でした。欲をいえば、VRでキャンペーンモードも遊びたかったほどの完成度です。

 余談ですが、コールサインがエースコンバット04の「メビウス1」となっており、それにならったストーリーというのも、シリーズファンとしてはうれしいポイントでした。

最大8人で競い合うマルチプレイモード

 2種類のルール「バトルロイヤル」「チームデスマッチ」が用意されているマルチプレイは、他のプレイヤーを相手に戦う対戦モードです。同じ英雄である強敵たちを相手に、無制限の空戦から機体・チップのコスト制限を設けた限定戦、特殊兵装禁止のドッグファイトなどを楽しむことができます。

 マルチプレイに持ち込める機体・カスタムパーツは、キャンペーンモードの機体ツリーと共通となっています。ポイント獲得も同様に発生するため、キャンペーンの途中でも気軽に参戦することが可能です。上位に着ければ短時間で大量のポイントが手に入るため、腕次第ではポイント稼ぎとしても有用でした。

 さすがにルールが直接対戦の2種類だけでは、長く楽しめるコンテンツとして成り立つのか不安なため、他の対戦ルールやCo-op、スコアを競う共同戦役の追加などを期待したいところです。

さいごに

 空戦はいつもどおりで、新たなストーリーを楽しむ姿勢で遊んでみたら、雲の存在でここまで変わるのかと驚愕を隠せませんでした。余り期待していなかった「VRモード」の完成度も高く、20年以上も続いたシリーズを更に進化させることができるのかと、改めて惚れ直してしまった作品です。