【カデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ | Vita】評価・レビュー

良かったところ
膨大な分岐点を用意した独特のシステム
悪かったところ
ずさんなフラグ管理
大量の誤字脱字・バグ
3
B
ジャンル キミが運命を斬り拓く、神智超越×神話創造ADV
ハード PlayStation Vita
発売日 2014年12月11日
発売元 5pb.
開発元 La’cryma
公式サイト リンク

 今までにない斬新な要素を豊富に取り込んだアドベンチャーカデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ」のレビュー記事です。

バトルシーンの最中にプレイヤーが任意のタイミングで必殺技を撃てるなど、ストーリー中に膨大な分岐点を用意したシステム「フリーフィニッシュ・オーケストラバトルシステム」を搭載。かなり独特な仕様となっており、斬新なものが好きな自分としては興味津々です。購入動機の大半と言っても過言ではありません。

しかし、システムが複雑すぎたのか制作側ですら全体を管理しきれていませんでした。おかげで誤字脱字やフラグ管理ミスが大量に発生。ストーリー自体は面白かったのに、それを気持ちよく楽しむことができずに残念な気分になってしまった作品です。

マホウツカイとキセキツカイの戦いを描く新たなストーリー

零二 vs ミコト

 公式からの導線がないので分かりにくいですが、PCで発売された「フォルテシモ」の続編となる本作。一応、『カデンツァだけで完結して楽しめます』とは聞いていたものの、実際にプレイした感触としては、未プレイでは良くて7割程度しか楽しめません。事前に前作を予習プレイしておいて良かったと思います。

 「フォルテシモ」で起こった全ルートの設定・結末を全て受け継いだ未来というトンデモ設定。相変わらずのアンチ能力・後出し優勢の少年漫画なノリも前作同様です。登場人物が大幅に増えた影響で少し足早でしたが、代わりに密度の高い展開を堪能することができました。ストーリーだけなら前作以上の評価です。

作品全体の評価を大きく落としていたゲームシステム

フリーフィニッシュ オーケストラバトル ノーヒント

 ストーリーさえ高評価なら、普通のADVは全体評価も高評価になります。しかし、本作は普通ではありません。ただ読み進めるだけでなく、プレイヤー自身が決断して、膨大な分岐点からハッピーエンドを手繰り寄せなければならないのです。そのコンセプト自体は面白いですが、うまく形になっておらず楽しめませんでした。

 必殺技のタイミングによって会話がかみ合わない程度は序の口。その場にいないはずの仲間が助けてくれたり、必殺技を発動したり。戦闘で負けても、次のシーンでは勝ったことになっているなど、純粋に作り込み不足のパラドックスが満載です。ザッピング形式で読み進める仕様もあって、何が正史なのか分からなくなります。

 独特の仕様から、1箇所や2箇所なら存在しても仕方がないと妥協しますが、事あるごとにフラグ管理ミスが発生するとストーリーに集中できません。バトルパートの難易度も高く、難解なバトルではクイックセーブ・ロードを駆使しなければ条件を達成するのが難しかったです。

大量の誤字脱字・バグが物語っている完成度の低さ

誤変換:一触即発 誤字:ルビ指定ミス

 フォント一括表示でサクサクと読み進めるため、細かい誤字脱字を気にする方ではないのですが、余りにも多くて気にするなというのは無理でした。スクリーンショットを見ても分かる単純な変換ミスやルビ指定の失敗から、表示されているセリフと再生されるボイスが食い違っているシーンも存在しました。

 一番つらかったのは、表示されている選択肢と実際の行動が違うパターンです。ここまで来ると表示が間違っているのか、内部的に間違っているのかすら判断が付きません。無駄に選択肢を間違えてしまい、モチベーションを落とす要因でした。後日パッチで修正可能とはいえ、幾ら何でもひどすぎるのではないでしょうか……

さいごに

 仮にストーリーすら楽しめない内容だったら、バトルパートでクリアを諦めていたかもしれません。何だかんだと言いながらも、クリア後にストーリーを振り返ってみると楽しかったです。本末転倒な意見ですが、普通のアドベンチャーとして遊んだ方が楽しめたのではないかと想像してしまいます。

 今回もフォルテシモと同じように作中で次回作の存在を示唆。多少のもやもやは残りますが、物語に区切りは付いているので未完結という印象はありません。完成度の問題で本作の評価はいまいちとはいえ、恐らくはストーリー目当てに続編も購入するかと思います。むしろ楽しみなくらいです。