【WILL 素晴らしき世界 | PS4/Switch】評価・レビュー 手紙の文面を組み替えて運命を変えるザッピングアドベンチャー

総評
手紙の文面を組み替えることでストーリーが進行する、パズル性の高いアドベンチャーゲーム。ザッピング形式のストーリーとゲームシステムの相乗効果は評価が高く、一風変わったコンセプトの作品が好きな方なら必見です。
良かったところ
独特のゲームシステム
複雑に絡み合うザッピングストーリー
悪かったところ
少し残念な日本語訳
5
A+
ジャンル アドベンチャー
ハード Steam
PlayStation 4
Nintendo Switch
発売日 2018年6月1日
発売元 PLAYISM
開発元 WMY STUDIO
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで8時間

 パズル性の強いザッピングアドベンチャー「WILL -素晴らしき世界-」のレビュー記事です。

 手紙の文面を組み替えて人々の運命を変える、独特のゲームシステムが目を引く本作。一見ではクセの強そうな雰囲気で、二の足を踏んでしまう方も多いと思います。しかし、実際にプレイしてみると、想像していたほど人を選ぶ内容ではなく、アドベンチャーが好き方にはおすすめしたい作品でした。

 特に、ザッピング形式のストーリーと、パズルのように人々の運命を組み替えるシステムの相乗効果はすばらしいです。日本語訳に少し引っかかるシーンもありましたが、要所で差し込まれるイベントスチルや、雰囲気にマッチしたBGMによって、満足度の高いゲームに仕上がっていました。

手紙を組み替えて運命を変える独特のゲームデザイン

 アドベンチャーゲームでありながら、本作には選択肢がほとんど存在しません。代わりに用意されているのが、手紙として受け取る人々の願いと、文面を組み替えることができる不思議なペンです。プレイヤーは願いを組み替えて、人々を幸せにすることでゲームを進めていきます。

 届いた時点では不幸な結末でも、出来事の順番を入れ替えることで全く違った結末に導けるのが、このシステムの面白いところです。同時に届いた複数人の手紙を組み替える場合もあって、複雑でパズルのような組合せの結果に、想像を膨らませながら取り組むことになります。

 手紙の文面を組み替えて辿り着く結末は、1つの幸福だけとは限りません。最良とは言い切れない微妙な結末や、入れ替える前とは別の不幸に辿り着く場合もあります。1つ1つの手紙がマルチエンディング要素を備えており、様々な展開と結末を楽しめるのも大きな魅力です。

奥深く高難易度なパズル要素

 手紙の組み替えには様々な特殊ルールが用意されており、慣れるまでは戸惑うことも多かったです。特に、「オレンジ色の文字」の重要性は繰り返して説明されるため、序盤におけるストレスの要因でしたが、プレイを通して必要なアドバイスだったと評価を改めることになりました。

 特殊ルールに戸惑うことはあっても、手紙単体の攻略で手詰まりになることは滅多にありません。組み替える際、注意するべきポイントが赤い文字になるヒント機能も用意されています。時間は掛かってしまいますが、いざとなれば総当たりで幸せな結末を見つけ出すことも可能です。

 物語が進むにつれて手紙同士の因果関係が絡み合い、ゲーム全体がパズルのようになっていきます。連動する手紙で条件を満たしたり、組み替え対象以外の手紙でヒントを得たりと、攻略の難易度は高いです。救済措置はないため、しっかりと物語を把握した上で、気付きが重要になる奥深いゲームでした。

複雑に絡み合うザッピングストーリー

 女学生や警察官から野良猫まで、神様には多彩な人物からの手紙が届きます。彼らの関係は、クラスメイトや同僚といった密接な物から、すれ違いもしない間接的な物まで様々です。運命を入れ替えることで、意外な人物に影響を及ぼすこともあって、予想も付かない物語を楽しめます。

 シーンによっては現実性のない展開や伏線のない物事が飛び出しますが、そもそもプレイヤーが神様役という時点で超常的なので、あまり気になりませんでした。ただし、少々過激な描写が存在することと、全ての登場人物が幸せになるとは限らない点には、注意が必要です。

 イベントスチルやBGMが印象的だったことも、特筆したいポイントでした。多くの手紙で「Rank S」の組合せが完成するとBGMが変わることや、ここぞという場面でイベントスチルが差し込まれるなど、決して枚数や曲数が多いわけではないですが、使い方が上手いと感じました。

違和感を覚える残念な日本語訳

 物語を読み解くのが困難というほどではないものの、たどたどしい日本語訳が多く見受けられた点は、アドベンチャーゲームとして少し残念でした。ヒントを探すため、同じ手紙を注意深く読み返すこともあって、ちょっとした違和感も目に付いてしまいます。

 翻訳の違和感だけでなく、誤字脱字や文脈が繋がっていない場面も目立ちました。極端な例を挙げると、『お前と、ポーカーがしたいんだ』の切り出しからポーカー対決を行うのかと思ったら、なぜかブラックジャックが始まるという、何が何だか分からない手紙もあります。

 プレイヤー側で少し想像して補完すれば、プレイに支障を来すことはありません。しかし、せっかくのローカライズなので、しっかり作り込んでからリリースしてほしかったと感じます。幸いにもパッチで修正可能な部分なので、大きなマイナス要素とは考えず、今後の対応に期待したいところです。

さいごに

 若干の不満はあったものの、作品全体の面白さを損なうものではなかったため、総評としては高評価な作品でした。アドベンチャーゲームが好きな人はもちろん。パズル要素と聞いて不安な方でも、どうしても分からなければ攻略に頼ることもできるので、迷っていたら購入されることをおすすめします。