【クロバラノワルキューレ | PS4】評価・レビュー どこを取っても中途半端なRPG

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総評
詰め込むばかりで整理されていない煩雑なシステムと、低いクオリティが目立つRPG。キーワードとなる「仲間が裏切る」要素も、ストーリーに大きな影響がなくて、ガッカリ感の強い作品です。
良かったところ
快適なオートバトル
出来の良い3Dモデル
悪かったところ
ストレス要因の多いマップ探索
奇抜に見えてありふれたストーリー
盛り込みすぎで煩雑なゲームシステム
1
C-
ジャンル RPG
ハード PlayStation4
発売日 2016年7月21日
発売元 コンパイルハート
開発元 コンパイルハート
公式サイト リンク
プレイ時間 ストーリークリアまで29時間

 信頼と裏切りが交錯するタクティカルRPGクロバラノワルキューレ」のレビュー記事です。

 周回をするたびに裏切り者が変わるストーリーと、豊富にそろったゲームシステムが特徴の本作。しかし、詰め込むばかりで整理されていないシステムは煩雑なだけで、決して面白いとは言えないクオリティでした。仲間が裏切る要素も道中の疑心暗鬼は面白かったのですが、ストーリーに大きな影響がなかったため、期待に対してガッカリ感の強い作品です。

裏切り者の存在によって疑心暗鬼を生ずるストーリー

 ウイルスによって変貌した生物「キメラ」が跳梁跋扈する世界で、対抗するために新設された部隊の隊長が主人公です。大きく分けて、クエストをクリアするRPGパートと、隊員たちとのイベントが発生する会話パートが存在します。交互にプレイしながらストーリーを進めていく形式です。

 主人公たちの部隊が運用する武器「ワルキューレシステム」は、キメラウイルスと似た副作用を持っており、仲間の中にキメラ化した裏切り者の存在が示唆されることで、疑心を抱きながらも共に戦う展開は不安をあおります。また、人格分裂によって大きく性格が変化する隊員との会話も斬新でした。

 会話パートの立ち絵には「Live2D」が採用されており、会話に合わせて立体的に変化。イベントなどでは専用のイラストが多数用意されているので、視覚的にもにぎやかなストーリーを楽しめます。

裏切りの証拠を探す「面談システム」は単なるミニゲーム?

 裏切り者はプレイごとに異なるため、誰が裏切っているか調べるための「面談」が定期的に発生します。疑いのある隊員たちに対して質問を行い、矛盾点などを見つけ出すことによって疑惑者を絞り込むシステム。とされているのですが、体感としては独立したコンテンツでした。

 そもそも面接の内容と裏切り者が連動していないため、結果がストーリーに影響していません。私の場合、最後の面談で高評価をもらったにもかかわらず、その際に矛盾発言していた相手と実際の裏切り者が異なりました。評価によって報酬が得られるとはいえ、これでは単なるミニゲームです。

 また、初プレイ時は運要素の強いシステムになっている点も気になりました。矛盾する発言が最低でも3個必要なのに対して、質問できる回数が限られているので、運が悪いと矛盾発言の個数が足りません。推理以前の段階に詰んでいるため、セーブからやり直すか諦めるかの2択になります。

 運次第のおおざっぱな仕様に加えて、裏切り者とは未連動という中途半端な作り込み。ストーリーの中核をなす要素であり、途中までワクワクしながら遊んでいただけに、蓋を開けてみると残念でした。

使いにくいマッピングと多すぎる敵シンボル

 RPGパートはクエスト形式です。必須クエストを全て達成することで新しいストーリーが解放されていきます。自由に受けられる物まで含めると、クエストは数え切れないほど用意されており、全てをクリアしながら進めるなら結構なボリュームです。しかし、目標への誘導が不明確なことに加えて、使いづらいマッピングや多すぎるエネミーシンボルがストレス要因になっていました。

 特に、マッピング機能はかなり狭い範囲しか記録されないため、普通に進んでいてはほとんど役にたちません。ダンジョンの構造が複雑なこともあって、穴だらけのマップができてしまいます。クエストで何度も同じダンジョンを訪れる本作では、使い物にならない精度です。さらに、近くまで行かなければ見えない宝箱まで存在するため、比喩抜きで「隅から隅まで」の探索を強要されます。

 ダンジョンに登場する敵シンボルの数も多く、狭い通路にも配置されていることから戦闘を避けられないことも探索を面倒にしています。さらに、敵の移動速度がプレイヤーよりも速いため、見つかったら逃げられないという厳しいバランスが追い打ちを掛けていました。

オートモード無しでは気軽に遊べない複雑なバトルシステム

 リアルタイムで行動順が変化するバトルシステム「タクティカル・フルイド・バトル。システム」には、膨大な数のスキルやコンボ、フォーメーションなど、様々な要素が詰め込まれています。全てを使いこなせば多彩な戦略を立てられるものの、できることや条件が多すぎて、少し難しく感じるシステムです。そんな中、細かく設定可能なオートモードが用意されていたことは、とても高評価でした。

 私はノーマルモードで遊びましたが、しっかりとキャラクターを育てていれば、雑魚戦は全てオートモードで問題ありません。基本的な行動方針からスキル・アイテムの使用などをキャラクターごとに設定できるため、パーティー構成に合わせた戦術を行わせることが可能です。欲を言えば、オートモードの設定まで含めたパーティー構成を保存できれば、もっと気軽に戦略を切り替えられたと思います。  

キャラクターの個性が見えにくい汎用的な育成要素

 育成要素もバトルシステム同様に、要素が豊富に用意されています。装備だけでも単純な強化からオプションパーツのカスタマイズや重量制限など多種多様です。多すぎて1つ1つの影響が小さくなってしまい、余り強化している実感がなかったので、もう少しシンプルな方が好みでした。

 キャラクターの育成は、レベルアップによって得たポイントを割り振る形式を採用。裏切り者などの要素によってメンバーの離脱が発生するため、性能面でのキャラクターの個性は最低限に抑えられているので、プレイヤーの好みでパーティーメンバーを選んで問題はありません。

 装備には衣裳も含まれており、ダメージを受け続けると破れて防御力が低下していく要素が存在します。破けるカットインが用意されていたり、衣裳の損傷がマップ上やイベントにも反映されたりと謎の注力です。3Dモデルの出来は良いので、損傷を放置すると艶めかしい光景が続きます。

もう少しコンパクトに作り込んでほしかったゲームシステム

 ここまでに挙げてきた以外にも、細かすぎるゲームシステムが数え切れないほど存在しています。全て画面付きで解説してくれるのは助かりましたが、代わりに序盤~中盤は解説だらけです。要素を半分くらいに絞り込んで、しっかりと調整すれば、もっと楽しめる完成度になっていたのではと強く感じます。

さいごに

 ゲームシステムは多すぎて煩雑だったり、奇抜に見えるストーリーも中身は普通だったりと、どこを取っても中途半端な印象を拭えません。数少ない高評価の「オートバトル」も、他の部分との対比で好印象だったので、実際には褒められるところがほとんど見当たらない作品でした。